第8話 魔導の適正

 

 「着きましたっすよ。じゃあ、早速調べちゃいましょ!」月葉さんは、大きな部屋の前でそう言って、扉を開ける。

 中には沢山の機械類があった。多分、全てが検査に使うものなのだろう。



 俺は今、幻葬士の支部で月葉さんに連れられて、適性検査を受けている。元々は先生と悠太さんがやるべきだったんだけど……あの人たちは俺を巻き込んだので月葉さんが代わりに調べてくれるらしい。


 そして、ここでの調べる方法は、特殊な的や器具を使うことだった。


 「まずは、火属性から、やってくっすよ、用意が出来たら言ってくれっすね」火の式を解いて使う。今回使うのは魔導名マッチ


「じゃあ、《マッチ》」

 初級も初級な魔導。ただ、効率は良いし、火事にしたりするほどの火力が無い安全性が比較的に高い魔導。まさに適性検査にうってつけの魔導。


 「オッケー次は、水っすよ。用意はいいっすか?」そう言われて、今度は水の式を解いて使う。魔導名は《ドロップ》「はい、《ドロップ》」テニスボール程の大きな水滴を出すだけの魔導。いざという時の水分確保に便利だと思っている。さあ、貴方も如何かな?


 こうして魔導を風から無属性まで使っていった。


 「いい調子っすね。ただ、これ以上続けると気絶しかねないから休むっす。」検査結果が出る前に、いきなり月葉さんが休憩を勧める。


 「いや、全然大丈夫ですよ?」心配をされるが、成長途中な俺でも、まだ七割も切っていない。いくらなんでもそれはないだろ。と思ってしまう。


 「えぇ⁉︎嘘は良く……いや、待ってくださいよ……まさか、真くんはこれまでで魔導を一度でも使ってたりするっすか⁉︎」驚いた月葉さんは何か思い当たるのか、そう聞いてくる。


 「え?使ってますが……」本で読んだが何も問題はないはず。先生も何も言ってこなかったし、むしろ自分の知識を教えてくれている。


 「あっちゃあ、やっぱり。それで……使っているということは愛菜先輩にでも教わっていたり?」何か違ってくれと言わんばかりに聞いてくる月葉さん。それにしても、ここで先生の名前が出てくる。やっぱり先生って絶対幻葬士だよな、多分。


 そして、先生に聞かれたときのように隠すことではないので正直に月葉さんに話す。


 「ええと、はい」嫌な予感……


 「そりゃ、こうなるすっね。魔導の消費量が少なくなってるっす。多分、式とか教わっているんじゃないっすか?」


 「その昨日たくさん……」アレは自業自得かもしれないが地獄のような量だった。まぁ、おかげである程度は覚えている。そして、恐らくこれと関係が


 「確定すっね。真くん、魔導は知識量で消耗を少なくできるっす。」関係ある。なにそれ無茶苦茶、便利なんですけど⁉︎

 「えーと?つまりどういう?」


 「その歳でそれは結構、凄いすっかね後、適性的にも。」


 「えっ?」嫌な予感はある意味当たっている。これゲームとかなら絶対、入ってくれとか永遠にリピートされるパターン。


 「適性なんすけど……珍しいすっね、風と無が特に。それ以外も結構いいっすし……」当たっている。


 (でも、今はまだなぁ、ちょっと遠慮したい)

 いつかはわからんけど幻葬士にはなるつもりだけどまだ、入りたい訳じゃない。先生とかから、教わらないし。


 「便利で羨ましいすっね、戦闘とかより日常では最高に役に立つ魔導っす」


 「へ、便利⁉︎」予想外の話だった。つまり、強くは……そういうこと……なのか?


 「まぁ、そうすっね。色々コピーとか、そういう時には使えるぐらいなんす。戦闘に使うなら適性必須クラスで、式も自分で考えなきゃいけないから、ぶっちゃけ弱いっす」


 (そん、な……いや、それがどうした。伸びしろがある魔導だ。しかも自分だけの。くく、俄然燃えてきた。むしろ、無属性の適性があったのは僥倖だった。)自分が思いつくだけで無属性はかなり便利だ。

 一つ、潜入とかサバイバルに便利だ。魔導が使える限り、道具を無尽蔵に作り出せる。


 二つ、戦闘では不意打ち、罠、武器の量産。使い方はいくらでもある。


 三つ、日常的に使えるから、魔導が鍛えられる。この他にも色々ありうるだろうがひとまず、使ってみないことには、分かりはしない。


 (それにしても、最強じゃね?いや、最強を目指すのに相応な魔導。例え、今は弱くて使えない魔導でも、強く出来る筈だ)決意は揺らがなかった。やれる。むしろ、自分が最強である証明に出来るかもしれない、そう思うと不思議と頭が冴えてくる。


 「月葉さん、幻葬士ってどうやってなるんですか?」知りたい。知らなくてはならない。鍛える方法、実践、研究、その全てが幻葬士なら出来る。


 「真くんは、幻葬士になりたいんすか?なるなら、最低でも、12歳以上。それも、普通はここで育てられた人であっても後方支援、荷運びぐらいっす。現実的にはって難しい話でしたっすね。」


 「大丈夫……」クソっ、まだ当分は先になるだろう。計画を立てる必要もあるだろう。それも、安全で先生が納得する、いや、先生が気が付かないようにやる。それが出来なくちゃ、多分、先生が行かせてくれない。あの人は俺のことを考えている人だ。心配はさせられない。


 そんな風に考えている時だった。

 「終わりましたか?」先生の声が響いた。


 「終わったところですね」


 「そうですか……これは!」


 「凄いですよね、真くん色んな才能がありますよ」


 「嬉しい限りです。これで幻葬士を……目指したり、いえ、真が選ぶ道ならいいです。真は……何かなりたかったりしますか?」


 「俺は……なってみたい。幻葬士になってみたい、先生みたいにカッコいい大人になりたいんだ!」


 「そうですね、真。」


 「えーと、何?」


 「これから先は貴方の力で頑張るようにしてください。先生は貴方の手助けはしますが、努力は自分でしてくださいね。でないと……きっと後悔します。約束ですよ」


 「うん‼︎」


 こうして、俺の人生が本格的に動き出したのだった。

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