短編 修学旅行の青い一幕

 新幹線のなかにいる。

 修学旅行もメインイベントは全て終了し、残すところは帰るのみである。


 旅行の舞台となった京都・大阪を出て、東京駅を経由し、仙台駅へと向かう。


 新幹線のなかではお菓子を食べながら談笑、トランプ、アプリゲームなどなど各々が思い思いに過ごしている。


「ちょっとトイレ行ってくる」


 そう言ってクラスのいじられキャラは席をたつ。

 するんっとポケットからスマホが落ちる。


 それを拾い上げる。

「スマホ落ちたよって――行っちゃった……」

 まぁトイレ行くだけだし大丈夫か。


 3泊4日の修学旅行も終わる。


 1日目は金閣寺に行った。池に反射する金閣寺良かったな。


 2日目は道頓堀に行ったけどクラスメイトが行方不明になったり、バスも時間内に来なくて初見の大阪の街走り回って、USJ行ったけど2時間しか滞在できなかったり……その後ホテルで先生に怒られたな。


 3日目は班別研修で嵐山で竹林と紅葉で癒されて、錦市場でおいしいもん食ったな

 あとは伏見稲荷行ったけど、結局頂上までは行かずに途中で降りて……


 4日目の今日は清水寺。修繕工事してたけど逆にラッキーだったかもなー


 なんだかんだいって結構楽しかった。

 けどもうそんな時間も終わって明後日からまた学校に登校して授業を受けて部活をして帰る。そんな日常を繰り返す。


 そんなことを考えると後ろでシャッター音が聞こえる。


 カメラマンさん帰りの新幹線でも写真撮ってくれてるのか。

 そして、俺たちの座席のところにカメラマンさんが来る。


「はーい、こっち向いてー撮りますよー」

「あ、ちょっと待ってもらってもいいですか?1人トイレ行ってるんで」

「OK。じゃあその子待ちましょうか」


 せっかくなら一緒に撮ってもらいたい。

 トイレ混んでるのかな。

 スマホここにあるから連絡できないし……


 あ、いいこと思いついた。


 早速周囲のクラスメイトに浮かんだアイディアを共有する。

「いいね~」

「面白そう!」

「そんなこと思いつくとは意外とお主も悪よの~」


 好評だ。


 でも、これにはカメラマンさんにも協力してもらうことが必要不可欠。

 カメラさんにも共謀者になってもらおう。


「ふむふむ。なるほど、面白い!やりましょう!」


 よし、周囲のクラスメイトとカメラマンさんは共犯者。

 首謀者は俺だけど。


 準備は整った。あとはあいつが帰ってくるのを待つだけ。


 お、戻ってきたな。

「いやートイレめちゃくちゃ混んでたわー」


「それじゃあ全員そろったので撮りますよー」

 首から下げている一眼レフカメラを構える。

「あれ、もしかしてオレ待ちだったの?」

「そうそう」

「それは悪いことしたなー」


 パシャリ。

 1枚目を撮り終わる。


「うん!皆さん良い表情してますね~」


 カメラマンさんがそんなことを言っているなか。

 いじられキャラの彼はあたふたとスマホを探していた。


「あ、あれ~俺のスマホどこいったかな~」

 ポケット、座席の下などを探している。

 けど残念ながらそこにはない。

「まぁまぁ今はいいじゃん。そんなことより2枚目くるぞ」


 俺はしらばっくれる。だが俺はスマホを持っていない。


「それじゃあもう1枚いきますね~」

 そう言ってカメラマンさんはポケットのなかからスマホを取り出す。


「ん?あ!それ俺n――」

 パシャリ。


 新幹線の中は笑いに包まれる。

 俺たちから遠い位置に座っている人たちは何が起こったかわからないだろう


 その1枚は金閣寺、道頓堀、USJ、嵐山の竹林と紅葉、伏見稲荷、清水寺のどんな歴史的建造物やテーマパーク、美しい自然の前で撮った写真よりも清々しかった。


 思い出に残る1枚とはこんな写真やこんな一幕なんだなと気づいた。

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