第4話 英雄の誕生は常に意外な理由 その2
(さて、先生に呼ばれて入ったけど何を見せてくれるのだろう?)
「 では、"コレ"ですしっかり見ておいてください、他の人のは渡してあるのでくれぐれも取り合ったりしないでくださいね?」
そう言って先生は俺に一つの本を渡してきた。えーとタイトルは『馬鹿でも分かる魔導の本 入門編☆』 いかにも馬鹿にされてるような気がするようなタイトルだが転生した俺の目を引くのは魔導という見慣れない言葉……まどう……magic……魔導?
(ちょっと待って⁉︎ 此処地球じゃないの⁉︎えっ、嘘だろ⁉︎)
俺の中の新しい仮説、いや新事実によって古い認識がガラガラと音を立てて崩れていく気がする。
他の皆さん、正確には会ったのこの二人だけだけどバッチリ日本人の顔だったし、髪色が少しだけ俺と同じように色味が違うような気もしなくもなかったけど日本語話してましたやん⁉︎と、そんな訳の分からないツッコミが喉元まで出かかったがなんとか必死に堪えて、俺は考える。
そもそも、前世には魔導なんて言葉は精々、ファンタジー小説だとか、ゲームの世界にしかなかった。そんな世界の人間なんだぞ、言葉では出さなかっただけ褒められたものだと思う。だって普通さ、こんなん渡されたら驚きで叫びそうじゃん。
(それにしてもヤベェ、マジであんのか?あるんだよな、いよっしゃあ‼︎ 人生が変わる‼︎)
いや、一度落ち着こう。此処が異世界だったとしてどうだ?問題はあるか……あるな……まずは先生に聞いた方が安全というか無難な筈。そう思った俺は先生に対して聞くことにした。
「あの、先生なんで今日コレを渡してくれたんですか?」
「それはですね、あなたが昨日居なくて渡せなかったのと学校が理由です」
「学校?」
「ええ、あなたも来年から学校ですからね、魔導について少し触れておいた方が困らないでいられます」
(学校で習うってことだとしたら、まさしくファンタジーな世界だな)などとこの真は言っているが……よくよく考えれば、この男が転生し真という存在になったこと自体がよっぽどファンタジーである。閑話休題。
「なんで習うの?」
バレない為にも出来るだけ、子供っぽく振る舞う。自分にとってそれさえ分かればどうにかこの世界について僅かに理解出来る筈、そう期待しての言葉は、至極、正論な言葉で返された。
「それはですね……分かりやすく言うなら普通は日常で使われているからですね」
(おいおい、マジかよそんな様子無かったぞ⁉︎)
それもその筈、この孤児院生活では殆ど魔導は使われていない。普通は使われているのにも関わらずだ。もっとも、それは知識があれば分かること。ただ、それを知る筈である本来の彼はまだ4歳児という幼稚な子供だった、故にまだ魔導という存在自体を知らなかったのだ。これらが原因で、彼が前世の記憶を取り戻した後すぐに此処が異世界なのだと気が付かなかった訳だ。
「しかし、あなたがそんなに聞いてくるなんて珍しいですね、何かありましたか?」
(げっ、流石にボロが出始めたか?)
これ以上はまずそう、急いで誤魔化さないと!そう思った途端口が動いていた。
「だって、魔導だよ啓太兄ちゃんとか使っているの見たけどカッコいいじゃん!」
記憶に無い、そして思ってもいないことがスルスルと口から出てくる。
(何、言ってんの俺⁉︎流石にバレる!)
「あの子は!ゴホン、まあいいでしょう、真、あなたは魔導について何も知らない筈です、その心構えも含めて、なのでこの後先生と一緒に勉強です、いいですね?」有無を言わせない迫力があった。
当然、こういう時は身体が勝手に動くから…
「は、はい!」と終わらせてしまって、言いたいことが言えない。まだ聞きたいことがあるんだけど……駄目だなこれ身体が思ったように動いてくれない。
「ただ、私も仕事があります、なので午後からになるのでそれまではその本を読んでいてください」
「はーい、じゃあね先生」
「ええ、また後で」
こうして、俺はこの世界についてのことを少しだけ知ったのだった。
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