第24話 やっぱりトーマス様はカッコいいです!

しばらく戦いの様子を見ていると、どうやらトーマス様が呼んだ騎士団員たちが何人か応援に駆け付けた。それでもまだ人数的に不利だ!と、次の瞬間、幹部と思われる革命軍の1人と目が合ってしまった。


ヤバイ!!

直感でそう感じ、急いで隠れる!何人かの革命軍たちを連れ、歩きはじめた幹部の男性。大丈夫よ!この部屋は鍵が掛かっているし、そもそもここはVIPルーム。通路も複雑だし、きっと見つからないはず…


それでもやっぱり怖くて、恐怖で身を縮こませる。しばらくすると、近くから令嬢たちの悲鳴が聞こえる。どうやらこのVIPルームにやって来ている様だ。どんどん悲鳴が近く大きくなっていく。きっと1つ1つ扉を開けて確認しているのだろう。


どうしよう…

見つかるのも時間の問題だわ!

恐怖でさらに体を縮こませる。


ドンドンドーーン

ドアを壊そうとする音が聞こえる!ついに来た!どうしよう…


そしてついに

バーーーン

ドアが開いた!


「軍団長、ここには誰もいない様です」


「バカか!誰もいないのなら、どうして鍵が掛かっているんだ!どこかにあの美しい令嬢が隠れているはずだ!探し出せ!」


軍団長ですって…幹部だろうとは思っていたけれど、まさか軍団長だなんて…


荷物入れの為のクローゼットに身を寄せている私。こんな所、すぐに見つかるだろう。そう思ったが、ここしか隠れる場所が無かったのだ。


もちろん、速攻でばれてしまった。


「軍団長、いました!例の令嬢です」


私を引きずり出す革命軍。


「嫌、放して!」


必死に抵抗するが、もちろん敵う訳がない。


「やはりお前はジョーンズ公爵家の娘だな…あぁ、なんて美しいんだ!俺の妻にしてやる」


妻ですって!嫌よそんなの、私はトーマス様の奥さんになるのだから!でもこの人、どこかで見た事があるわ…


「あなた様は一体誰なのですか?どこかでお会いした事がある様な気がするのですが…」


「さすがだな。俺は5年前汚職に手を染めた父のせいで、家を取り潰されたジャクソル家の次男だ。


ジャクソル家と言えば、元公爵家で5年前まで物凄い権力を持っていたと聞いたわ。確か一番上のセレナお姉様に求婚していた人物でもある。だから何となく覚えていたのだわ…


「どうして元公爵令息がこの様な恐ろしい事をするのですか?」


「どうして?そんなもの決まっている!俺達家族を地獄に突き落としたこの国の王族に、復讐する為だよ!特に今の王太子は、卑怯な手を使って俺からセレナを奪ったんだ!」


卑怯な手?おかしいわね、お姉様は最初っからお義兄様と相思相愛だったような…


「軍団長、急ぎましょう!随分と騎士団員が集まって来ています」


「分かった、とにかくお前は俺の妻として一緒に来てもらうからな!」


そう言って私の腕を掴んだ軍団長。


「嫌、放して!!」


必死に抵抗するが、もちろん敵うはずがない!このままだと連れていかれる!そう思った時だった。


「俺のルシータ嬢に触れるな!!!!」


怒鳴り声と共に吹き飛んでいく軍団長。


「トーマス様!!」


どうやらトーマス様が軍団長を殴り飛ばした様だ!


「ルシータ嬢、怖い思いをさせてすまなかった!とにかくこいつらを始末するから待っていて欲しい!」


私を安心させる様に、目を見てはっきりと伝えてくれたトーマス様。とりあえず邪魔にならない様に、隅っこに待機する。


でも革命軍の人たちは軍団長を入れて8人、こちらはトーマス様1人。ちょっと、明らかに不利じゃない?そう思ったのだが…


物凄い勢いで革命軍たちを倒していくトーマス様。その姿はまさに、圧巻だ!さらに軍団長も追い詰めていく!その時だった。


「軍団長、こちらに!」


えっ?窓の外に人が…一体どういう事なの?一瞬の隙をついて窓から飛び降りる軍団長。ここは3階よ!まさか自ら命を絶たの?そう思ったが、空飛ぶ乗り物に乗って飛び去ってしまった。


あの乗り物、何かの書物で見た事があるわ。確か異国で使われている乗り物で、気球と言ったわね。あんなものまで準備しているなんて!


「ルシータ嬢!大丈夫か?」


物凄い勢いで私の元に走って来たトーマス様。


「はい、私は大丈夫です!トーマス様が助けて下さったので。でも、怖かったです!」


そのままトーマス様に抱き着いた。あんなにも恐ろしい思いをしたのだ。少しぐらいご褒美をもらっても、罰は当たらないだろう。


それにしても、トーマス様の分厚い胸板…素敵だわ。ついスリスリしてしまう。そんな私を引き離すかと思いきや、なんと抱きしめてくれたのだ!


キャーーー

なんてラッキーなの!この機会を逃す訳にはいかない!ここぞとばかりに、トーマス様にすり寄る!あぁ…幸せ…


そんな幸せを噛みしめている時だった。


「トーマス、大丈夫か?」


やって来たのはジョセフ様率いる騎士団員たちだ。急いで私を引きはがすトーマス様。チッ!いいところだったのに!


「ああ、俺たちは大丈夫だ。すまん、幹部を逃がしてしまった。でも、あいつの体に居場所を特定できる器具を忍ばせたから、きっとアジトは特定できるはずだ!」


何ですと?あの短時間でそんな事まで!さすが私のトーマス様だわ!そうだ!


「トーマス様、どうやらさっきの男は、5年前御家取り潰しになった、ジャクソル元公爵家の次男です。ご丁寧に私に自己紹介をしてくれましたの!」


「何だって!なるほど!ジャクソル公爵家ならやりかねないな!とにかく、俺は今から騎士団の本部に戻って急遽会議を開かないといけない!こんな事になってしまい、申し訳ない。せめて家まで送らせてくれ!悪いがジョセフ!後始末と各騎士団長達の招集を頼む。俺もルシータ嬢を送ったら、すぐに合流するから!」


「分かった!任せておけ」


そう言って縛り上げた革命軍を連れて、去って行ったジョセフ様。私もトーマス様に連れられ、家に帰って来た。


「この埋め合わせは必ずする!本当にすまなかった!」


そう言って急いで去って行ったトーマス様。デートがこんな形で中止になったのは残念だったけれど、トーマス様の勇ましい姿を生で拝めたのだから、これはこれでラッキーだったわね。


トーマスの姿を思い出し、1人ニヤニヤするルシータであった。

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