第12話 襲撃者との決着
「小賢しい真似をする。だが、そんな攻撃は効果がないぞ」
「知ってるさ。だけど、俺の攻撃が通用することが分かった!」
いけると思った瞬間、黒色の仮面の蹴りを腹部にまともに受けてしまった。
増長するなと言われたばかりであるのに、自身の攻撃が通用すると思ってしまったことで調子に乗った矢先である。
「すぐ調子に乗る……俺の悪い癖だな……」
痛む腹部を抑えながら反省をする。
ダメなところを意識して治そうと心の中で自身を殴っていると、黒い仮面は黒い炎を双剣に纏わせると一気に攻めてきた。
「お前の炎は弱い。黒炎に焼かれて朽ち果てろ!」
「黒い炎!? そんなの聞いたことがない!」
黒い炎とはどういった魔法なのか理解ができない。触れたらどうなるのか、どのような効果があるのかすらもだ。だが、怯えてなんていられない。これは命を懸けた戦いなのだから。
「怯えたら負ける……怯えたら負ける……怯えたら……死ぬんだ!」
怯えている心を奮い立たせて振るってくる攻撃を刀で受け流し続けていると、出雲から距離を取った黒い仮面が黒炎を龍の形に変え始めていた。
「黒炎が集まって龍の姿に!? どういうことだ!?」
「教えるわけないだろう。闇の炎で命を散らせ!」
黒い炎が巨大な龍となって迫って来る。その姿を遠くから見ていた守が驚いていたが、他の黒い仮面と戦っていてこちらに来れないようだ。
助力が得られない現状、一人で龍に立ち向かわなければならないが怖がってはいられない。なぜなら何かをしなければただ焼け死ぬだけであるからだ。
「あの龍を止めるにはどうしたらいいんだ。俺のできる技は限られているし、吹き飛ばせる何かをしないとダメか」
迫って来る龍を見ながらどうしたらいいのか悩んでいると、源十郎の言葉を思い出した。
「源十郎さんが言っていたな、相手は待ってはくれないって。その通りだ! やるしかない。やらないと殺される!」
刀身に燃え盛る炎を纏わせ、魔力を今の限界まで注ぎ込んだ。
すると、自身ん迄感じるほどに炎の勢いが増して、この場にいる誰もが感じるほどに神楽耶から発せられる炎が凄まじい証拠であった。
「出雲君は何をするつもりなんだ!? あの龍にどう対抗をするんだ!?」
黒い仮面の一人を斬り倒しながら出雲の方を向いていた守。
その視線に気が付いた京平も、何をするつもりなのか見守っていた。その二人の視線に気が付いていない出雲は迫る龍を見つめて、燃え盛る神楽耶を振り下ろして刀身から熱線を放ったのである。熱線は龍の頭部の部分に当たると、拮抗をしてその進行を止めることに成功をした。
「止めただと!? こんなガキが!?」
「止めるさ! 諦めない心が強くするんだ!」
叫びながら出雲は熱線に込める魔力をさらに上げる。
すると二倍以上の大きさに変化を下熱線は、龍を消し飛ばしながら拡散して消えた。
「はあ……はあ……どうだ! 打ち勝ったぞ!」
神楽耶を地面に刺して息を荒くしていると、黒い仮面はそのようだなと小さく言葉を発する。
「ただのガキじゃないようだ。こちらもそのつもりでやらせてもらう」
こちらは命懸けで戦っていたのだが、黒い仮面は違ったようだ。
出雲とは違い、遊びでやっていたようで双剣を構えを変えたようだ。見たことがない構えで、切先を両方出雲に向けている。
「首を掻っ切る!」
その言葉と同時に双剣を出雲の首目掛けて突きをしてくる。神楽耶を斜めにすることで突きを回避すると、出雲は右足に炎を纏って腹部に蹴りを入れた。
「どうだ! 初めて当てたぞ!」
炎の蹴りを受けて咳をした黒い仮面は、腹部を抑えて痛みに耐えているようである。その隙を見逃さずに天明流の連撃技を炎を纏わせて斬りかかることにした。
「この隙を見逃さない! 俺は勝つんだ!」
神楽耶を握る手に力を籠めて、天明流・炎刀連撃を放つ。それは自身で考えた技である五連撃の連続斬り攻撃だ。
「俺は正義のために戦うんだ!」
一撃、二撃と攻撃をするが防がれる。三撃目を放とうとした瞬間、黒い仮面が割れて左目が見えた。その顔を見ると同じ男性だと思っていたのだが、実際は女性であったようで目を見開いて驚いてしまう。
「お前……女だったのか!?」
「そうだ。それがどうかしたか? 女だから戦えないとでも言うのか?」
そんなことはないが、機械音声で性別が分からないままがよかったと思ってしまう。
「舐めるなよ! それに魔法騎士団に正義はない! 正義はこちら側にある!」
「襲撃をする人達に正義があるわけない! 平和を守る魔法騎士団にある!」
女性であることや、正義がないと魔法騎士団を否定されていると、目の前に双剣が迫ってきていた。
「さっきまでの威勢はどうした! 動きが鈍っているようだぞ!」
「そ、そんなこと!」
何度か防いでいると神楽耶を吹き飛ばされてしまい、宙を舞って地面に突き刺さった刀を見ていると体に双剣が迫ってくる。
「終わりだ少年。君は弱いままだったな」
体を斬られると目を瞑った瞬間、誰かが勢いよく双剣の前に入って来て攻撃を防いでくれた。攻撃を防がれた黒い仮面は後方に飛んで距離を取った。
「よく頑張った。上々だ」
防いでくれたのは守であった。
いつの間にか他の黒い仮面達を倒して支援に来てくれたようである。
「出雲君は下がっていてくれ。こいつの相手は俺がする。それに聞きたいこともあるからな」
出雲と戦っていた黒い仮面を睨んでいる守は、剣を構えて戦闘態勢をとった。
「まだやれます。俺も一緒に戦います!」
地面に刺さっている神楽耶を取って守の横に立つ。
すると、黒い仮面の女性が守に対して成長したなと言葉を発する。その言葉の意味が分からないという顔をしている守は、お前は誰なんだと叫ぶ。
「目だけでは分からないか。まあいい。次に会う時までに思い出すといい、守ちゃん」
守ちゃんという言葉を残して黒い仮面はその場から消えた。守が倒した黒い仮面達は体が霧散して消えており、人間ではなく魔法で作られた人形であったようだ。
出雲の戦っていた黒い仮面がこの場から消えると、生き残っていた他の黒い仮面達が地面に倒れて霧散して消えていたのを確認した。
「守さん?」
話しかけても言葉が返ってこない。目を見開いて驚いているようで、ありえないという言葉を連呼していた。
「ありえないありえないありえないありえない……俺にあんなことを言う人はあの人だけだけど、生きてるなんてありえない……」
両膝を地面について、ありえないとさらに連呼をし続けている。
「守さん! どうしたんですか! 守さん!」
何度話しかけても返事がなく、名前を呼び続けていると京平が何があったと叫びながら駆け寄って来た。
「急に守さんがありえないと言い始めてしまって!」
「どういうことだ!? 守さん! 大丈夫ですか!?」
京平が声をかけるも動転をしているようで動かない。
そのまま数十分が経過をした時、私に任せてくださいと一人の女性が言葉を発しながら近寄って来た。その女性は茶色の肩に届くまでのショートカットをしており、凛々しい顔をしている。守と同じくらいの年齢に見える女性は、私が来ましたと声を発した。
「ああ……お前か……任務は終わったのか?」
「はい。試験会場が緊急事態に陥っていると聞きまして、駆け付けました」
屈んだ女性は守の右肩を持って立ち上がらせた。
京平はその女性に対して、補佐官と声をかけているようだ。補佐官とはなんだろうか。守が副団長なので、その補佐をする補佐官なのだろうか。様々なことを考えていると、突然眩暈が襲ってきた。
「う……こんなところで……」
魔力を使いすぎたせいだ。緊張の糸が切れたせいで消費し過ぎた魔力の反動が襲ってきたのである。頭部を抑えて気持ち悪さを我慢していると、体から力が抜けるのを感じた。
「大丈夫か! しっかりしろ!」
京平が体を掴んで揺さぶってくる。
掴んでくれてありがたいのだが、揺さぶられると気持ち悪さが倍増をするのでやめてほしい。
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