いざないの黎明
作:海中華山羊
「実はさ、別世界の扉、開けちゃったんだよね」
「はぁ?」
フードコートにて、冬佳はハンバーガー片手に親友である樹咲へ某都市伝説テラーのように語りだす。
「まーた、怪しいやつ調べてんの? やめた方が良いよそういうの」
樹咲はまたいつものかとばかりにあきれる。何を隠そう、冬佳はオカルトマニアなのだ。
「いやいや、今回は違うよ。実際この目で見たんだから!」
「今回“は”って……。まぁいいや、続けて」
「これはごく最近、早朝4時くらいにコンビニに行った時のことなんだけどね……」
日がまだ低いところにあるせいか、空は薄暗いというより青白い薄明の空だった。コンビニに向かう途中の信号機が点滅しており、車は数台しか行き来をしていない。その静かな情景はまるで夢の中のように幻想的だった。
冬佳には、まるで自分だけがこの世界に取り残されてしまったかのように見えたが、コンビニの光が薄暗い世界を照らしていた。
「夢なんじゃないの?」
ちょっと待てと樹咲は横槍を入れる。
「いやいや、黙って聞いてなさいって。」
コンビニの店内に入ると、他には誰も客はおらず、総菜の品出しをしている店員があいさつするだけだった。冬佳は、ターゲットである菓子パンへと足を進める。途中で、ふと目につくものがあった。それは、スイーツコーナーに並んでいた抹茶のスイーツたちであった。
冬佳はおかしいと思った。抹茶スイーツは、期間限定であり、だいぶ前にその季節が過ぎているはずであった。不思議に思い、消費期限を確認するが、日付は数日後であり、特におかしなところは無かった。
「それだけでなく、人気過ぎて初日午前中に完売したはずの大人気漫画㊙のグッズも売ってたんですねぇ。まさに、別世界だと思わない?」
「で、どこなの? そのコンビニは」
「あらあら、さっきまでは興味無さげだった樹咲ちゃんは、急にどうしたんですかぁ?」
冬佳はニヤつきながら、樹咲に詰め寄る。
「いや、そこまで言われたら、普通に気になるじゃん?」
「ははーん……。ガソリンスタンドの近くって言ったら分かる?」
「ま? めっちゃ近くじゃん。そこに早朝行けば言いわけ?」
「……。それがさぁ、時間帯関係ないみたいなんだよね」
「なんじゃそりゃ」
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