第7話 幻葬士との出会い

俺は今、先生に連れられてSFゲームとか映画に出てきそうな外観の”幻葬士“とやらの支部に来ていた。


 と、その前にここに来るまでの経緯を話そう。

理由は単純、俺が適性検査をしたいと言ったからだ。

そしたら、なんかもう、凄い所に連れて来られた。

 ちなみにだけど、先生に行くと言ったのは昨日になる。俺が返事をした、あの後、先生は頷いたと思うと、すぐに動き始めて今度は何かに連絡したと思うと部屋から出て行ってしまった。その時に

「今日、今すぐというのは流石に遅い時間なので、明日になりますがいいですね?」そう、話を聞いている間にかなり遅い時間になっていたのだ。だから、流石に遅い時間である以上、すぐには検査を出来ないと考えていた俺にとっては先生の

 もちろん、俺にとって良い話というか、頼んだことである断る理由もなかった。もちろん二つ返事で

「大丈夫です」と返事をしていた。


 先生は嬉しそうに「分かりました」と微笑んで部屋から出ていった。


 そうして迎えた今日。


 俺は先生によって初めて孤児院の外に出ていた。とはいえ、外に出たからといって何か変わる訳ではなかった。ただ、俺にとっては初めて見る異世界の風景だった。だからだろうか、内心期待していた。


 だが、現実は非情だった。前世ほど、とは言わないが車があったし、何より周りは中世ファンタジーのようにレンガ等で出来た建物ではなく、コンクリートで建てられているのであろう灰色のビル。後は地球ね見かけるような家々、ビル群。前世と比べて、少々マシなのは自然が結構あるというところか。


 だが異世界なのだ、そんな風にも実感もする。前世では見たこともないものがある。それは、遥か遠くに見える“壁”。


(まさか、巨人とか怪物とかそういう人間に敵対的な生物がいたりするから……あんな物がある……のか?)

 俺はそれに対して、疑問に思うこともあり先生に質問していく。


 「先生、あの壁ってなんですか?」


 「あれは……また今度、説明するわ」

ますます、怪しいと感じる。今の間は明らかに俺に”何か”を伝えたくない様子だった。だが、今すぐには、聞けない。そうこうしている間に俺達は支部に着いていた。


 「真、ここから先はしっかり先生に着いて来てくださいね、本当は関係者以外立ち入りは出来ないので」


 (怖っ⁉︎ってか立ち入り大丈夫な先生って何者⁉︎)


 「よく来たね真くん、愛奈も久しぶりだね」

 先生の名前って愛菜っていうんだへー、じゃなくて何⁉︎先生ってもしかして……「幻葬士なの?」


 「おー俺はそうだぞー、ってまさか愛菜、お前自分のこと話してなかったのか⁉︎」


 「ええ、必要がないので」


 「お前らしいと言えばそれまでだが、まあいい……ゴホン、俺の名前は桑原 悠太 って言うんだ、真くん、今日はよろしくな。ちなみに、16で。そこの先生に教わった身だ」

 (先生の知り合いかー、それにしても先生は幻葬士か……なにそれ?)今の俺にとって、本当に分からないのは幻葬士って何者というもの。忘れているかもしれないが昨日から今日までちょくちょくと話に出て来ているけど教わってはいないんだよね……丁度いいし聞いてみるか?


 「桑原さん」


 「なんだー?」

  

 「幻葬士ってなんですかー?」

 

 その言葉を聞いた悠太さんの顔が、一瞬で曇った。

「おい、愛菜先生、これは一体どういうことか説明しろ」違った、この雰囲気はキレている。怒気を発しながら話す悠太さんは物凄く怖かった。ちょっと、ちびりそう。


 そんな悠太さんに対して、先生は

「そう言われると、説明していませんでしたね、それよりも……」ヤバっ⁉︎先生がプルプルと何かを耐えるように身体が震えて、顔は俯き表情は見えない。けど今日まで生きてきた今世の体が震えてくる。間違いなく先生もキレている。


 正直言って、こんなのは現代人には無理でした。誰か助けてくれ、と言わんばかりに視線を向ける。

 近くにいた人は目を逸らした。


 「お二人ともストーップです‼︎」

 二人の間に誰かが飛び込んできた。(たっ助かったと安堵す「なんだぁ?」「なんですかぁ?」(無理だった、助かってなかった。二人とも怖い。)


 「ひぅ、いや止まりませんよぉ、」救世主はそう言って俺を抱き抱えると「お二人のせいでこの子が怖がっているじゃないですか‼︎」

 

「それは……」「しまったな……」

 

「さあ、お二人ともやることは分かってますよね!」


『すみませんでした』凄いなこの人、この二人を止めちゃったよ。それにしても先生がここまで感情的になるなんて珍しいと思うし二人の関係も気になる。


「真くん、本当にすまないことをした、すまないが真くんのことは月葉、お前に頼んでもいいか?」


「ふぇ?なんでぇ⁉︎」もの凄く狼狽えていてかわいそうだけど、貴方なら僕が安心できるからです。


「真も貴方なら安心して案内して貰えると思っている筈です。月葉さん、私からもお願いします」はい、全くその通りです。本当になんで、子供の前で喧嘩するかなぁ?こっちは無差別威圧を受けて失禁寸前の所でした。だから、この人なら比較的安心して案内を受けられる。


「真も大丈夫そうですし、私達は少し奥で話し合ってきます」

「真くん、また後でね」


「じゃあ、行きましょっか」と、元気な声で聞いてくる。もちろん返事は……

「はーい♪」気分は新しいことへの期待でいっぱいだった。


 こうして、俺は幻葬士の人と出会ったのだった。ただ分からないことも多い。月葉さんに案内される道中に幻葬士について聞く。


「ふぇ?幻葬士すか?それならいいっすよ。あ、因みに私も16っすね」


 月葉さんによると幻葬士とは、


 葬装器を使って戦う組織の一員のことを、または幻影ファントムとそれを利用しようもする存在と戦う組織の一員のことを言うらしい。ただ今度は幻影って何者?となる。 もちろん月葉さんはそれにも答えてくれた。


 幻影またはファントムと呼ばれる存在がこの世界では存在し、それとの争いによって世界の半分程が荒廃している世界。らしい。らしいというのは事実かどうか完全に俺が確認できていないからなんだが……


 まあいい、話を戻す。こいつの歴史は随分と浅く、人類が文明を発展させ、魔導を発見した時から確認されているらしいこれが大体300年近く前の話。その正体は人類によって増えた負の感情、エネルギーによって生まれた、人間や生物にとって害を齎す負の存在、それがファントムの正体だった。


 幻葬士はこれを消し去るスペシャリスト、戦闘のプロだったという訳だ。因みに、これをサポートする人間もいるがそれは割愛する。


 こうして幻葬士の支部を訪れ、案内された俺の中の目標が改めて新しく、決められたのだった。目標は世界トップの実力。それは、幻葬士のトップとも言える。これからはそれが俺の目標だ。



 

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