第3話 始まりは裏切りと共に

何を言っているのか分からなかった。私が笑っている?おかしな事を言われて憤慨しそうになるが、自分でも薄々分かっていた。私はとっくに心が狂っている事が。

沢山の鮮血が周りに漂っていた。虐めを受ける前ならば、この光景を見て吐いていただろう。今の私には何とも思わない、むしろ足りない様な気もする。 

「一番最初に目覚めた貴方にお願いがあるんですよ、六条さん。」

私の名前を呼ぶガスマスクの男。

「お願いって何?」

私は、少し反射的に答えた。

「貴方には、この方達を裏切って、潰し合い、発狂させて欲しいんですよ。」

「それが、ゲームマスターたる私からの特別ミッションです。」

こんな見ず知らずの他人に何の未練も無い、そう思い私は言った。

「分かりました、その依頼受けます。その代わり、、、」

「私の手で私を虐めたあいつらを、何回も殺せる様に、次にこのゲームが開かれるのなら、ゲームマスターと、参加者を私に選ばせて下さい。」

私は、それのみに執着していた、死ねないのであれば殺される事も無い。

思う存分、虐め返す事を決意してゲームに挑んだ。


―――数十分後―――

全員の体は、蜂の巣から元の姿になっていた。

「しっ、死んでも、痛み、を、かっ、感じなかった。」

相変わらずの狂った発想に私はもう慣れてしまった。正直今は不愉快に感じてしまう。

「本当に死なないみたいだな、、、 」

ホームレスは、自分の服まで再生している事におどろいた様子だった。

その他は、黙りをきめこんだが、正直それが当たり前の反応だと思っている。

普通、死ななくなったと思うと、ゾンビ等を思い浮かべるが、ちゃんと痛く、体の隅々まで、神経が通っていて、体を治癒する度に空気等と神経が触れて染みるのだ。

「それでは、皆さん治った事なので、説明を始めます。」

「こちらをご覧下さい。」

そうして彼の手に乗せられた物は、青白く発光する心臓であった。

「心臓?」

ほとんどの日とが、自分の心音を確かめた。

「あれ?心臓の鼓動は聞こえるが、何でそんなもの見せるんだ?」 

ホームレスは、不思議そうな顔をしながらモニターを覗く。

「無論、これは心臓ではありません。」

「魂の核です。」

そうやって、ガスマスクの男が指を鳴らすと、円卓の上に並べられていた。

「魂の核?」

全員が魂の核について知りたがっていた。

「それは、自分を表す物とでも思っておいてください。」

どういう事か理解出来ずにいた、何しろ抽象的過ぎるのだ表現が。

「そして貴方達6人は、選ばれたのです。」

「神に最も近く、人に最も遠い。――神人に。」

いきなり、神等の単語を並べられても、全員が理解出来ずに、たどたどしい空気感になっていた。

「これだけ言ったのに分からないようですね。」

「貴方達は、人の身で有りながら、神になれるかもしれない機会に恵まれたと言う事です。」

神になる、誰もが一度は考えてみた事があるはずだろう。そんな空想論をたった数十分足らずで、現実まで持って来た男が言うのだ。間違いは無いだろう。

「止めるのなら今しかありませんが、神になる機会を目の前にして逃げるような、大馬鹿は居ませんよね?」

誰一人手を挙げずに、欠ける事なくゲームが開始される事となった。

「それでは、神人ゲームスタートです。」


――こうして、命の価値を冒涜する狂気じみたゲームは開始された―――

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