第2話 食べ比べ
何でも買い揃えられる街に住んでいるのに、米や果物、スナック菓子などが季節ごとに送られてくる。まるで下宿生活を始めたばかりの大学生のような扱い。上手ではないにしても、一応自炊出来るんだけどなぁと思いながら、届いたレトルトカレーを棚に片付ける。添えられている一言便箋には「食べ比べてみてください」と書かれていた。何のことだろうと、箱の中を見れば、ふりかけやチョコレートと一緒にEエリアからやってきた緑の小だぬきが三つ入っている。
「ぬぉっ!?真面目に聞いてくれていたのか、母。」
ミニサイズなら小食な私でも食べ比べが出来るじゃないか。荷ほどきもそこそこにスーパーへ走り、西の小だぬきを買って来る。中年の女がインスタント麺だけを持ってレジに並ぶ。いつもは「料理しないのか?」と周囲に思われている気がして他の買い物のついでに買うようにしているが、今日は事情が違う。
使い込んだコーヒーケトルでお湯を沸かしている間に、改めて二つのパッケージを眺める。それは小学生の時同じクラスになった、そっくりで見分けのつかない双子姉妹を思い出させた。たった一つの違い、パッケージにプリントされたEとWの文字。そういえばあの双子はお姉ちゃんだけ目元にホクロがあった。そして顔はそっくりなのに性格が全く違う。二人とも愉快なクラスの人気者だった。
恐る恐る、出来あがった麺のフタを取る。香りが違う、色も違う。いよいよ実食。
「美味しい!」
間違いなく両方とも旨い。東は醤油、西はダシの美味しさで勝負しているといったところだろうか。食べ慣れている物なのに、どうして味の違いに気付かなかったのかと困惑した。そして食べ終えるとどちらが好みかという問題に直面する。
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