第3話 運命は既に決まっていました‥。

主役の運命は基本的には脇役にかかっている。


そう、俺の仕事は脇役として主人公を後押しすること。


俺のキャラが違うのは、これが原因である。


俺は俺の仕事が終わるともう、『僕』に戻る。


俺は自分の意志がない。


いや、正確には、持ってはいけない。


この世界には生まれた時から自分の役割が決まっている。



小さい頃、僕は本ばかり読んで他人とのコミュニケーションを取らないでいた。


ていうか、人と話すより、本の方が好きだった。


そしてある日、僕の両親はその様子を見て、僕の持っていた本を全て漫画にした。


いや、された。


確か、6歳の時。


その時は好きなものが無くなっているという絶望を小さいながら味わい、泣きじゃくって家出をした。


しかし、所詮、6歳の家出なんて、遠出できるはずもなくすぐ家に戻った。


そして、両親は泣きじゃくる僕に言った。


「知恵よりギャグを身につけなさい。」


小さい頃の俺はこの時言っている意味がわからず、ポカーンとしていた。


普通に考えると笑えるだろう?


これが真面目な顔で言われると一切笑えない。


僕は本が好きだったから、嫌だって言ったけど、好きな本はもうなくて手元にあるのは、露出度高い変な色のキャラの本しかない。


次第に理解していった。この世界は一定人数、脇役を演じる人が気密に存在している。


もちろん、全員が演じているわけじゃない。

両親曰く、ひとつの学校に2人いて多いぐらいだそうだ。


ってなわけで俺は現在、脇役を5個ほど掛け持ちしている。


日によっては、誰と誰が誰でって混乱していくような大変な仕事でもある。


そして、何より脇役を演じる上では主人公を超えてはいけない。


これは絶対遵守だ。


ちなみに、主人公というのは脇役のみに言い渡される。


そもそも、なんでこんな世界になったか?


こっちが知りたい。


これまた両親曰く、日本の自殺率上昇や優秀な人材が少ないことから政府が発動したものだ。


脇役といってもたくさんある。悪役として、アドバイザーとしてはたまた、ライバルとして、、。




僕はこれら全てに対応できるようにしなければならない。


そんなわけで僕は、中学生の時は脇役を育てる学校に通って(表向きは普通の学校)、基礎的な自分だけじゃ補えないものを学んだ。


まぁ、この学校は鬼畜の極みであった。


二度と通いたくない。


どんな状況でも、対応できるように、訳わからない訓練をたくさんした。


未だにトラウマなのは、激まず料理を1日食べ続ける時だ。


あれは、食べた瞬間吐き気して耐えるのは地獄だった。失神しているものも多くいた。


それを食べた日から全ての料理がうまく感じるという現象にまで陥った。


そして、脇役は自分で判断する時もあるけど、政府の指示に従うときもある。


指示がある時がほとんどなんだけど。


「で、どうする?蒼はやだよね。」


「ん?」


俺は自分の名前を呼ばれてるいることにふと気づいた。


「だぁーかぁーらぁー、先週転校した村中の代わりの委員会に入るの!」


俺は考え事をしていて何にも頭に入ってきてなかった。


「委員会か、、。何委員?」


「保健委員。話ぐらい聞いとけよ!」


その時、俺ははっとした。


保健委員‥。


この前、主人公対象になってた女の子が保健委員だった気がするな。


これを機に近づけたら、無理にその子に会う口実作らなくてもいけるな。


脇役をやる上で都合の良い状況になる。


「俺やる!」


そう言いながら手を挙げた。


友喜ともき達は驚いていた。


結局、やりたい奴もいなかったのでそのまま俺が保健委員になった。


「なんで、やる気になったの?」


友喜ともきは珍しく質問してきた。


「何でだと思う?」


理由を考えていないが、ふざけた顔で誤魔化した。


「あ、あれか、あおいのことだから、保健室の先生目当てとかだろ。」


友喜ともきは笑った。


俺はアニメのツンデレキャラのようにわかりやすく、


「べ、別に、そんなんじゃないんだから」風を装った。


俺は少し嬉しかった。


友喜ともき、勝手に解釈してくれてありがたい。


これは、俺のキャラがすでに、友喜ともきに浸透してしまっている証拠だ。


今までの俺よく頑張った!!



そういえば、転校した村中は俺と同じ脇役学校を卒業していた。


会話もほとんどしたことなかったが、急な転校は流石に少し寂しい気がする。


唯一の仲間だったのに!


本当のあいつは知らないがクラスでは、爽やかんな感じであった。


少し眩しすぎるぐらいだ。


まぁ、本当のあいつは知らない‥が。

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