第7話 私が作ったお料理を食べて下さい!

翌日から、1日30分調理場で料理の勉強をする為、早速調理場へとやって来た。


「昨日は本当にごめんなさい!まさかあんな事になるなんて思わなかったの!それから、今日からよろしくお願いします」


料理人たちに頭を下げた。


「お嬢様、頭をお上げください。私達こそ、お嬢様を野放しにして申し訳ございませんでした。今日は初めての料理という事で、まずは簡単な物から作って参りましょう」


どうやら皆怒っていない様だ。良かった。今日は取りあえず、簡単なカップケーキを作る事になった。と言っても、まずは卵を割るところからスタートだ。卵なんて割った事が無い為、何度も何度も失敗する。


結局卵を割っただけで、30分すぎてしまった。シュンとする私に同情した料理長が、延長しても良いと言ってくれ、再び料理開始だ。小麦粉に砂糖や牛乳など材料を入れてかき混ぜる。


そしてカップに1つ1つ丁寧に生地を入れていく。ただ、あちこちに生地が飛び散っているが、まあ最初だから仕方がない。生地を入れ終わったら、料理人がオーブンで焼いてくれた。オーブンで焼いている間に、片づけをする。


お母様から“料理をするなら、きちんと片付けまでする事!”と、きつく言われているからだ。でも、この片付けが意外と大変。中々汚れが取れない!一生懸命洗って何とか汚れも取れ、お片付けも完了した。


「お嬢様、ちょうどカップケーキが焼きあがりましたよ!」


料理人が嬉しそうに焼きあがったカップケーキを見せてくれた。少し形はいびつだが、美味しそうだ!


「ありがとう、皆のお陰で何とかカップケーキが焼きあがったわ!」


嬉しくて料理人たちの手を取った。すると、なぜか真っ赤な顔をする料理人たち。どうしたのかしら?


「お嬢様!そろそろお出掛けにならないと、レイラ様とのお約束の時間に間に合いませんよ!」


私の専属メイドが呼びに来たのだ!


「まあ、それは大変だわ!急いで行かないと!」


料理人たちにお礼を言い、カップケーキをバスケットに詰め、急いで馬車に乗り込んだ!後ろで


「お嬢様、お待ちください!」


そう専属メイドが叫んでいたが、無視して出発する!実は今日も騎士団に行く事になっている。昨日ジョセフ様から、今日の分の入場許可証も書いてもらったのだ。早速受付を済ませ、レイラが待つ騎士団の練習場を目指す。


なぜか私を見て、何度も振り返る騎士団員たち。そう言えば、騎士団は令嬢が珍しいと言っていたものね。きっと私がここに居るのが珍しいのね!


急いで練習場に向かうと、既にレイラが座っていた。


「ごめんレイラ!遅くなっちゃった!」


急いでレイラの元へと向かう。ちょうど私が着いたタイミングで休憩時間に入った!早速このカップケーキを、トーマス様に食べてもらわないと!ルンルン気分でトーマス様の元に駆け寄る。


「ちょっとルシータ!あなた…」


後ろでレイラが叫んでいるが、今はトーマス様が先だ!


「トーマス様、おはようございます!今日はカップケーキを作って来ましたの!ぜひ食べて下さい!」


早速カップケーキを差し出す。大きく目を見開いているトーマス様。


「トーマス様!これは私が今朝手作りしたものですので、ぜひ食べて下さい!」


そう言ってトーマス様の手に、無理やりカップケーキを乗せた。


「ちょっとルシータ!」


後ろでレイラが叫んでいる。ちょっと、今トーマス様とお話しているのに、うるさいわね!とにかくトーマス様に食べて欲しくて、ジーっとトーマス様を見つめた。


「確かにこれはお前が作った物で間違いない様だな…それよりもその髪と顔、大変な事になっているぞ!」



え…?髪と顔?


私の元に急いでやって来たレイラが、手鏡を渡してくれた。早速鏡で自分の姿を見る!なんと髪や顔に小麦粉が付いて、真っ白になっていたのだ!ギャーーーー!なんて事なの!恥ずかしすぎる…



「ハハハハハハハ、でもそれだけ一生懸命ルシータ嬢が作ってくれたと言う証拠だろう。トーマス、せっかくルシータ嬢が作ったカップケーキなんだから、ちゃんと食べてやれよ!」


笑いながらトーマス様の肩を叩いてそう言ったのは、ジョセフ様だ。


「あの…よろしければ沢山作って参りましたので…ジョセフ様達も食べて下さい…」


「いいのか?ヤッター!ルシータ嬢が作ったカップケーキだ!」


「ずるいぞ、俺も食べたい!!」


一気にカップケーキに群がる騎士団員たち。騎士団員たちがカップケーキに群がっている間に、レイラが急いで私の髪と顔に付いていた小麦粉を払ってくれた。そう言えば、よく見たら洋服にも小麦粉や牛乳、生地などが付いていた。何て事なの!


令嬢として有るまじき失態を冒したルシータは、さすがに恥ずかしさからかその日はすぐに帰って行ったのであった。

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