第11話 騎士団長として人生を全うしよう~トーマス視点~
公爵家の次男として産まれた俺は、なぜか両親に似ても似つかないゴリラ顔だ!どうやら祖父に似たらしい。そんな俺は、次男という事で早々に騎士団に入団した。恵まれた体格に加え、血のにじむような努力の結果、18歳で騎士団長になった。
そんな俺の悩みは、このゴリラ顔だ。俺の将来を心配した両親が、頻繁に夜会に行かせるようになった。でもこのゴリラ顔のせいで、令嬢たちは俺の顔を見るなり、悲鳴を上げて逃げていく。
俺も一応人間だ。悲鳴を上げて逃げられると、正直傷つく。両親に「もう夜会には参加しない!」そう宣言すると、今度はお見合いの席を設ける様になった。もちろん、そこでも悲鳴を上げて逃げていく令嬢たち。
中には泣き出したり、失神したりする者も現れた。そんな中、俺が19歳の時に俺と結婚してもいいと言う女性が現れたのだ。俺なんかと結婚してくれるなんて!嬉しくて、彼女が欲しがるものは何でも買い与えた。もちろん、デートにも頻繁に誘った。出来るだけ彼女と一緒に過ごそう。そう思ったのだ。
でもなぜか彼女は、俺と歩くとき少し距離をとっていた。そう、あの時に気づくべきだったんだ…そして迎えた結婚式前日
「トーマス様、やっぱりあなたとの結婚は無理です!あなたは公爵令息なので、あなたと結婚すれば家の格も上がると思って我慢していたのですが…どうしても受け入れられないのです!本当にごめんなさい!」
涙を流して謝る彼女。そうか…彼女は家の為に俺と結婚しようとしていたのか…それでも、どうしても俺を受け入れられない…その言葉が胸に突き刺さる!
やっぱり俺は、令嬢との結婚は無理なんだ…
そして俺はこの出来事のせいで、令嬢が完全に苦手になった。もちろん、全く令嬢に興味が無い訳ではない。美しい令嬢を見れば、胸がときめく事もある。でもいくら俺が思っても、相手を怖がらせるだけだ!俺には騎士団長という仕事がある。この仕事に俺の人生を注ぐことに決めた。
それからというもの、令嬢と触れ合う事など一切なく、ただひたすら騎士団長として仕事に励んだ。そんなある日
「騎士団長!大変です!貴族主催の夜会会場に、革命軍が押し入りました!」
「何だって!動ける者達はすぐに現場に向かえ!俺もすぐに向かう!」
急いで馬にまたがり、会場を目指す!
「団長!こっちです!どうやら貴族が人質として連れていかれた様です!」
すぐに現場を確認すると、前日雨が降っていたおかげか、車輪の跡がくっきり残っている。きっとこの跡を辿れば、人質を見つけられるはずだ!
「お前たち、俺に付いてこい!」
騎士団員たちを引き連れ、馬で車輪の跡を追う。すると、1台の大きな馬車を発見した。
「革命軍の可能性がある!気を引き締めろ!」
団員たちに声を掛けた。そして馬車の行く手を阻み、無理やり停めさせた。やはり革命軍が何人も乗っており、そいつらから荷台の鍵を奪う。すぐに鍵を開けると、20人程度の人質たちが、身を寄せ合って震えていた。
「もう大丈夫だ!すぐに解放してやるからな!」
そう言って人質たちの縄を解いていく。ここは薄暗い、令嬢たちも俺の顔を見て驚く事はないだろう。一通り縄を解いたところで、すぐに荷台から降り団員たちに指示を出す。
その時だった。
「あの、先ほどは助けていただき、ありがとうございました!よろしければ、お名前を教えていただけますか?」
美しい声が背後から聞こえた。ゆっくり振り返ると、そこにはジョーンズ公爵家の末娘、ルシータ嬢の姿が。なぜ俺がルシータ嬢を知っているかって?ジョーンズ公爵家の美人3姉妹を知らない者など、この国には存在しない!
とにかくこの世の者とは思えない程美しい姉妹なのだ。既に上の2人は王族に嫁いでおり、末娘のルシータ嬢が誰と結婚するのか、騎士団内でも賭けが行われるほど注目が集まっているのだ。
そんな彼女が、あろう事か俺なんかに話しかけて来るなんて…もしかして、薄暗くて俺の顔がはっきり見えないのか?それなら好都合!こんな女神の様に美しい女性に悲鳴を上げられては、さすがにへこむ。軽くあしらい、その場を去った。
でも…
物凄く鼓動が煩い…彼女の美しさは知っていた…でも、まさかこんな近くで拝めるなんて!って、俺は何を考えているのだ!とにかく今は革命軍を連れて行かないと!
捕まえた革命軍を連れ、一旦騎士団の本部へと戻る。取り調べは別の部隊が行う為、そいつらに引き渡したら終わりだ。
「おい、トーマス!革命軍が夜会を襲ったんだってな!それでどうなったんだ?その夜会には、俺の妹も参加していた様なんだ!」
真っ青な顔をして俺に詰め寄るのは、ジョセフだ。俺とは似ても似つかない美しい顔のジョセフ。既に結婚しており、子供までいる。ジョセフとはなぜか昔から馬が合う為、今では一番信頼できる仲間だ。
そんなジョセフには物凄く美しい妹がおり、今の社交界でルシータ嬢と並んで2大美女と呼ばれている。
「人質なら解放したぞ!もうすぐ家に帰って来るんじゃないのか?」
ルシータ嬢に目を奪われていて、こいつの妹まで確認する事が出来なかったが、多分大丈夫だろう。
「そうか!ありがとう!それじゃあ、俺は妹が心配だから屋敷に戻るわ!それよりトーマス、顔が赤いぞ!大丈夫か?」
「べ…別に赤くなどない!」
「それならいいが…それじゃあ!」
そう言って帰って行ったジョセフ。とにかく今日は、美しいルシータ嬢が拝めてラッキーだったな。もう二度と話す事も会う事も無いだろうが…
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