「なんか忘れてる気がする」
「なんか忘れてる気がする」。そう思った時は大抵何かしらを忘れてる。
例えば、外出して少し歩いたぐらいの時の、「なんか忘れてる気がする」。そういう時はペンだとか、イヤホンだとか、必要な時にないと困る小物を忘れてる。
例えば、数学の問題を解き終わった時の、「なんか忘れてる気がする」。そういう時は負の符号だとか、二倍することだとか、そのせいでちょっと減点食らうものを忘れてる。結局二点くらい落とす。
例えば、イベントごとが開催される日の、「なんか忘れてる気がする」。そういう時は衣装だとか、チケットだとか、割と無いとやばいものを忘れてる。
例えば、高校を卒業して校門をくぐる時の、「なんか忘れてる気がする」。そういう時はロッカーの守護神だった副教科の教科書だとか、プールの底に溶け残った青春の一欠片だとか、頑張ったら掴めたはずだけどいつか見捨てたものを忘れてる。
例えば、『子供』を怒ることに抵抗が無くなってきた時の、「なんか忘れてる気がする」。そういう時はかつて滾っていた『大人』への反骨精神だとか、自分より遥かに大きな体躯の人に大声で怒鳴られることへの強い恐怖だとか、前は当たり前に持っていた共感を忘れてる。
「なんか忘れてる気がする」。そう思った時は大抵何かしらを忘れてる。そして忘れ物は八割くらい取り返しのつかない場所に置いてある。
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