第6話 トーマス様は料理が出来る女性が好きな様です

再び見学場所でトーマス様を見つめる。あぁ、やっぱりカッコいいわ…うっとり見つめている間に、休憩時間に入った。


「レイラ、ルシータ嬢、せっかくだから、一緒に昼食を食べよう。ここの食堂の料理、メチャクチャ美味いんだぞ!」


誘ってくれたのは、ジョセフ様だ。なぜか何人かの騎士団員もいる。食堂に行くと、既に沢山の騎士団員たちが!なぜか私たちが入って行くと、一斉にこちらを振り向く。一体どうしたのかしら?


「ただでさえ令嬢が騎士団内にいるのは珍しいのに、2大美女が揃っているんだから、振り向かない奴なんて居ないよ」


そう言って、一緒に来た騎士の1人がクスクス笑っていた。2大美女だなんて。確かにレイラは美しいけれど、私は大した事ないわ!


ふと食堂を見ると、お母様くらいの年齢の婦人たちが調理をしたり、お料理を運んだりしていた。その時、トーマス様を見つけた。婦人たちと楽しそうに話しをしているわ!


もしかして、トーマス様はお料理が出来る女性が好きなのかしら?それとも、お母様くらいの熟女がお好きなのかしら?


「ルシータ、また騎士団長を見ているの?とにかくご飯にするわよ。ほら、座って!」


呆れ顔のレイラに椅子に座らされた。どうやらお料理は全部で5種類あり、その中から選ぶ形式の様だ。せっかくなので、今日のお勧めの牛肉のシチューセットを頼んだ。


しばらくすると、先ほどトーマス様とお話をしていた婦人が持って来てくれた。あぁ、私もあの婦人の様に、トーマス様とお話がしたいわ…羨ましくて、つい婦人を見つめてしまった。


「ルシータ、今日のあなたは一体どうしたの?ほら、食べるわよ!」


レイラにつつかれ、慌てて食べ始める。これは、物凄く美味しいわ!なんて美味しいのかしら!美味しすぎて、一気に食べてしまった。


あまりの美味しさに、食堂から出る時、婦人に


「こんなにも美味しいお料理をありがとうございました!」


と言って、頭を下げたら物凄く驚かれた。さらに…


「お嬢様の様な方に気に入って頂けて、私たちも光栄です。こちらこそ、ありがとうございました!」


と、逆に頭を下げられた。なんて謙虚な方達なのかしら!婦人たちに感動しつつ、午後の稽古を見学する。そして休憩時間!もう一度、トーマス様に近付く。


「トーマス様!お疲れ様です!お隣よろしいですか?」


すかさずトーマス様の隣に座った。でも次の瞬間


「俺は女が苦手なんだ!頼むから近づかないでくれ!」


と再び、真っ赤な顔をして稽古場に戻ってしまった。チッ!逃げられたか!その日は、ジョセフ様とレイラにお礼を言い、屋敷に戻って来た。そしてやって来たのは厨房だ!今日1日トーマス様を見て気が付いたのだが、トーマス様は料理が出来る女性が好きなようだ。


現に食堂の婦人たちと楽しそうに話をしていた!とにかく、私も料理を覚えないと!


「あなた達、ちょっと厨房をお借りしても良いかしら?」


私の登場に、驚く料理人たち。


「はい、よろしいですよ!こちらにどうぞ!」


「ありがとう!」


早速スペースを作ってもらい、料理開始…と言いたいところだが、料理などやった事が無い。とにかく、料理人たちが作っているのをマネすればいいのよね!


包丁を取り出し、野菜を切ろうとしたのだが…


「ギャーーーお嬢様、お止めください!手を切ります!」


そう言って、すぐに包丁を取り上げられてしまった。それならお肉を焼いてみようと、フライパンを取り出し火を付けた。早速お肉をフライパンに入れる。でも…


「ギャーーーお嬢様!フライパンから炎が!誰か!今すぐ火を消せ!!」


なぜか厨房で大騒ぎしている料理人たち。


「一体何の騒ぎなのって…ちょっと、フライパンから炎が上がっているわ!すぐに火を消して!」


様子を見に来たお母様まで大騒ぎをしている。その後、お母様からこっぴどく叱られた。


「とにかく、金輪際厨房に近づく事を禁止します!いいですね!」


強い口調でそうったお母様。駄目よ!厨房が使えなかったら、私はお料理が出来ない女のまま。それだと、トーマス様に好きになってもらえないわ!


「お母様、ごめんなさい!これからは必ず料理人の言う通りにするわ!だからお願い、厨房を使わせて!私の恋がうまく行くかどうかがかかっているの!」


必死に頼み込んだ結果、1日30分、料理人が比較的手が空く時間のみ調理場を使ってもいいと言う許可が下りた。もちろん料理人監視の下、料理を教えてもらうと言う事で落ち着いた。


これでお料理をマスターできるわ!待っていてくださいね、トーマス様。美味しいお料理を作りますから!

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