第7話
「ま、魔法使い…。さすがにあんまり酷い事は…」
まぁ俺と違って、このイケメンは痛みに対して一般ピーポーだからな。
あまり酷い事するとショック死しちゃうかもね。
単純に嫁(仮)は優しさから気遣いで言ってるだけだろうけど。
「えー、酷い事かなぁ? コイツ、わたしの事を洗脳して犯しまくったんだよぉ。初めてだったのにさぁ。それどころか、ずっと、ずーっと夢にまで見た伝説の勇者パーティーに入れたのに、それを全部ぜーんぶ台無しにもしてくれちゃったしぃ。ねぇねぇ剣聖、コイツの方がよっぽどわたしに酷い事してると思わない? だからコイツの足を潰すくらい別にいいじゃん♪ 怪我なら治せば元通りに出来るんだしぃ♪ わたしがコイツにされた事は、もう元通りに出来ないのにねー…♪」
…あのさぁ、魔法使い。
お前今、めっちゃ涙目じゃないすか…。
無理して明るく話そうとするの、見ててかなり痛々しいからやめてくんない…?
その姿はなんか、おじさんの心がキュッーってなるんですよ…。
「…ゴメン、ちゃんと魔法使いの気持ちも考えるべきだったよ。あたしも魔法使いと同じ立場だったらと思うと…。うん、魔法使いがそのくらいの事をしても当然だよね…」
「でしょ♪ それに魔王様ぁ…信じられないかもしれないけど、コイツに勇者がキモくてクズいゴミだって洗脳されるまではあなたの事、普通に一生懸命頑張るおじさん勇者だなぁって思ってたんだよぉ…? パーティーに入ってすぐの時は、わたしだってちゃんとしてた気がしない?」
「…まぁ、確かに最初の三日間くらいはまともな感じだった気がしないでもないかなぁ…」
…急に魔法使いの俺を見る目がゴミを見る様な目に変わり、戸惑ったような記憶があるような無いような…。
うーむ、そのタイミングで更に洗脳された感じか。
「ね♪ じゃ、さっさとコイツが何でそんな事をしたのか聞いちゃおっか…♪ 話に集中出来るように、足の痛みも麻痺させといてあげよう♪ 麻痺れ…はい麻痺った♪」
「…あ…痛く、ない…」
「はいおっけー♪ じゃあゴミ、さっさと話しちゃおうね♪ 嘘をつかずにちゃんと話す事が出来たら、あんたを殺さないで許すって事も…考えてあ・げ・る…♪」
「ほ、本当かっ!?」
「は? あんた、わたしが嘘ついてるとでも言いたいわけ?」
「そ、そんな事は、ないです…」
「チッ…」
そうそう、今魔法使いがイケメンに発動中なそのゴミを見る目で見られてたんすよ、俺。
そして絶対、考えてあげるのは考えてあげただけとか言って、ちゃんと話しても殺す気だと思います。
「ほら、早く話しなよ…。このままだと、あんたを殺すのが、我慢出来なくなっちゃうからさぁ…♪ はい、次の石板が落ちるまで、10、9、8…♪」
「ち、ちゃんと話すからもう止めてくれ!!
ま、魔法使いを洗脳したのは…ぼ、僕が、真の勇者だからなんだっ!!」
『…ハァ?』
何言ってんだコイツ?
お前一人で雑魚なスライムすら倒せなかったよね?
夜営中に悲鳴が聞こえて助けに行ったら、めっちゃ乳首とチンをねぶられてましたやん。
真じゃなくてチンの勇者なら納得できるんですけど。
つかコイツ、もし毒殺計画が上手くいってたら、本気で自分が真の勇者になれるつもりだったのか?
役不足にもほどがあんだろ。
「…ふぅん、あんたが真の勇者だからかぁ。洗脳中は本気でそうしてあげようと思ってたけど、今聞くと本当にバカらしい話だよねぇ…。とりま真の勇者とか意味わかんなくてムカつくから、もう一発追加ね♪」
「嫌だぁぁっ!!!」
そうだそうだー。
意味わかんないからイッちゃえイッちゃえー。
「…待って魔法使い。あんまりいじめすぎちゃうと、詳しい話を聞く前にコイツが壊れちゃうんじゃない? あたしは自分が真の勇者だなんてバカな事を思い込んでいる、頭がおかしいこのゴミの話をちゃんと聞きたいな」
おお、うちの優しい嫁(仮)が人を頭がおかしいゴミ呼ばわりするとは。
もしかして嫁(仮)も結構イラついてる?
「それもそっか♪ 壊すのはいつでもできるんだしねぇ♪ …おいゴミ、何でお前なんかが真の勇者なのか、その理由を話してみてよ♪」
「えっと、理由は、その、ぼ、僕は、絶対に、そうなるって、決まっていて…」
「大きな声でハッキリ話せよぉぉ!! さっきもそう言っただろうがぁ!! 潰されたいのかこのゴミィィ!!」
「ヒッ…!?」
「そうだよゴミ。誰を差し置いて自分が真の勇者なんて言っているのか、さっさと話してちょうだいよ。もし次もそんな話し方をするんなら、あたしにも考えがあるからね…」
「はいぃ!!!」
嫁(仮)、イラどころかもうおこじゃん。
めっちゃゴミを睨み付けてるんですが。
普段優しい人がいざ怒ると怖いって本当ね。
夫婦喧嘩はできるだけしないようにしとこ。
「…だ、だってさ!! この異世界の主人公は僕なんだぞっ!? だから僕が勇者じゃなきゃおかしいはず!! 女神様がこの異世界を救うには僕の力が必要だって言ってたんだっ!! なのに小汚なくてハゲなおっさんが急に…クソぉ!! なんでラノベみたく主人公に都合良くいかないんだよぉぉ!! 普通なら僕がハーレム達と一緒に魔王を倒すべきだろおぉぉ!!」
あっ、もしかしてこのゴミ…。
「…魔法使い、あたしも一発いい? 正気を失ってるこのゴミの目を覚ましてやりたい」
「どぞどぞ♪ あ、でも近寄っちゃだめだよぉ? 前と違って今の剣聖はエロくなりすぎだから、洗脳されてあのゴミのハーレムに入れられちゃうぞっ♪」
「…なら今のあたしの姿を見られないように、飛ぶ斬撃で目玉だけ斬ろうかな」
「わお♪ そんな器用な事できちゃうんだ♪」
「あたし、剣聖なんだけど? そのくらいできて当たり前っていうか…」
「キャハ♪ それもそっか♪ じゃあ目玉ついでに鼻も削いどいて♪」
「うん、わかった」
「やめてくれよぉぉぉぉ!!!」
女連中の頭がプンプンとしている。
俺は頭がピーンときているがね。
てかやめてもなにも、そんな説明の仕方しちゃったお前が悪いと思います。
俺には理解できたけどな。
そのせいで、凄くこのゴミとお話したい気分になっちゃいました。
だから女連中は止めておこ。
もし話せなくなったら困るし。
「剣聖、一旦ストップ」
「…どうして?」
「さっきゴミが言ってた事が凄く気になっちゃって。だから悪いけど二人とも、ちょっとだけ黙って俺とコイツの話を聞いていてくれないか?」
「…わかった」
「えー、わたしはやだぁ。もう我慢出来る気がしないもん。イイ殺し方も思い付いたし、もうブッ殺しちゃおうよ♪ どうせまともに話す気なんか無いだろうし、このゴミ」
まだ素直に言う事を聞けるおこ程度な状態の嫁(仮)と違って、魔法使いは完全にブチギレ状態だから仕方ないね。
今もせっせと石板に魔力を送って、表面に無数の細かいトゲを作成しております。
紅葉おろしでも作る気なのかな?
「…なぁ魔法使い。洗脳されていたとはいえ、俺って魔法使いには結構エグい目に会わされてきただろ? ちょっと黙って話を聞いててくれたらそれ全部許してやるからさ。嫌だろうけどなんとか頼むわ」
「…マジにぃ?」
「マジにぃ」
ま、洗脳が確定した時点でこんな頼みとか関係無しに許してやるつもりだったけどな。
「…キャハハハハハ♪ さっすが魔王様ぁ♪ そこに痺れる憧れるぅ♪ ぶっちゃけこのゴミの次はわたしが魔王様に拷問されるかもって、超ビビってたんだよぉ♪ イェーイ♪ わたぴハッピーうれぴー♪」
「うし、じゃあそんな感じでよろぴくね」
つーか前々から思ってたけど、この世界の人間って、ちょいちょい日本のネタを使うよね。
やっぱ少なからず、そういったネタを広めるヤツがいるんだろうなぁ…。
ゴリラみたいネタは、元の意味が不明で定着しないんだろうけど…。
「うんうんよろぴく♪ キャハハ♪ 魔王様ぁ♪ 今度はいーっぱい仲良くしようねぇ♪ ぶっちゃけ今の魔王様って超わたしのタイプだしぃ…♪ アレの続きとかぁ…わたしいつでもオッケーだからっ♪」
…アレの続きって、もしかしてチンビンタの事なのかい?
おじさん、アレの続きがどんな感じになっていくのかちょっと興味が…っといかんいかん。
まったく、嫁(仮)の前でなんて事を言い出すんだこの女は…。
「ハハハ…。さっきも説明したけど、俺の嫁は剣せ…」
「魔法使い、あたしが正妻だからね。そこさえわかっているなら、いくらでも魔王様と仲良くアレの続きでもなんでもしてもいいよ」
嫁(仮)ェ…!?
「わぁい♪ 正妻の許しを貰えちゃったよぉ♪ キャハ♪ どうせなら三人でシちゃう?」
「…あ、あたしは最初は二人きりがいいから…その後、なら…」
「だって魔王様♪ ねぇねぇ、わたしもワンチャン側室とかいけちゃったりするぅ?」
「…あ、いや、その…」
…異世界の常識、一夫多妻制ェ…!!
「うるせぇぇぇっ!!! イチャイチャイチャイチャしてんじゃねぇよぉぉっ!!」
あ、ついに主人公(笑)がキレた。
このままだとどのみち殺されるって気づいたのかな?
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