第26話 革命軍が我が家に攻めて来ました!

トーマス様と一緒に歌劇を見に行った翌日、なぜかトーマス様が率いている騎士団が家の警護にやって来たのだ。トーマス様の話によると、軍団長でもあるジャクソル元公爵家の次男が、私を攫いに来るかもしれないかららしい。


それにしても、まさか家にトーマス様がいらっしゃるなんて!こんなに嬉しい事があっていいのかしら?そう思う程、毎日が幸せだ。せっかくなら家で快適に過ごして欲しい。そんな思いから、全力でもてなした。そんな日々を過ごして早2週間。


「それじゃあルシータ嬢、今日も扉の外で見張っているから、何かあったら声を掛けてくれ」


「分かりましたわ、トーマス様、お休みなさい!」


「お休み、ルシータ嬢」


今夜もいつもの様に部屋の前でトーマス様に挨拶をして、部屋に入る。湯あみを済ませ、ベッドに入った。今日も1日幸せだったわ。こんな日々がずっと続けばいいのに!そう思い、瞳を閉じた。


ガタン!


ん?今何か音がしなかった?ゆっくり瞼を持ち上げると、目の前にいたのは何とジャクソル元公爵家の次男、そう、革命軍の軍団長だ!嘘…どうやって入って来たの?


ふと窓の方を見ると、閉めてあったはずの窓が開いている。でもこの部屋は3階。そうか!気球で来たのね!


「起きてしまったか!クソ、眠っている間に連れて行こうと思ったのに!まあいい、さあこっちに来い!」


私の腕を掴んだ軍団長!嫌!


「トーマス様!!!助けて下さい!!!」


自分でもびっくりするほど大きな声が出た!その瞬間



バァーーーーン

「ルシータ嬢!どうしたんだ?


勢いよく扉が開いたと思ったら、トーマス様が物凄い勢いで入って来た。


「なんでお前がこんなところにいるんだよ!クソ、一旦引き上げるぞ!」


トーマス様の姿を見て気球で逃げようとする軍団長。


「させるか!お前たち、外の気球を弓矢で射抜いて落せ!」


近くにいた騎士団員たちに指示を出すトーマス様。


「クソ!お前たち、あいつを倒せ!」


軍団長の1言で、一気に革命軍がトーマス様に襲い掛かる。でも、もちろんトーマス様が負ける訳がない!あっという間に倒してしまった。


「もう逃げられないぞ!観念しろ!」


トーマス様が少しずつ軍団長に近付く。完全にこちらの勝利だ!

そう思った次の瞬間


バァーーン


大きな爆発音の様な音と共に、トーマス様が倒れた。一体何が起こったの?急いでトーマス様の元に駆け寄る。すると胸から血を流しているではないか!


「トーマス様!大丈夫ですか?一体何があったのですか?とにかく血を止めないと!誰か!誰か来て!」


私の声でジョセフ様や他の騎士団員がやって来た。


「トーマス、一体どうしたんだ!とにかく止血を!それから今すぐ医者を呼べ!」


かなりの出血量だ!このままだとトーマス様が死んでしまう!


「ハハハハハ、お前たち、これが何か知っているか?これは拳銃だ!これさえあれば俺は無敵なんだよ!」


拳銃ですって…遠くの国では、拳銃と言う飛び道具で遠くにいる生き物を殺傷する事が出来ると聞いた事がある。まさかそんな道具を、この男が持っていたなんて…


「さ~て、次は誰を殺そうかな」


そう言って拳銃をこちらに向ける軍団長。このままでは皆殺されてしまう。こうなったら、やるしかない!


「軍団長様、あなたの目的は私なのでしょう?私があなたの元に行きますから、どうかこれ以上騎士団員たちを傷つけないで下さい!」


「ル…シータ…嬢…ダメだ…」


苦しそうなトーマス様の声が聞こえる。でも、ここで私が行かないと、皆が殺されてしまうわ。


「さすがジョーンズ公爵家の娘だ。美しいだけでなく、聡明な様だな!いいだろう、ルシータ嬢が俺のものになるなら、こいつらは助けてやろう。おっとお前たちは動くなよ!動いたら撃ち殺すからな!そう言えば、気球が弓矢で射抜かれて駄目になったんだったな!今すぐ移動用の馬を準備しろ!大至急だ!それからルシータ嬢は、俺の元に来い!」


言われるがまま、ゆっくりと軍団長の元へと向かう。


「それでいい!よし、後は馬に乗って逃げるまでだ!行くぞ!」


今だ!拳銃を握っている軍団長の右手に、思いっきり噛みついた!


「いてぇぇぇ!貴様!何をしやがるんだ!」


悲鳴を上げ、拳銃を落とした軍団長。怒りからか私に殴り掛かろうとしている。このままでは殴られる!そう思った時だった。


バキ!!


「ウギャーー」


誰かが殴られる音と、軍団長の間抜けな悲鳴が聞こえた。ゆっくりと目を開けると、そこにはトーマス様の姿が!胸からは大量の血を流しているのに!どうやらトーマス様が軍団長を殴り飛ばした様だ!ただ、すぐに倒れこむトーマス様!


「トーマス様!大丈夫ですか?とにかくじっとしていて下さい!すぐに医者が来ますから!」


必死にトーマス様に訴えるも、意識が朦朧としている様で、瞳の焦点が合っていない。このままだとかなりヤバい!


「ルシータ嬢…愛している…ずっと言えずに…すまなかった…」


一瞬にこりと微笑んだトーマス様、そのまま瞳を閉じてしまった。


今なんて言った?私の事を、愛しているって言ったわよね…でも、目を閉じてしまったトーマス様。顔色も見る見る悪くなっていく!


「トーマス様、目を開けて下さい!言い逃げなんてずるいです!お願いです。目を開けて下さい!トーマス様!!!」

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