序章

第1話 プロローグ

「嘘ですよね?」呆然と聞き間違いじゃないのかと、あわよくばそうであってくれと願って聞き返した。


「事実だ、大人しく認めるんだな」


ここは、とある組織の建物の中。そこの一角にある会議室を貸し切りにして、2人の人間が言い争っていた。


「なんで俺が昇格なんですか⁉︎」否定の言葉を声を荒らげながら発した人間の顔を見れば、どうしても嫌だ。そんなことをされる位なら辞めてやる。そんな現状を拒む心情がありありと表現されていた。


「冗談を言うな、自分がどれ程の功績を上げてきたか知らない訳ではないだろう?」もう片方の人間は涼しげに、どこか遠くを見ながら呟いた。ヒラヒラと片方の手を向けて振っているあたり、彼に諦めろと伝えたいらしい。


「だからといって、十二秘奥はないですよ⁉︎」組織の中で新たに作られることになった部隊の名前がそれだった。いや、正確に言えば名ばかりだった部隊だ。その最初のメンバーともなれば仕事は今の比ではなくなるのだろう。


そう言うとイヤイヤと彼は頭を抱えて蹲り、聞こえませーん!と大声を上げる。


これに辟易としたのがもう一人の方だった。駄々っ子かよと、米神がヒクヒクと引き攣った。それをどうにか抑えて説得を始める。

「あのなあ、とっとと受け入れて仕事しろ。ガキじゃあるまいし……はぁ、連れて行け」違った。聞いているのも面倒くさくなっただけだった。


どうやら、無理矢理どかして仕事を与えた方が楽だと考えて、もう一人の方は後ろに控える部下に指示を出した。


「は、了解しました」忠実な部下は頷くと、口を荒らげる人間を暴れ馬を抑えるように無理矢理もう一人の男の前からどかす。


「ふざけんなぁぁぁぁぁああ、後で覚えてろ糞上司ィ俺はお前を許さn」 


 バタン


「よろしかったので?」


「構わん、あいつなら問題ないだろう」


「それもそうですね」



____________________________________________


上司の手によって、中々に最悪。と言わざるを得ない昇進を言い渡された俺は夕暮れに染まって赤くなった道を歩いていた。


近くに公園でもあるのか、キャッキャッと子供特有の高いの声が聞こえてくる。その無邪気な声が余計に、自分の歳を感じさせ一抹の虚しさを覚えた。


自宅へと帰る道すがらため息をついた。


「なんでこうなるかなあ」


自宅への道を進む俺は、どうしてこうなったのかを自分が転生してから振り返っていた。

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