第2話

「あなたは救国の聖女か?」


 目の前のイケメンが私の前に跪き、キラキラと輝く瞳を向けている。

 瞳の色はとてもきれいなエメラルドグリーンだ。こんな色、日本では見たことがない。というか、世界でも見たことないような……。

 髪の色は金色でこれもキラキラと輝いている。輝く男性。

 が、告げられた言葉の意味が分からない。

 きゅうこく……、救国? せいじょ……、聖女?


「えっと、救国とは、国を救う? であってますか?」

「ああ、そうだ」

「そして、聖女とは、聖なる女性? であってますか?」

「ああ、そうだ」


 そうか。


「人違いですね」


 私はただの会社員なので……。


「しかし、あなたの肩にいるのは……」

「肩」


 エメラルドグリーンの目に釣られて、自分の右肩を見る。

 そこには白銀の鱗に青色の目がきゅるんとかわいい、トカゲ……ではないらしい、なにか。

 さっきまで胸元にいたんだけど、私の肩へと移動したらしい。ちょうどトイプードルサイズですね。パタパタと羽を動かしている。


「レなんとかドラゴン……」

「レジェントドラゴンダ!」

「そうそれ」


 レジェンドドラゴンね。わかった。覚えた。


「……君、さっきまで大きくなかった?」


 仕事帰りにさ、突然、森に来てしまった。で、金属のぶつかる音がしてたから近づいてみたんだよね。

 そしたら、漫画とかゲームとかで出てきそうなドラゴンがいたから、思わず声が出てしまった。そして、不穏な感じがしたので、手を伸ばしたというか、こう「ちょっと待ってください!」みたいな感じで手をかざす? みたいになったら、ドラゴンが小さくなっちゃったんだよねぇ。


「オレハオオキカッタ!」

「だよね。どうして小さくなったの?」

「ワカラナイ!」

「そっか」


 じゃあしかたないか。


「俺の見たことをそのまま伝えさせてもらうが、あなたがドラゴンを小型化したのだと思う」

「わたしが どらごんを こがたか」


 ちょっと漢字変換が追い付かない。


「……あの、私、今、助けてくださいとお願いしたと思うんですが」

「ああ」

「申し訳ないんですが、自分の状況がよくわかってなくて。仕事帰りでこことは違う場所にいたんです。で、気づいたら森で……。なんか迷子かな? っていう感触なんですよね」


 事情的に。


「なので、ドラゴンを小型化するなんて無理ですし、私は今、どうしようって混乱してるところです」

「なるほど。気づいたらこの森にいた。どうしたらいいのか、と」

「はい。ですので、助けてほしくて、こうして声をかけました」


 すごく変なことが起きていることはわかるし、こうして説明されても、この金髪の男性も困るだろう。が、正直に伝えてしまう。

 私はもう疲れている。不機嫌な上司のねちねち攻撃により、もはや脳が停止している。


「……わかりました。どうやら疲れているようだ。俺も突然のことで驚いている。ただ、あなたが俺、そしてこの国を救ってくれたのはたしかだ」


 男性はそう言うと、スッと立ち上がり、私の手を自然にとった。


「俺の名前はザイラード。第七騎士団の団長をしている。あなたを賓客として騎士団へと案内する」

「ひんかく……きしだん……」


 だめだ。本当に全然漢字変換できない。


「オレモイク!」


 そして、右肩ではレなんとかドラゴンが元気に声を上げた。

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