第18話 新たな任務

ー次の日ー


 プルル プルル  プルル プルル 


 「ちっ、朝っぱらから呼び出しを喰らうなんて何があったんだ?」スマホの様な形をした半透明の端末、スマートマギフォンに神楽さんからの連絡が入った。


 時計の画面を呼び出し時間を確認すると4:26


 窓からは、薄暗闇が見える。当然、太陽なんて登っていない。


 全くもって、とんでもなく早い時間である。


そして、わりかし大きな通知音は隣のベットにいる琴音にも聞こえて……


不味いな


少し、視線を横に向けると気持ちよさそうな寝顔で琴音は寝ていた。


どうやら起こしてしまった訳ではないらしい。


「消音にして、最悪光で起きられるようにした方が良いかも…って、社畜根性が抜けきららねぇなぁ」


特大のため息を吐いて、胸に溜まった嫌な思いと空気を入れ替える。


 「スースー」


 「なんやかんや、俺に懐いてくれているんだ。怪我させない為にも、早めに訓練させるか」

 頭の中で琴音を扱く訓練方法を考えつつ、自分の手に持つマギフォン、スマホでいいか。

手元のスマホに視線を落とす。


 そこには、嫌な情報。即ち、十二秘奥の任務が載せられていた。


『 極秘任務が上層部より下された。至急、特務部隊"十二秘奥"第三席は幻葬士支部βに来るように。

             SOKより  』


因みに、このSOK。神楽さんのことを示す隠語の一つだ。というか本人がノリノリでやっている迷惑行為だ。


 そもそも、俺が持つスマホは幻葬士特務部隊用に先日の昇進と同時に新しく換えられている。


 その特徴は秘匿回線を利用出来る点、耐衝撃、防弾、防水、防火、防塵といった潜入任務等の部署で使われる最新式もの。かつ、俺こと第三席専用機だ。


 オリジナルと違う点は、電動充電が可能という点だ。この機能、地球で考えれば、かなり普通だ。


 だが、この世界には魔導がある。基本的に魔導、それか魔力で動くのが基本のものを電力で動くようにもしてくれたのだ。かなりの逸品と見ていいだろう。


 その分、神楽さんが、俺をどれだけ働かせようとしているか良く分かる。


 ちなみに、潜入任務を行う俺のスマホが使う魔導を用いた回線を敵が盗聴することは不可能に近い。尚且つ、コレと同じスマホでなければ話の内容が全て暗号に置き換えられてしまうというスーパーハイスペックなものなのだ。

 

「それにしても、何も休日に、それも土曜日に任務だなんてついてないなぁ」


今日は、料理と実験をして過ごそうと思っていたのになぁとそんなのを思いながら自分のタンスについている端末を操作し、タンスに隠されている着替え入れを取り出す。


 いわゆる、隠し棚と言ったところだ。


 中に戦闘服とその他の道具が入っているのを確認して俺は孤児院の外の闇へと躍り出るとそのまま屋根へとジャンプした。


 ー??? とある部屋 ー


 常人では見通せぬ闇に包まれた部屋で、一組の男女が会話をしていた。

 

 真が見ればラスボス一行⁉︎と目を剥く光景だった。


 ラスボスこと……大溟おおうみ 空羅くうら黒木くろのき まなと呼ばれるラスボス前の中ボスと真が呼ぶ存在だった。


 「へぇ、いいねぇ!それで、どうなったんだい」愉快そうな声で大溟が薄ら笑う。


 「どうやらその幻葬士が独力でコアを破壊したようです。……この私と張り合った辺り本気のと同じ力を持っています」いたって冷静だった愛の声に少し怒りが混ざったことに大溟は薄ら笑いを深い笑みに変えた。そこにあるのは驚愕からか、或いは期待からか。本人も分からないが感情を動かされたのは確かなのだろう。


 「成る程ね。それで、そいつの情報は?」笑みを戻した大溟は愛に情報を求めた。興味をひいた相手は知るというのが彼のポリシーだ。

 

 「こちらに」膨大な文字列が大溟の眼前に浮かび上がった。その文字列をものの1秒で読み解くと凶悪な笑みを浮かべる。


 「ふふ、通称ミラージュチェインか……覚えておくよその名前。この記憶。こんな逸材がいまの今まで引っ掛からなかったなんて、サイッコウだ!こんな逸材に匹敵する僕の親友は、"彼"はどう出るかな?」


 Phantom killing最大の闇たる大溟達が笑う時はいつも何処か遠くにいる1人の少年を見据えている。


 彼らが動き出す時と同じくしてゲームの世界は動き出す。


 そして、それはモブ以下の真達の世界も動き出すことになるだろう。否応無しに時代は唸り、主人公とは関係無い人々だろうと混沌とする物語へと巻き込まれていくのだ。

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