第4-2話 謎になったクラスメート

 同じクラスの綿山車 粂戸わただし くめと。クラスZと呼ばれる悪人に利用され個人ナンバーを盗まれたが、和技の活躍により無事に取り戻す事ができたが、騒動の記憶を削除され、和技とは知人以上、クラスメートの仲に戻った。

 そのクラスメートが4日連続で後をつけてくる女子高生の隣にいるのだ。


「………」


 女子高生は4日連続でスマホをから殆ど目を離さず、歩き続けているのだが、その状態のまま、クラスメートの方は話し続けている。

 ここから会話の内容は聞こえないが、最後の方は聞こえた。


「…らな。おはよう、棚島」


 こっちに向かって走ってきたから。


「…はよぅ。って、あの人の知り合い?」


 和技は後方を振り返ったが、その時にはもう彼女の姿はなかった。


「あぁ、悪い、みぬ姉の事、気づいていた?」


 新たなるワードが出てきた。


「みぬ姉って…姉弟?」

「1つ年上で2番目の姉貴なんだけれども…重度の『特別狩り』なんだ」


 特別狩り

 『特別な人達』に敵意を持つ者たちを指す言葉で、チート的な能力や特権を嫌い、槍玉に挙げようと活動する。

 誰が『特別な人達』なのか分からないので、怪しい人を見かけたら撮ってSNSに投稿していた。


「え?俺、疑われている?」


 和技は体から血の気が引いていくのを感じながら、今までの行動を思い出す。


『どこでバレた?

いや、待て、修復士として動いている時、もし目撃される様な事があれば、本当の世界でナビゲーションしている帯論さんが気づくはず』


「お前ん家から野良猫が出てきたから、毎朝、早起きして張り込んでいるらしい。ほら、動物を手懐けられるのは『特別な人達』の能力の一つだって言われているだろ」


『あの野郎…』


 先輩に対する怒りが込み上がってきたが、今はそれどころではない。クラスメートの続ける話に集中する。


「野良猫が出てきただけで、疑うなんて、ありえない話だよ。

 そもそも何をどうしたら、こんな普通でしかない棚島が特別に見えるのか不思議でしかない」


 『特別な人達』として少し複雑になるが、どうやら怪しまれている程度のようだ。


「悪い、棚島。みぬ姉には言って聞かせるから」





粂戸おとうとの友達だと分かったからには、堂々と監視する事にした」


 放課後、校門を出た所で、4日間後をつけてきた女子高生がスマホを突き出して和技の前に現れた。


「……全然、言い聞いてないし…」


 残念ながら今回は付近にクラスメートの姿はなく、和技は自力で何とかしないとならないようだ。

 この場にいたままでは、下校する生徒たちの視線が集中するので、駅に向かって歩き出す。もちろんクラスメートの姉も後についてくる。


「いや、ただのクラスメートなだけで友達ではないし。そもそも野良猫が出てきただけで『特別な人達』になるんですか?」

「勘だ」

「勘?」

「私の『特別な人達』を見抜く勘は鋭い」

「見抜けたんですか? ネット上で『特別な人達』かもしれない動画は良く見かけますが、確証できたのは見たことないんですけど」

「特別な奴らは特別な権利を使って、削除するか、その投稿だけ見えないようにする。 だから『いいね』も、拡散もしてくれない。と言うやつだ」

『この世界の秘密を隠すために、バレバレなのは消しているだろうな…バラした方も謹慎処分くらうけれども』


 和技は声に出さず彼女の言葉にうなづいたが、真実を知らない彼女は特権でしか見えない。


「そう、奴らは特権を振り回す上級国民ども。同じ人間なのに、あってはならない。だからこそ、私は活動する」

「そう言われても、違うものは違うんですけど」

「違うか違わないかは私が判断する。

 弟の友達が『特別な人達』だと困る。『普通の人達』であってほしい。だから、徹底的に検証することにした。

 だが、何日も検証し続けると本気で粂戸おとうとに怒られるから、お前が『特別な人達』かどうかをこの一日にかける。


 このライブ配信でな」

「え?」


 振り返った先にスマホが向けられている。そこにある小さなレンズから撮られ、配信されていた。


「名付けて『弟の友達は

特別な人達なのか検証してみる』だ。

 それと、振り返ると顔が映るからやめといた方が良い。今は足元を写しているから、大丈夫だけども」

「………」


 和技は向きを戻す。

 もし『普通の人達』なら怒るべき事態なのかもしれない。

 『特別な人達』という後ろめたい立場のせいで、激怒しない自分に後悔したものの時は遅く、撮られるままにした。


『べつにバレなければ良い。このまま電車に乗って家に着けば…』

『なになに? 両サイドがくるりんとしたクセっ毛のある可愛い娘が後をつけているみたいだが…。和技ちゃん、もしかして告白され待ち?』


 甘くはなかったようだ。

 300年後の世界から周りに聞かれることのない通信が届いてしまった。


『ちげーよ。あんたが野良猫を遠隔操作してうちの家から出てきたせいで『特別狩り』から目をつけられたんだよ』

『そりゃあ、大変だな。それはそうと、修復タイムだ』

『聞こえなかったのかよ、ライブ配信されてて動けるわけないだろ』

『何を言う、一人前の修復士なら、そんな状況でも普通に進めるものだ。

 まあ、まだまだ経験の浅い和技ちゃんには無理かな』

『………』

『仕方がない、ここは帯論様に任せなさい』

「え…」


 予想つかない、嫌な予感しかしない言葉に和技は声を漏らした。






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