第6話

「魔法使い!! 目が覚めたんだねっ!!」


嫁(仮)が魔法使いに駆け寄る。

…プルンプルンと跳ねる、とても素晴らしい尻だ。

初夜が楽しみで仕方ないっすわ。

…だが嫁(仮)がそっちに行ったって事は、面倒なイカれ性女が解放されてるんじゃ…。


「………う…ひ…♪」


…嫁(仮)、性女を締め落としていた御様子。

ナイス判断、性女は幸せそうに失神してらぁ…。


「わ、たし、は……」


「…大丈夫? 色々と聞きたい事はあるけど…今は身体を休ませてね。話しはそれからでいいから…。魔法使いの幼馴染の荷物持ちも、まだ目が覚めてないし…」


…予想通り、うちの嫁(仮)はお優しい事で…。


「幼馴染…? わたし、に…?」


「まだ頭がハッキリしてないんだね…。ほら、そこで寝ているじゃないの。二人共、ちゃんと無事で良かったよね… 」


「…あ…あ、ああああああっ!!! 風よっ!! 切り裂けぇぇぇ!!!」


「っ!? 魔法使い何を!? やめてっ!!」


おっふ。

間一髪で嫁(仮)が魔法の邪魔に成功。

風の刃は幼馴染のイケメンをニアピンで通りすぎて行きましたとさ。

てか寝起きから殺意バリバリとか、どんな思考回路してんだコイツ。


「はぁなぁせぇぇぇ!!!」


よし嫁(仮)、そのまましっかり羽交い締めにしとけ。

俺は魔法使いが暴れているせいで見えちゃってるツルツルでピンク色な部分に、心の中で謝っとくから。

グロとか言ってごめんな。

魔族化する前は、言った通りグロだったのかもしれないけど。


「邪魔しないでよぉぉ!!! こんな男!!

幼馴染なんかじゃないんだからぁぁ!!」


「な、何を言ってるの!? 落ち着いて魔法使いっ!! 確かに肌の色は青くなってしまったけど、顔は変わらず幼馴染のままだよ!?」


「違うのぉぉ!! コイツがっ!! わたしをっ!! 洗脳しやがったんだぁ!!」


…ふぅん?

そいつぁ穏やかじゃないな。


「おいコラ魔法使い。そりゃどういう事だ?

助かりたいからって、寝起きから苦し紛れの嘘かましてる訳じゃねぇだろうな?」


「嘘じゃないぃぃ!!! ていうかあんた達誰よぉぉ!? コイツの仲間かぁぁ!? クソがぁぁ!! お前達全員殺してやるぅぅ!! うああぁっ!!」


錯乱してんなぁ…。

コイツに優しくすんのはなんか嫌だし、少しビビらせて正気に戻すとすっか。


「…剣聖、少し荒療治をするぞ」


「…わかった」


よし、嫁(仮)の了解も貰ったし、これで準備はバッチシだ。

いくぞ魔法使いっ!!

歯ぁ食いしばれっ!!


「そぉい!!」


「ふえっ!?」


うっし!!

上手くできるか不安だったけど、ちゃんとビンタ成功!!

この調子で正気に戻るまで、往復ビンタをかましてやんよ!!


「そぉい!! そぉい!! そぉい!!」


「えっ!? ちょ!? まっ!?」


フハハハハ!!

どうだ魔法使い!!

貴様がさんざ雑魚とバカにしていたモノでビンタされる気持ちは!?


「そぉい!! そぉぉい!!」


「…あっ…♪ あ、あんっ♪」


…おやおや?

心なしか、魔法使いの悲鳴が熱をおびてきましたよ…?

この展開はヤバいな。

このままだと、俺のモノの方も熱を…。


「…魔王様、その荒療治はもう充分じゃない…? 魔王様がふざけてみせて和やかな雰囲気にって考えなんだろうけど…その、なんだかエッチな雰囲気になってる気がするよ…?」


それな。

テンション上がりまくりで調子に乗りすぎた感がパない。

でもイケメンとの時はSっ気ムンムンだったくせに、チンビンタされてちょっと興奮している魔法使いが悪いと思います。

本性はMでしたか?


「もしかして…魔法使いもなの? べ、別にいいけど…その、一番はあたしに…」


やべ、嫁(仮)に勘違いさせてしまったぞ。

ここはこれ以上面倒な事にならないように、さっさと話を進めてしまおう。


「…これは只のおふざけだから深読みしないように!! ところでどうだ魔法使い!! このチン…ゴホッゴホッ…!!」


危ない危ない…思わず本音を言ってしまうところだった。

魔法使いの目の前に俺のモノがあるのが悪いね。

ついつい雑魚とバカにされたムスコの成長を、自慢したくなってしまうから…。


ま、まぁ荒療治という名の息子の挨拶も終わったし、ちゃんとしゃがんで魔法使いと目を合わせ、真面目に会話することにしよう。


「えー…これで正気に戻ったか!?」


「…う、うん♪ ソレのおかげで…♪ 戻ったよぉ…♪」


…蕩けた顔再び。

今度は性的な意味で…。


「…よし、ならお前が意識を失っていた時の話をしよう。洗脳とかいうワードは気になるけど、先に状況を理解しておかないとまたパニックになるかもだからな」


「…うん。何が起きてこんなわけわかんない状況になってるのか、ちゃんと教えてよ…」


そんじゃ少し長くなりそうだが、ちゃんと説明させてもらいましょうかね。





「…という訳なんだわ」


ふぅ…一仕事終えた感。

全裸の女二人を目の前にして、変な事を考えずにちゃんと説明ができた俺とムスコを褒めて欲しいね。

まぁムスコがちょっとだけ気持ちふっくらしてるのは、ご愛嬌って事にしてくれ。


「…状況は理解したよぉ。じゃあわたしの洗脳が解けたのは、一回身体がリセットされたからかなぁ…? ハッ、今更洗脳が解けたとこでって感じだけどねぇ…」


「魔法使い、その洗脳っていうのはどういう事? そこの荷物持ちって魔法使いがどうしても連れて行くってゴネにゴネた、大事な幼馴染じゃないの?」


それなー。

幼馴染コンビに滅茶苦茶しつこくゴネられたから、仕方なくイケメンをパーティーに入れてやったんだよねー。

荷物持ちという名の、コンパクトな空間収納バック持ち歩くだけのわけわかんない係で。


「…コイツの正体は、わたしが在籍していた魔法学校の落ちこぼれだよぉ。ハァ…今思うと、なんでこんな無能がモテモテだったのか合点がいくって感じ…。きっと他の女も洗脳してたんだろうなぁ…」


「洗脳洗脳言ってるけど、その落ちこぼれがお前相手に洗脳とかできたのかよ? 確かお前、魔法学校で一番有能だったんだろ? 落ちこぼれに洗脳魔法とかかけられたら、すぐに気がつきそうじゃねーか」


「…そりゃ魔法や薬だったらすぐ気がついたと思うよ…。だから、絶対それとは違う手段で洗脳されたんだと思う。洗脳された時の事なんだけど…勇者パーティーに選ばれたわたしに、学校が祝賀会を開いてくれたんだけどさぁ…。そこで出されたお酒を飲んだ後にコイツに好きになれって言われたら、何故か本当に好きなっちゃってお持ち帰りされたんだ…。そこから次は、コイツを大事な幼馴染だと思わされて…」


あらら、そいつは本当なら哀れだね。

つーか本当だとして、それ普通に酒に薬入れられてたんじゃね?

気づかなかっただけで。


「あたしはあまりそういったのは詳しくないからわからないけど…。魔法使いが気がつかなかっただけで、しっかりと飲んだお酒に薬を盛られてたんじゃない?」


そうそう。


「…確かに飲んだお酒はなんだかちょっとだけ変な味がしたような気もするけど…。わたし、いつも最高級の解毒アクセしてるんだよ? わたしが作った勇者コロリレベルの薬ならアクセが効かないのもわかんなくはないけどさぁ…。そんな劇物、さすがにわたしならすぐ気づくと思うしぃ…」


なるほど。

勇者ポロリレベルの劇物なら、俺でもすぐに気がつきそうだ。

一滴でも酒に混入した瞬間、ドクロマークのガスが噴き出しそうだもの。


「じゃあどんな方法で洗脳されたってんだよ?」


「…わかんない」


「えー…。一気に本当かどうか怪しくなってきたなぁ。洗脳されてたにしては、毒ったイケメンを容赦なく魔法で吹き飛ばしてたし」


まぁ怪しいとか言いつつ、もう9割くらいは信じる方に傾いてますがな。


「…いくら好きな相手だって、自分の命がかかってるんなら自分を選ぶじゃん。魔王様だって、剣聖より自分を選ぶって言ってたくせにぃ」


…確かに。

いやぁ魔法使い、気が合いますなぁ。


「あたしは自分より魔王様を選ぶけど…」


嫁(仮)がしょぼんしちゃった。

自分に嘘がつけないタイプでごめんな。


「ていうかさぁ…。もうコイツに直接聞けばよくない?」


「…だな、それが一番手っ取り早い。もう起きてるみたいだしよ」


コイツ、さっきから冷や汗ダラダラなんですわ。

絶対起きてるよね?


「…もし魔法使いが嘘をついているんなら、荷物持ちはすぐに寝たふりをやめて、今の話を否定すると思っていたんだけどなぁ…」


嫁(仮)もお気づきになられていましたか。


「ほら、聞いてるんでしょ? 爪剥がして、指切り落として、皮も剥いで、ケツに杭打ち込んで…わたしを洗脳した理由を吐くまで考えられる事は全部やるから…覚悟してねぇ♪」


「…チッ…!!」


あーあ、逃走なんかしたらもう完全に洗脳話が全部本当って事じゃん。

つーかコイツ、この面子から逃げられるとでも思ってんのか?


「縛れ」


「ギャッ!?」


ま、そうなるよね。

一瞬でイケメンの黒ガムテープ巻きが完成。


「さーて♪ じゃあさっき言った事を有言実行って事で♪ …あ、でも近づいてもしまた洗脳されちゃったら嫌だなぁ…。そうだぁ!! 良いこと思い付いたぞぉ♪ まずは動かない様にしっかり体を固定してぇ……からのぉ……潰せっ!!」


おー、結構な高さから三桁キロはありそうな石板が縦に落ちてきたぞー。

落下ポイントは当然…。


「ヒギィィィッ!!!」


おっふ…。

配管工な髭のM男を連想しちゃうね。

その石板に眉毛の濃い顔描いてみてもいい?


「話すまで足の先からしーっかり潰してくからね♪ ま、途中でもっとイイ事思いついたら、話は別だけどぉ♪」


「…わ、わかった。 全部はな…」


「潰せ♪」


「オギャアァァッ!!?」


「あ、ゴメーン♪ なんか言ったぁ? 聞こえなかったからもう一回おっきな声で話してねぇ♪ そんだけデカい悲鳴をあげられるんだから、そのくらいちゃんとできるでしょっ♪」


「はっ、はいぃぃ!!!」


あいやー…容赦ないねぇ。

魔法使いの性格が悪いのもあるが、洗脳された恨みも凄まじいんだろうなぁ…。

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