第5話 トーマス様にプロポーズしました!

馬車に乗り込み、騎士団を目指す。


「それにしても、まさかルシータ嬢がトーマスを好きになるなんてな…あいつ、怒り狂わないといいけれど…」


なぜかブツブツ言っているジョセフ様。しばらく走ると、騎士団の建屋が見えて来た。物凄く広い敷地に、稽古場や宿舎、さらに試合などを行う大きな会場まで全てそろっている。受付を済ませ、早速騎士団の敷地内に入って行く。


「敷地内は物凄く広いんだ!迷子になると大変だから、俺に付いて来て」


ジョセフ様について敷地内の中を歩いて行く。すると、大きな建屋が見えて来た。


「あそこが俺やトーマスが稽古を行っている部隊の稽古場だ。トーマスもあそこにいると思うよ。ただし、稽古場は危険だから、決められた場所で大人しく見学をしているんだよ。分ったかい?」


「はい、わかりましたわ!あぁ、あそこにトーマス様がいらっしゃるのね。考えただけで鼻血が出そうですわ!!」


早くトーマス様に会いたい…


「とりあえず…中に行こうか…」


顔が引きつっているジョセフ様に連れられ、中に入る。すると既に沢山の騎士団員が稽古をしていた。そして中心にいる人物!間違いない!トーマス様だわ!!


「レイラ、あそこにトーマス様がいるわ!本物よ!あぁ、なんて勇ましいお姿なのかしら!」


うっとりとトーマス様を見つめる。


「レイラ、ルシータ嬢、ここが見学場だ!ここから動くなよ。それじゃあ、また後で」


そう言うと、皆の元に向かったジョセフ様。レイラと並んで座る。


「それにしても、むさ苦しい場所ね…」


物凄く嫌そうな顔をしながら辺りを見渡すレイラ。


「何を言っているの!レイラ!ここは殿方の宝庫よ!そもそも、お茶会や夜会に出るより、ずっと殿方が多いのですもの。せっかくだから、レイラもここで婚約者を見つけたらいいわ!騎士団員は貴族も多いし!ほらあそこにいる、もやしみたいなの!あれなんかどう?」


まさにお兄様みたいに、ひょろっとしている。


「ちょっとルシータ、もやしは失礼でしょう!確かに顔も悪くはないわね。あら、あの人も素敵!へぇ、騎士団内にも中々いい感じの殿方がいるじゃない!」


結構単純なレイラ。どうやら騎士団がお気に召した様だ。それにしても、やっぱりトーマス様は素敵だわ!しばらく見ていると、休憩に入った様だ。


急いでこちらにやって来るジョセフ様。ジョセフ様の後ろには、沢山の騎士団員たちもいる。


「待たせて悪かったね。騎士団の稽古はどうだい?」


「物凄く素敵ですわ!お兄様!」


なぜか私ではなく、レイラがジョセフ様に詰め寄っている。その時だった。


「副騎士団長!この人ってまさか、ルシータ・ジョーンズ嬢では!そしてその隣は、俺たちが何度頼み込んでも合わせてくれなかった、妹君のレイラ嬢ですよね!まさか社交界2大美女に会えるなんて!」


なぜか興奮気味の騎士団員たち。


ふと周りを見ると、向こうの方で1人で休憩しているトーマス様を見つけた。早速トーマス様の元へと向かった。


「あの、初めまして!ルシータ・ジョーンズと申します。昨日は革命軍から助けていただき、ありがとうございました!あなた様の勇ましい姿を一目見た瞬間から、私の結婚相手はあなたしかいないと確信いたしました!どうか私と結婚して下さい!」


生まれて初めて行う、渾身のプロポーズだ!なぜか私のプロポーズを聞いて、口を開けて固まっているトーマス様。


周りの騎士団員たちも、口をポカンと開けて固まっている。あら?私、何か変な事を言ったかしら?コテンと首を傾げた。


「お…お前は何を言っているんだ!俺をからかって楽しいのか!とにかく、俺は誰とも…け…結婚…する…つもりはない!他を当たれ!」


真っ赤な顔で私に怒鳴りつける様に叫んだトーマス様。フラフラと騎士団の稽古場へと戻って行った。あら?私、もしかして振られてしまったの…


気まずい空気が騎士団内を流れる。騎士団員たちも一斉に稽古場へと戻って行った。呆然と立ち尽くす私の肩を叩き


「だから言ってでしょう?あのゴリラ…じゃなくて騎士団長は女が嫌いだって!ルシータはモテるのだから、他の騎士団員にしなさい!こんなにも沢山殿方がいるのだから!」


そう言って慰めてくれるレイラ。


「何を言っているの!私にはトーマス様しかいないわ!一度や二度振られたくらいで諦められるほど、私の気持ちは軽いものではないの!こうなったら、何が何でもトーマス様を振り向かせて見せるわ!」


そうよ!やっと見つけた運命の殿方なの!絶対に諦めたりなんてしないんだから!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る