聞こえない

 僕は人を騙す言葉が嫌いだ。傷つける言葉が嫌いだ。世界はそんな言葉で溢れてる。何かを成そうとすれば「無理だ」、やり遂げると「できると思ってた」「お前のせいで俺は不幸だ」。そんなの、僕からしてみればひどく無価値で、邪魔な言葉たちだ。だから僕は耳を塞いだ。

 僕の嫌いな言葉は全部シャットアウト、聞こえない。僕が好きな言葉で満ちた世界は気持ちいい。

 僕の目の前で誰かが怒ってる。そんな攻撃的な言葉、僕には届きっこないのにね。伝わるのはこの人が僕に酷いことを言っているということだけ。

 僕は君が好きだった。可愛くて、行動は思いやりに溢れていて、いつも僕が欲しい言葉をくれる人だった君が。でも最近は全く言葉を交わしてはいない。

 ああ、寂しいな。君の声が聞こえなくなったのは。まあでも、騙す言葉は嫌いだからね。

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