【累計PV18000突破に感謝!】【現在一時休載中】異世界帰還者の事情 第一章 異世界帰還者が異世界へ行く前の事情【2025年1月を目標に再構成版を発表予定】
第17話 そして、天木華蓮になる その1
第17話 そして、天木華蓮になる その1
ところが、である。
さらに三ヶ月ほど経った、五月のある日。
「と、十八クン……」
「ン、どうしたの
「………アレが、来ないの」
「アレ?アレって?」
「アレよッ、アレッ!女の子がアレって言ったら分かるでしょッ」
「えっ……ああァッ!あ、アレかぁ~エーと、どうしよう?病院とかに行った方がいいのかな?」
「ううん、調べるだけなら、今は市販のがあるから、それで調べられる」
「そうなんだ。じゃあ、ちょっと買ってくるよ」
「ア…ううん、いいの。もう買ってあるから……」
「エ?もう買ってたの?それで?調べたの?」
「うん、調べた……」
「それで?どうだった?」
「………だった」
「エ?ゴメン、聞こえなかった」
「……せいだった」
「エ?聞こえないって。なんて?」
「陽性だったって言ったのッ」
「よ、陽性、ていうのは、つまり?」
「に、妊娠してたってこと…」
「ほ、ホントに?」
「ホントに」
「そっか~ホントかぁ」
そう言って、十八は笑った。うれしそうに。
それを見た華蓮は、カクンと両膝を折って床に座り込むと、突然両手で顔を覆って泣き出した。
十八は驚いて、華蓮の正面にしゃがみ込む。
「ど、どうしたの華蓮さん?どっか痛い?お腹とか?」
顔を伏せたまま泣き声を上げていた華蓮は、フルフルと頭を振ると、しゃくり上げながら話し出す。
「わ、私、妊娠したことを、十八クンに言った時、十八クンが、嫌そうな顔したり、お、堕ろせとか言われたら、どうしようって、思ってたの……でも、十八クン、笑ってくれたから、それ見たら、ホッとして、力が抜けて、うれしくて……」
それを聞いた十八は、少し驚いたあと、ゆっくりと笑った。
そして、まだ泣き続ける華蓮の両肩に両手を置くと、耳元に口を寄せる。
「結婚しようか?華蓮さん」
華蓮は、ハッ、と顔を上げると、まだ涙の溜まった目で、十八を見た。
「わ、私、料理とか、あんまり出来ないよ」
「知ってる」
「医者になるのも、あきらめないよ」
「知ってる」
「医者になったらなったで、十八クンに色々任せて、迷惑かけると思うよ」
「なんとなくわかる」
「そ、それに、そうなったら、十八クンが役者になるのが遅くなっちゃうよ」
それを聞いた時、十八は小さく苦笑する。
しかし、できるだけ優しい声になることに気をつけながら、笑って語った。
「役者を目指すのは、もう終わりにするよ。これからは華蓮さんと同じ舞台に立つことにした。だから、結婚しよう」
それを聞いた華蓮の目から、再び涙がボロボロとあふれ出した。
そして、涙で霞む視界の中、華蓮は十八の首っ玉目がけて、思いっきり抱きつく。
「うんっ!うんっうんっ!結婚しようッ!十八クンッ!」
そんな華蓮を、十八もそっと抱きしめた。
十八が二十四歳、華蓮が二十六歳のことだった。
そして、そのあとも大変だった。
まず、お互いの両親にあいさつと報告をしなければならない。
十八の両親、父の
そして、華蓮の両親、父の
こちらは、十八が大いに緊張し、華蓮も少なからず心配した。事前に話した時、彩女は受け入れてくれたが、五郎の方は、一度本人に会ってみないとわからない、と言われたからだ。
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