あとのまつり

 祭りのあとみたいな気分だ。賑やかで、あつくて、眩い、短い祭りだった。

 この間にできたことは限りなく少なくて、やりきれなかったことが僕をじっと見つめてくる。


 予感はあった。多分。素知らぬふりを貫こうとしていた。自分すらも騙そうとしていた。

 けど、現実は嫌でも僕を向き直らせる。それが今日だったという話。


 終わりを告げられて、悲しみが胸を刺した。もっと、怒りとか、後悔とか執着とか色んな気持ちがごった返すのかと思ってた。そんな考えとは裏腹に、出てきたのは悲しみだけだった。

 それよりも、どうやって返すのが正解なのかを考えることに必死になっていた。最後の最後まで僕は、相手がどうしたら喜ぶのかを考えてしまうようなやつだった。

 本当は、まだ終わって欲しくないって言いたい。当たり前だ。そうに決まってるだろ。だって僕は。

 ――だけど、それを言えるほどの勇気も自己中心的思考も持ち合わせていなかった。堂々巡りの中で、時間だけが無常に降りそそいだ。

「どうしよっか」

 ふと、喉を圧迫していたものが口をついてでた。

 まるで明日の晩ご飯をどうしようかとでも聞くような調子で。

 そんな口調でも、優柔不断な僕からやっと出た本音だった。

 彼女がふっと笑った。

 どんなテンションで言ってるの? って言われたから、わかんないってはにかんで答えた。

 だめだ、もうさっきみたいに喋れない。考えてることは同じなはずなのに、彼女の笑った顔を見ると無意識に口角が上がってしまう。

 やっぱりまだ僕は。

 続きの言葉は必要ない。そんなこと思ったって、どうせなんにもならないと分かってる。

 世界が透き通ってる。心が軽い。

 開けた視界で、答えはすぐに出た。

 正解じゃないかもしれないけど、僕らにとっては最適解なんだと思う。

「別れようか。」

 今まで何度も言ったバイバイのように。

「そうだね。」

 何度も聞いた返事のように。

「それじゃ、まあ、」

 いっせーので、なんて要らなかった。今までで一番晴れ晴れとした笑顔で僕らは言った。

「ありがとう」

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