第8話 失態くらいでへこたれません!
翌日、今日も再び厨房でカップケーキを作る。今日もやはり小麦粉を顔や髪に付け、洋服には卵や牛乳を付けてしまった。
そんな私を見て
「一体どんな風に料理をしたら、こんな有様になるのかしら…料理人たちのお給料、増やしておかないとね…」
そう呟いたお母様。私の専属メイドたちも苦笑いしている。料理の後は湯あみをし、着替えも済ませた。姿鏡をチェックする。よし、今日はバッチリね!
もちろん今日も、騎士団に向かう。
「トーマス様、おはようございます!今日もカップケーキを作って来ましたの!それから、昨日は御見苦しい姿をお見せして、申し訳ございませんでした!今日はちゃんとチェックして来たので、大丈夫ですわ!」
今日はきっと完璧なはず!
早速カップケーキを手渡そうとしたが、なぜか受け取ってくれない。あれ?
「この前も言ったが、俺は女が嫌いだ!それから、甘いものもな!」
そう言って、去っていくトーマス様。何ですと!甘いものがお嫌いですって!!なんて事なの!
カップケーキを騎士団員に託し、フラフラとレイラの元に戻ろうとしたのだが。いつの間にか騎士団員の1人と仲良くなっていたレイラ。楽しそうに2人で話している姿を見たら、これは邪魔してはいけない!そう思い、そっと2人の様子を伺う。
再び稽古に戻って行った騎士団員たち。すかさずレイラに近付く。
「レイラ!あの騎士団員と随分と仲良しになったのね!物凄くいい雰囲気じゃない!」
ニヤニヤしながらレイラを突く。
「べ…別に彼とはまだそんな関係じゃないわよ!そんな事より、騎士団長にカップケーキを渡すことが出来たの?」
「トーマス様、甘いものがお嫌いなのですって!私の情報不足だったわ!明日からは、甘くない食べ物を作って持ってこないとね!それより、さっきの令息とはどうなの?レイラ、あの令息の事相当気に入っているんじゃないの?」
今は私の事よりも、レイラの事だ!
「気に入っているだなんて!確かに彼はカッコいいし…優しいし…それに今度遊びに行こうって誘ってくれたし…」
「デートに誘われたって事よね!良かったじゃない!絶対に行くべきよ!確かあの令息は、サンクーセス侯爵家の3男、ピーター様よね。身分的にも問題ないもの!レイラ、このチャンス、逃したら駄目よ!レイラは少し恋愛に鈍感な所があるから心配だわ!」
いつも助けられているレイラの恋!私が出来るだけサポートしないとね!
「ありがとう、ルシータ。あなたを見ていると、なんだか勇気が湧いて来るわ!そうよね、私、ピーター様と向き合ってみるわ!」
「そうよ!その意気よ!頑張ってね!私もレイラに負けない様に、頑張るから!」
「そう言えば、さっき騎士団長は甘いものが嫌いと言っていたわよね。でも昨日、あなたの作ったカップケーキを食べていたわよ!」
「それ本当?」
「ええ…」
甘いものが嫌いなのに、私の為に食べて下さるなんて!なんてお優しいのかしら!増々好きになってしまったわ!とにかく、私もレイラに負けない様に頑張らないと!
翌日からは、簡単なサンドウィッチを作って持って行くも、やはり食べてくれない。もちろん、そんな事で諦める訳にはいかない。毎日毎日騎士団に通いつめ、トーマス様とお話をする。
最初はすぐに席を立ってしまっていたトーマス様だったが、最近ではほんの少しだけお話をしてくれる様になった。随分と進歩したわ!
そして気になるレイラの恋だが、うまく行っている様で結局1週間後には付き合い始めた2人。
「ルシータ、あなたのお陰で勇気が持てたわ。ありがとう!とりあえず、ピーター様としばらくお付き合いをしてから、婚約しようと思っているの!」
頬を赤らめ、嬉しそうにそう言ったレイラ。レイラの幸せそうな顔を見たら、なんだか私まで幸せになって来たわ。
よし!私もレイラに負けない様に、しっかりトーマス様にアプローチしないとね!
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