第10話 出入り禁止になりました
翌日、早速お礼用にカップケーキを焼いた。もちろん、トーマス様にサンドウィッチも作る。昨日は食べてくれたから、きっと今日も食べてくれるわよね!
早速騎士団に向かう。騎士団に着くと、まずジョン様に話しかけた。
「ジョン様、昨日はありがとうございました!これ、私が焼いたカップケーキです。良かったら食べて下さい!」
「わざわざ俺の為にケーキを焼いて来てくれたのかい?ありがとう。大切に食べるよ!」
嬉しそうに受け取ってくれたジョン様。喜んでもらえて良かったわ!そしていつもの様に、レイラと一緒に騎士団の稽古を眺める。相変わらず、トーマス様はカッコいい!
「ねえルシータ。今日の騎士団長、なんだか物凄く機嫌が悪いわね。何かあったのかしら?」
言われてみれば、いつもより怒号が激しく飛び交っている。何かあったのかしら?そして迎えた休憩時間。早速トーマス様の元へと向かう。
「おはようございます!トーマス様。今日もサンドウィッチを作って来ましたの!良かったら…」
「俺は何度も何度も女は嫌いだ!そう言ったよな?なのに毎回毎回、俺に付きまとって一体何なんだよ!そもそも、昨日は別の男と楽しそうにお茶を飲んでいたくせに!俺をからかっているのか?とにかく、もう二度と俺に関わるな!女が稽古場にいると士気が下がる!明日から、稽古場への入場を禁止する!いいな!二度とここに入るな!」
物凄く怖い顔でそう言い放ったトーマス様。そしてすぐにその場を去って行った。
「おい、待てよ!トーマス!」
ジョセフ様が急いでトーマス様の後を追って行った。
「大丈夫?ルシータ!それにしても、何なのあのゴリラ!感じ悪いわね!」
「大丈夫かい?ルシータ嬢。今日の騎士団長、ちょっと機嫌が悪いみたいで…ごめんね!あまり気にしなくていいから…」
私を慰めてくれるレイラと騎士団員たち。
「ありがとう…皆。私は大丈夫よ!今日はもう帰るわ!ごめんね、レイラ」
レイラに断りを入れ、一旦稽古場を後にした。でも、どうしても家に帰る気がしない。なんとなく向かった先は、昨日ジョン様と来た騎士団の敷地内にある中庭だ。1人ベンチに座る。それにしても、本当に奇麗に手入れされているのね。こうやってお花を見ていると、何だか心が和むわ…
「はぁ~、やっぱりちょっとしつこかったかしら?でも…」
初めて知ったこの気持ち。諦めろと言われても、諦められない…トーマス様直々に出入り禁止を言い渡されてしまったものね…やっぱり私、目障りだったんだわ…
その時だった。
「あら?こんなところで1人で何をなさっているのですか?」
話しかけてきたのは、食堂で働いている婦人だ。カゴには沢山の野菜を持っている。そう言えばジョン様が、花壇の奥には畑があると言っていたわね。きっと畑から野菜を収穫してきたのね。
なぜか私の隣に座る婦人。きっと私を心配してくれているのだろう。
「実は私、騎士団長様を怒らせてしまいまして…稽古場を明日から出入り禁止になってしまったのです…」
「まあ、そうだったのですか!あなた様が騎士団長様に好意を抱いていらっしゃると言うお話は、私共の耳にも入っておりましたわ。騎士団長様はとてもいい方なので、出来ればあなた様と恋仲になってくれればと、私たちも思っていたのですが…」
まあ、食堂で働いている婦人たちの耳にも入っていたのね!あれだけ追い回していたのだから、不思議ではないか…
「それで、あなた様はこれからどうなさるおつもりなのですか?このまま諦めてしまわれるのですか?」
「私は…」
言葉を詰まらせた。本当は諦めたくはない。でも、出入り禁止と言われたのに、無理に押しかけても迷惑だろう。
「それでしたら、私に良い
考えがあるのですが」
そう言って私に耳打ちしてきた婦人。
「でもそれでは婦人たちにご迷惑が掛かってしまいますわ!私は本当に何も出来ない駄目な令嬢なのです!」
「そんな事はありませんわ。それに、私たちも助かりますし!ぜひお願いいたします」
そう言って頭を下げた婦人。婦人の提案は物凄く有難い。う~ん…
「分かりました!こんな私でよろしければ、どうかお願いいたします」
悩んだ結果、婦人の誘いを受ける事にした。正直まだ不安はあるが、やらないよりやった方がいい!
「まあ、ありがとうございます!助かりますわ!それでは、来週からお願いしますね!それでは私はこれで」
そう言って私に会釈をして去って行った婦人。せっかく婦人がああ言ってくれたのだ!婦人の好意を無駄にしない様に、早速準備しないとね!
俄然やる気を見せるルシータ、足取り軽やかに屋敷に帰って行ったのであった。
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