第3話 英雄の誕生は常に意外な理由

頭をぶつけた次の日、もとい俺の転生して2日目がスタートした。

 ベットから小さい体を起こして、地面に足をつける。毛なんて生えていない若々しい膝小僧が目に入った。改めて自分が転生したということを実感した。


俺はまだ痛む頭を我慢して洗面所に歩いてる。俺の今世の記憶に朝は起きたら、直ぐに顔を洗う。というのがあってそれに従っているという訳だ。


「それにしても二度目の人生か……」


 顔を洗いながら呟く、何か地球と違いがないかと期待して、転生した後の自分の顔を鏡で見る。


 (とても前世とは似つかない顔だけど……日本人ぽいな…… )


 どこからどう見ても日本人らしさ溢れる黒髪が生えている。眼も碧眼とかじゃなくて普通の黒に近い少しだけ緑がかった黒色の眼。確か、緑ってめちゃくちゃ珍しいけど無いわけではなかった筈。


 (やっぱり前世の記憶があるだけか……駄目だな、どうも憂鬱な気持ちにしかならない。)


 そんな事を思いつつ、今世の記憶を頼りに朝は動く事を決める。だって、いきなり変わったりしたら間違いなく怪しまれるだろう。なんたってここは異世界でもなく地球なのだ、いや日本か。どちらにせよこういうのは子供らしくしてるのがだぶん一番だよね?


そんな事を思っていると……


 ガチャ


 「おー?真か、おはよう、頭をぶつけるなんて大丈夫か?」


 「あ、啓太兄ちゃんおはよう、頭はまだ痛いかな」


 昨日と同じように、自分の意識から離れて身体が動く、がいい加減理解した。さっきから身体に引っ張られるような感覚があったけど多分これは、この真という今世の記憶が動かしているんだと思う。


 今世の記憶を引っ張りだしてくる。


 えーと、確か 啓太兄ちゃん カッコいい兄貴 十二歳 名字は……覚えてない。自分でいうのもなんだけどめちゃくちゃ適当な覚え方だよなぁ。ちなみに僕自身……俺の今世の記憶を引っ張りだすとなんか、子どもみたいな思考になるんだよなぁ。 


(うわ!恥ず⁉︎これ早くしないとメンタルが死ぬな)


 それで、これなんとかならないかなぁ?って思ってなおそうとするんだけど……これ、自分であって自分じゃないからどうしようもない。だって無意識の反応だ。ある意味、前世よりキツイなこれ……。


「そういえば、真、お前先生に呼ばれてたぞ?」啓太兄ちゃんがふと、思い出したように俺が先生に呼ばれていたことを教えてくれた。


「えっ⁉︎」心当たりがある。


昨日、寝る時に……ふと、先生は


(明日は私を手伝ってくださいね、なんて言ってたっけ、もしかしてそれかなあ?)


「なんでも、お前も来年から学校があるだろ、それなのに昨日一日中熱出して休んでいたお前になんか渡したいものがあるらしいぞ?」


 (そっちも言ってたっけ?それかぁ)


 「分かった、啓太兄ちゃんありがとね。じゃあまた。」


 「転ぶなよー」


 「はーい♪」


 「うん、元気そうで何よりだな」


 さて、いきなり走り出したけどこれは無意識なんだよなぁ、だって先生怖いんだもんしょうがない。あの人を怒らしたら僕は……。


 はっ⁉︎凄く混ざっていた気がする。これ早くしないとヤバそうだな。転生したと分かってすぐこれかよ、前途多難もいい所だな。そんな事やこんな事で院長である先生の部屋に着いてしまった。 


 「先生いますか?入りまーす」


 「今日はちゃんと言葉を言って入れましたね、さて貴方に見せたいものがあります」



______________



(今、思うとアレがキッカケでこの世界に入ったんだったかな)


帰り道で振り返ってみればそんな気がした。


この呼び出しが、いや、今も大切に保管しているコレを見る事になるのが、陰の英雄となる少年が生まれるキッカケとなるとはまだ、誰も知らない。いや、未来では知られている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る