縁《つながり》


作・るふまる


】一部残酷描写と性的描写があります。


佐伯さえき 優斗ゆうと 18歳 好きな食べ物はカレー


佐伯さえき 雅人まさと 義理父 32歳 好きな食べ物はチキンライス


佐伯さえき 愛佳あいか 母 38歳


安藤あんどう 亜紀あき 新任の先生 雅人の不倫相手 22歳


吉田よしだ 吉男よしお 同級生 親友 17歳 男


安藤あんどう 杏虹あこ 同級生 友達 18歳 女 なぜか優斗の母、愛佳に声が似ている。

_______________


〜役表〜

優斗♂:

吉男♂:

雅人/警察官/バス/近藤♂:

愛佳/杏虹♀:

亜紀♀:


________________

シーン

【帰りのバス中、駄弁り】


SE.バスの音


吉男「優斗、次のスキー合宿どうする?いく?」


優斗「あー、まぁスキー好きだし行くかなぁ」


吉男「スキー好きって、くぷぷ」


優斗「いや別に意識して言ってねぇけど...」


吉男「わかってるって(くすくす)」



吉男「そういや、最近どう?」


優斗「んぁ?何が?」


吉男「お前のカーチャンだよ!」


優斗「あーね、まぁ前よりは落ち着いたかな」


吉男「いやー、お前よく耐えれるよなぁ...」


優斗「...」


吉男「小2のときに離婚してシングルマザーになり、小3の夏頃に新しい男と再婚、それからもその男と頻繁に言い合いの喧嘩って...__お前のカーチャン、大丈夫か?」


優斗「まぁ大丈夫っしょ、なんだかんだなんとかなってきたし」


吉男「それに比べてお前は偉いよなぁ〜!いつか母親が落ち着いたときに離婚した実の父親と仲直りさせて、3人で旅行、最後にみんな笑顔で記念写真撮りたいなんて、泣かせてくれるじゃねぇかよぉ〜!!!うっう...」


優斗「まぁ、切っても切れないつながりだしな」


吉男「うおおおん、俺はお前のダチ、いんや親友!心の友として!全力で応援すぜ!!」


優斗「ありがとな吉男」


吉男「まぁとりあえずは来週のスキー合宿だ!気合い入れていこうぜ!」


優斗「そうだな!」


吉男「にしても、後2ヶ月後には卒業か」


優斗「お、おう...、急にどうした?」


吉男「いや〜いろんなことがあったなぁと思ってよ!」


優斗「そうだなぁ」


吉男「俺、新生活大丈夫かなぁ...大学、友達できるかなぁ...」


優斗「大丈夫だろ、吉男ならなんとかなるって!」


吉男「何だよその根拠のない自信は!」


優斗「根拠はないけどそう思うんだよ!」


吉男「そうかそうか!優斗がそう言うと本当にそう思えるな!」


優斗「ゆうとがゆうと...ぷくく」


吉男「いや、意識してないのだが...」


優斗「ぷははっ!いや、わかってるって!あっはっは」


吉男「いや笑いすぎだろ!」


優斗「ふう、久々に腹抱えて笑ったわ」


吉男「そんなに面白かったか?」


優斗「いんや?さっきの仕返し」


吉男「(困惑)は、はぁ?なるほど?」


優斗「って言うか、時間過ぎるのってあっという間だよな、(ため息)新生活か...」


吉男「優斗は卒業したら一人暮らしだもんな!」


優斗「そうなんだよ...」


吉男「俺の家の近くだったし、たまに遊びに行ってやるよ!」


優斗「吉男ならいつでも歓迎するよ」


吉男「お、嬉しいこと言ってくれるね!俺でよければ、引っ越し作業手伝うぜ!!!」


優斗「お、それめっちゃ助かる〜」


吉男「ドーンと任せんしゃい!」


優斗「やっぱ持つべきものは親友だな!」


吉男「おうよ!」



吉男「おっと、もう21時か」


優斗「もうそんな時間かぁ、母ちゃん大丈夫かな?」


吉男「大丈夫だろ!あんま考えすぎるな」


優斗「それもそうだな...」


バス「まもなく、バス停です。お降りの方は停車ボタンを押してください。」


優斗「あ、俺が降りるのここだわ、(間)おつかれ」


吉男「あぁ、お疲れさん〜!気をつけて帰れよ!」


優斗「お前もな!」


間【一方その頃】


愛佳「雅人、また帰り遅い... 今日は優斗より先に帰ってくるって言ってたのに...」


間(愛佳、雅人に電話をかける)


愛佳「雅人!?何してるの?今どこ?迎えに行くから教えて!」


雅人「っち、うるせぇよ全く...」


愛佳「あ、ごめん...」


雅人「今帰ってる途中だからもう少し待ってろ」


愛佳「う、うん... なるべく早く帰ってきてね」


雅人「おう、急ぐよ」


愛佳「うん、絶対だよ?一分一秒でも早く帰ってきて!」


雅人「わかったから...、運転中に電話してると危ないから切るぞ」


愛佳「...待って」


雅人「なんだよ、まだ何かあるのか?」


愛佳「今日はまだ聞いてない...」


雅人「何を」


愛佳「いつもの」


雅人「いつものってなん...あ、あぁ...」


愛佳「まだ?」


雅人「愛してるよ愛佳」


愛佳「うん、私も愛してる。大好きだよ。」


雅人「...じゃあ切るぞ」


愛佳「待って」


雅人「なんだよまだ何かあんのか?」


愛佳「寂しいから繋いでて」


雅人「...」


愛佳「ダメ?」


雅人「ダメじゃねぇよ、ダメじゃねぇけどさ...」


愛佳「うん?」


雅人「あー、充電切れそうなんだわ、すまんな」


愛佳「そっか、わかった...」


間(通話終わり)


愛佳「雅人の嘘つき...」


間(雅人視点)


雅人「あーあ、めんどくせぇ...」


亜紀「じゃあ早く別れちゃえばいいじゃ〜ん」


雅人「俺だってできることならそうしてぇよ、でもこういうのは慎重にやらねぇと」


亜紀「はいはい、めんどくさいね〜」


雅人「お前は呑気でいいよな」


亜紀「だって私には関係ないじゃん〜」


雅人「バレたらお前もタダじゃ済まないぞ?」


亜紀「まぁそうだけど、どうせバレないでしょ!あの女鈍感だし〜」


雅人「ふふ、それもそうか」


亜紀「それに私はぁ、あんな言わされた『愛してる』じゃなくて、ちゃんと心から『愛してる』って言ってもらえるし♡」


雅人「っふ...」


亜紀「え、なに?違うの?」


雅人「いや、そうだな」


亜紀「だよね〜、他人に向いてた好意を全部自分のものにする。あー快感だわ、すっごくキモチイイ」


雅人「...」


亜紀「ねぇ、続き...しよ?」


雅人「あぁ、いいとこで中断したから俺もう」


亜紀「あん、急にダメ!もっと優しくして?」


雅人「...すまん」


亜紀「分かればいいの、きて」


雅人「あぁ、愛してるよ亜紀」


亜紀「私も、愛してる」


間(場面転換)


優斗「母ちゃん大丈夫かな...」



優斗「あれ、鍵がかかってない...」


間(玄関の開く音を聞いて愛佳が走ってくる)


愛佳「雅人!?」


優斗「ただいま〜」


愛佳「あぁ、優斗... おかえり」


優斗「あ、あぁ...」


愛佳「ご飯できてるから、食べましょ」


優斗「うん...お義父さん、まだ帰ってないの?」


愛佳「そうよ、きっとお仕事が忙しいのよ」


優斗「そっか...」


愛佳「たくさん稼いでもらわないと、優斗の学費も払わないといけないしね」


優斗「俺の学費なら、自分で何とかするよ」


愛佳「そう?お金稼ぐの、簡単じゃないわよ?」


優斗「俺も自立そろそろしないとだし」


愛佳「自立もいいけど、甘えられるときに甘えておいた方がいいわよ」


優斗「そう、かな?」


愛佳「...ほら、ご飯冷めちゃうから食べましょ」


優斗「あ、うん。いただきます」


愛佳「いただきます」



優斗「そういえば、今日カレーって言ってたけど」


愛佳「あぁ、材料なかったから...」


優斗「え...?あ、えっと、そうなんだ...まぁ母ちゃんの肉じゃが好きだしいいけど...」


愛佳「ごめんね優斗、カレー楽しみにしてたよね」


優斗「う、うん...(たまねぎ、人参、ジャガイモ、豚肉、ルー入れればカレーになりそうだけどな...)」


愛佳「...(昼間に突然今日は早く帰れるって連絡あったから急遽雅人の好きな肉じゃがにしたのに...)」


優斗「・・・」


愛佳「今日のは上手くできたのよ?ジャガイモが煮崩れしてないの」


優斗「ん、ほんとだ、ちゃんと味も染みてるし美味しい」


愛佳「そう、よかった。」



優斗「母ちゃん、最近暗いけど何かあった?」


愛佳「え?...ふふ、大丈夫よ」


優斗「そうか...」


愛佳「人の心配より、自分の心配しなさい?スキー合宿の準備は出来てるの?」


優斗「ヤッベ、忘れてた!」


愛佳「足りないものあったらお母さん買ってくるからちゃんと言いなさいよ」


優斗「あぁ、ありがとう」



優斗「ご馳走様でした!___ふぅ、美味しかった〜!」


愛佳「優斗〜洗っちゃうから食べ終わったお皿持ってきてくれる?」


優斗「はーい」


愛佳「いつもお手伝いしてくれてありがとね優斗」


優斗「え、急にどうしたの母ちゃん」


愛佳「...ちゃんと、言葉にして伝えておこうと思って」


優斗「そっか、まぁ母ちゃんも色々あって大変だろうしこれくらい...」


愛佳「優斗は優しいね、本当にいつもありがとうね」


優斗「母ちゃん...」


愛佳「優斗、先お風呂入ってきな」


優斗「あ、うん、行ってくる」


間(優斗、湯船)


優斗「あぁ〜湯船サイコー... てかもうすぐ卒業なのか...」


優斗「卒業、一人暮らし...」


優斗「そういえば母ちゃん、今日も寂しそうだったな...」


愛佳「優斗〜、タオルいつものとこ置いとくからね〜」


優斗「うん、ありがと母ちゃん」


間(場面転換)


優斗「ふぅ、スッキリしたぁ___母ちゃん、お風呂あがったよ」


愛佳「はーい、いつもの冷蔵庫入れてあるからね〜」


優斗「ありがと」



優斗「っくぅ〜!やっぱ風呂上がりにはこれだな!」


雅人「ただいま〜」


優斗「あ、お義父さん、おかえりなさい」


雅人「おぉ、愛佳は?」


優斗「母ちゃんは今風呂です。」


雅人「そうか、じゃあ明日早いから先寝てるって言っといて」


優斗「あ、はい」


雅人「んじゃそういう事で、おやすみ」


優斗「おやすみなさい」


愛佳「今帰ってきたの?」


雅人「ん?あぁ、悪いけど明日早いから__」


愛佳「こんな時間まで何してたの?」


雅人「はぁ、だから明日早いから___」


愛佳「答えられないの?」


雅人「...仕事だよ仕事!」


愛佳「本当に?」


雅人「本当だよ」


愛佳「そう、じゃあ会社に電話して聞くけど?」


雅人「っち、んどくせぇな...」


愛佳「何よその態度、こっちは帰り遅いから心配してたっていうのに!」


雅人「...友達と飲んでたんだよ」


愛佳「何それ、じゃあ残業は全部嘘だったって事?」


雅人「全部じゃねえよ...」


愛佳「友達って誰?」


雅人「あぁ?男の飲み友達だよ」


愛佳「確認するから連絡先教えて」


雅人「何なんだよさっきから!俺は疲れてんだから今日はもう休ませろよ!!!」


愛佳「何それ、毎回毎回そうやって疲れてるって逃げて結局何も教えてくれないじゃない!」


雅人「本当に疲れてるんだからしょうがねぇだろ!」


愛佳「ほんと信じらんない!こっちは貴方が早く帰ってくるって言うからご飯作って待ってたっていうのに!」


雅人「急用だったんだよ、しょうがねぇだろ!」


愛佳「急用急用ってそればっかりじゃん!」


優斗「(どうしよう...)」


愛佳「好きだから面倒な事は言わないように我慢してた!たまに嫌味とか出ちゃう時もあったけど本当に一緒にいたかったから私なりに頑張ってた!喧嘩になりそうなら全部折れた、言うこと聞いた!どれだけ私が嫌だって訴えたことだって『俺の苦しみ程じゃないくせに』って判断されて蔑ろにされて、どうすればいいのよ!」


雅人「...」


愛佳「『我儘を押し付けて私がいなくなってもいの?』って聞いた時『しょうがない』って返ってきて、『もう私はどうでもいい存在なんだな』って思ってしまったこと。『どんな結論でも受け入れる』なんて、どうなってもいいやって感情を隠そうともしない他人任せの結論、ほんと全部つらかった。私がどんな気持ちで一回一回『一緒にいれない』って言うのかもきっと分からないでしょ!?」


雅人「んだよ...」


愛佳「(泣く)」


優斗「母ちゃん...」


愛佳「うるさくしてごめんね優斗」


優斗「大丈夫だよ母ちゃん」


愛佳「どこ行くの」


雅人「今日は車で寝る」


愛佳「そう」


雅人「...」


愛佳「コロシテヤル...」


優斗「え、母ちゃん...?」


愛佳「優斗ごめんね、お母さん寝るね」


優斗「う、うん... おやすみ」



優斗「母ちゃん、大丈夫かな...」


間(場面転換)【夢:回想】


吉男「おはよう優斗!」


優斗「おう吉男、おはよ〜」


吉男「何だよ〜朝からしけた顔してぇ」


優斗「あぁ、悪い」


吉男「何かあったか?話聞くぞ?」


優斗「いや何でもない」


吉男「そうか?あんま無理すんなよ〜」


優斗「あぁ、ありがとう」


吉男「今日は金曜日、明日は休みだ!な?元気出せよ!」


優斗「そうだな」


杏虹「あ!優斗くんおはよ!」


優斗「おはよ〜」


吉男「オォ!クラスのマドンナ、杏虹ちゃんじゃないか!おはよう」


杏虹「吉男くんその呼び方やめてって言ったよね?」


吉男「あぁ...そういえばそんなような事言ってたっけ?」


杏虹「次は返事しないからね?」


優斗「まぁまぁ、そんな怒るなって」


杏虹「優斗くんは甘いんだよ!こういうのはガツンと言ってやらないと!」


優斗「そ、そうなのか?」


杏虹「そうなの!」


先生「お前ら席につけ〜、始めるぞ〜」


優斗「先生来たぞ、席もどれよ」


吉男「おう!」


先生「よし、全員席についたな。じゃあ出席とるぞ〜安藤」


杏虹「はーい」


先生「佐伯」


優斗「はい」


先生「西内」



先生「西内〜?」


杏虹「先生〜、西内くんいません」


先生「いない?全くしょうがねぇな...吉田」


吉男「はい!」


先生「よし、西内以外は全員いるな。じゃあ授業始めるぞ、今日は教科書23ページからだ!吉田、音読してくれ」


吉男「えー、俺かよ」


先生「文句言わないでさっさと読め〜」


吉男「うぁーい、80gの小皿に塩を乗せて測ると150gより重かった。塩の重さをxgとすると、塩と小皿の重さは(x+80)gとなり、これが150gより大きいのでx+80>150が成り立つ。このように、数や式の大小の関係を不等号を用いて表した式を不等式と言う。」


先生「吉田ありがとな、不等式だぞ〜覚えたか〜?...あぁ吉田、もう座っていいぞ」


吉田「うい」


先生「その下の表を見ればわかると思うが不等号には4種類ある、元より大きい時はこれで小さい時はこれだ!以上、以下と記されている場合は下にイコールがつくこれだ!ちゃんと覚えておけよ〜テストに出るぞ〜!」


杏虹「この記号は何て読みですか?」


先生「お、安藤!いい質問だな〜、この『く』みたいな形をしてるのが小なり、反対が大なり、下にイコールがついているのはそのままイコールをつけて大なりイコール、小なりイコールだ!」


杏虹「なるほど...」


先生「じゃあ15分までその下の問題を各自解いてみろ、わからない人は先生に言えよ〜」


吉男「先生ーわかりません」


先生「あぁ?早いな、少しは自分で解こうとしてみろ」


吉男「わからないものはわからないです」


杏虹「先生、質問があります」


先生「おぉ安藤、今行くからな」


吉男「何この対応の差は」


優斗「この対応の差も不等式にできそうだな」


吉男「俺<安藤、って事か?」


優斗「そうそう」


吉男「不当な扱いだな」


優斗「不等式だけに?」


先生「おいそこ!無駄話してるって事はもうできてるんだよな?」


吉男「わからないってさっき言いました」


先生「ちょっとは頑張ったのか?」


吉男「頑張りました〜(無駄話を)」


先生「全く、今行くから待ってろ」


優斗「ええっとなになに、ある数を5倍して6足した数は、元の数の7倍未満である。この関係を不等式で表しなさい。...なるほど」


杏虹「元の数をxと仮定した場合、5倍して6足してるから、5x +6で」


優斗「元の数の7倍だから、7x」


杏虹「で、未満であるって書いてあるから答えは5x +6<7x!」


先生「よーし、15分になったな。じゃあ答え合わせするぞ〜、一番の問題出来た人手上げろ〜」


杏虹「はーい」


優斗「はい」


先生「よし、安藤」


杏虹「はーい、ええっと、答えは5x +6<7xです」


先生「正解だ」


杏虹「やった!」


先生「じゃあ二番の問題を...」


間 SEチャイム


吉男「よっしゃ〜チャイムなったぜ!飯だ飯〜!」


優斗「落ち着け吉男、まだ一限だ」


吉男「何だよ...」


先生「続きはまた次の時間にやるからな〜、まだ出来てない人は次の時間までにやってくる事、いいな?宿題だ!」


吉男「えーーーーーーーーーー」


先生「吉田、何か文句があるのか?」


吉男「ってみんなが心の中で叫んでました」


先生「はいはい、ちゃんとやってくるんだぞ〜。安藤、号令頼む」


杏虹「はーい、起立、礼、着席」


吉男「優斗、次の授業で何かわかる?」


優斗「次は...英語だな」


吉男「英語かよ〜、英語の先生苦手なんだよなぁ...」


亜紀「はーい、みんな席について〜」


吉男「オッホ、あのバインバインの先生は何でござるか?」


優斗「お前そんなキャラだったっけ?」


吉男「いやー絶景絶景」


亜紀「じゃあ授業始めるわよ〜」


吉男「ちょっと待った!!!」


亜紀「ん?どうしたのかな?」


吉男「バインバインの...じゃなくて、ふぬぬ...とりあえず何で安藤先生が?」


亜紀「あぁ、私は斎藤先生が病欠のため代理、よろしくね」


吉男「オォ代理!いい響きだ」


優斗「どこがだよ」


亜紀「じゃあ授業始めるわよ、教科書12ページ開いてー」


吉男「という訳で、オイラたちはバインバイン...おっと失礼、安藤先生の授業を受けたのである。それはそれはもうはち切れんばかりの『それ』に釘付けになり授業の内容など頭に一切入ってこない、これは哀しき男の性なのである…ふぅ」


優斗「やれやれ」


吉男「そして、授業が終わる頃には...」


優斗「彼の目は乾燥していた」


吉男「目が!目ガアアアアアア!!!」


優斗「そして、授業は終わり昼休み」



亜紀「君が優斗くんね〜」


優斗「はい、そうですけど...」


吉男「安藤先生!」


亜紀「どうしたのかな?」


吉男「自分、もう限界です!保健室に」


亜紀「だーめ、もう少し頑張れるよね?吉男くん」


吉男「なんかやる気が出てきたぞ、なぁ近藤!」


近藤「あぁ、むくむくとな!」


吉男「ふふ、流石同志!」


優斗「やれやれ...」


亜紀「優斗くん、話があるから放課後に職員室来てもらえる?」


優斗「はい、わかりました」


吉男「優斗呼び出されてやんの〜」


優斗「何もしてないけどな...」


吉男「いや待てよ、あの先生から呼び出し...?っは、まさかな」


間(場面転換)


吉男「授業終わった〜!飯だあああああ!!」


優斗「やっぱ昼直前の体育はきついなぁ」


吉男「体動かして汗かいて、その分飯が美味しく食べれるだろ?むしろ毎日体育でいいくらいだぜ!」


優斗「あ、そういえば昼休み職員室来いって言われてたっけ」


吉男「優斗、職員室行くの?」


優斗「あぁそのつもりだけど」


吉男「ふふ、そうかそうか!一人じゃ心細いか!それならば仕方がない、この俺が同行しようではないか!」


優斗「いや一人でいいよ」


吉男「そんなこと言うなよ、俺たち友達だろ?」


優斗「いや関係ないだろ」


吉男「ふむ、友よそんな遠慮しなくてもいいんだぞ」


優斗「えーと、一応聞くけど、何でそんなについてきたがる」


吉男「バインバイン」


優斗「なるほどな...」


吉男「では、行くとしようか」


優斗「あ、あぁ...」



優斗「失礼します、秋月先生いますか?」


亜紀「あ、優斗くん来たわね、生徒指導室借りてるから行きましょ」


吉男「生徒指導室って何したんだお前...」


優斗「心当たりはない...」


亜紀「何コソコソしてるの〜?早く行くよ」


優斗「は、はい...」


吉男「この戦いが終わったら、一緒に牛丼食いに行こう...奢るぞ」


優斗「フラグを立てるな!」


亜紀「吉田くん、貴方もくる?」


吉男「ひぇ、大丈夫です!」


亜紀「そう、残念...」


優斗「行ってくる」


吉男「生きて帰ってこい、必ずな!」


優斗「あぁ」



亜紀「よいしょっと、優斗くんも掛けて」


優斗「はい」


亜紀「ごめんね〜、急に呼び出しちゃったりして」


優斗「いえ、んで用件は?」


亜紀「あのね、これからいう事はみんなに内緒にして欲しいんだけど...」


優斗「はい」


亜紀「一年A組の担任の齋藤先生が事故で怪我して入院しちゃって、代理で私が入ることになったんだけどね」


優斗「ええ!?齋藤先生大丈夫なんですか!?」


亜紀「しー!声が大きいよ」


優斗「あ、すみません...」


亜紀「それで、一年A組ってどんなクラスなのかなぁって聞いておこうと思って」


優斗「なるほど...」


亜紀「それで、どんな雰囲気?」


優斗「その前にいいですか?」


亜紀「うん、いいよ」


優斗「何で僕なんですか?」


亜紀「え?んー、何となく...かな?」


優斗「何となくって...」


亜紀「まぁいいじゃん?細かい事は!」


優斗「んー、どんなクラスと言われても...」


亜紀「雰囲気とかさ」


優斗「まぁ、みんな真面目で優しいですよ。ちょっとねじの飛んだアホもいますけど」


吉男「っくしょい!...あぁ、誰だ俺の噂してるやつ」


亜紀「そっかそっか、よかった〜」


優斗「話終わりなら僕はもう帰っていいですか?」


亜紀「話はこれで終わり、ありがとね」


優斗「あ、はい。失礼しました」



吉男「おぉ、戻ったか!」


優斗「あぁ!大した事なかったぜ」


吉男「さすがだ、んじゃ明日昼にでも牛丼食い行くか!」


優斗「おう!」


吉男「じゃあ11時ごろに俺ん家な」


優斗「りょーかい」



吉男「おい優斗」


優斗「ん?どした」


吉男「あの男と腕組んで歩いてるの、安藤先生じゃね?」


優斗「まじ?...ほんとだ似てる!って隣の男どこかで見た事ある気が...」


吉男「くぅ〜羨ましいなぁおい!」


優斗「まぁ、気のせいか...」


間(場面転換)

【優斗の部屋:朝】


SE:目覚まし時計


優斗「んっあぁ〜、もう朝か...」


優斗「なんか懐かしい夢だったな」


愛佳「優斗〜、今日はスキー合宿でしょ、早く起きて準備しなさ〜い」


優斗「そういえばそうだった!」



優斗「おはよ母ちゃん!」


愛佳「おはよ、ご飯できてるわよ」


優斗「ありがと!」


愛佳「じゃあお母さん、ゴミ捨て行ってくるね」


優斗「はーい」



愛佳「優斗、準備できた?」


優斗「あとちょっと!」


愛佳「お母さん先車行ってるから戸締り頼んだわよ」


優斗「はーい」



優斗「お待たせ」


愛佳「7分遅刻」


優斗「...ごめんなさい」


愛佳「面接とか大事な日に遅刻しちゃダメよ」


優斗「それはわかってるよ」


愛佳「ならよし、じゃあシートベルトして!」


優斗「はーい」



愛佳「優斗」


優斗「ん?どうしたの母ちゃん」


愛佳「優斗も来年は一人暮らしね」


優斗「あ、あぁ...」


愛佳「今までみたいに外食ばかりしていたらお金すぐなくなっちゃうからね、炊飯器でご飯を炊いてスーパーでお惣菜を買ってきたら節約になるからね。洗濯も大変だけど、自分でやるしかないからね」


優斗「え、急にどうしたの?」


愛佳「...お母さん居なくても大丈夫かなって心配になっちゃったのよ」


優斗「そっか... まぁ、頑張ってみるよ」


愛佳「ふふ、頑張れ優斗」


優斗「うん」


愛佳「じゃ、合宿楽しんでおいで」


優斗「うん、ありがとう」



愛佳「優斗、ごめんね...」



優斗「N:別れ際の母ちゃんはいつもより悲しそうな顔をしていた」



吉男「おお優斗!おはよ〜!今日からスキー合宿だな!!この俺の華麗な滑りで女子たちをメロメロにしちゃうぜ〜!」


優斗「メロメロになるのはお前だろ」


吉男「いいや、今度のオレは一味違うぜ」


優斗「なーにいってっだか」


杏虹「みんなおはよ〜」


優斗「おはよ〜」


杏虹「ついにきたね、スキー合宿!頑張ろうね優斗くん!」


優斗「お、おう...」


吉男「優斗お前、どう言う関係だ?」


優斗「どういうって、何もないけど」


吉男「何もないわけないだろ〜!ほら、さっさと白状しろ〜?」


優斗「いやだから...」


先生「よーし、時間になったぞ〜!全員いるか〜?」


杏虹「全員います」


先生「よし!それではこれよりスキー合宿を始める!今日教えてくれる先生方がいらっしゃる、よって!今からグループ分けをするぞ!」


吉男「オレ以外全員女子で!」


優斗「いやありあえないから」


吉男「いいだろ?夢は大きくっていうしさ!」


先生「実は先生が事前にわけてきた。今から渡すプリントに書いてあるので、各自確認して分かれるように、以上!」


優斗「俺はA班か」


吉男「オレもA班だぜ!よろしくな相棒!」


優斗「お、おう」


杏虹「私もA班だったよ、よろしくね優斗くん!」


優斗「あぁ、よろしくな」


吉男「優斗、何度も聞いて悪いが...」


優斗「だからなにもないって!」


吉男「いつまでも隠し通せると思うなよ...」


優斗「あはは...」


間(場面転換)


雅人「ただいま〜」


愛佳「おかえり」


雅人「優斗は?」


愛佳「今日から3日間スキー合宿でいないよ」


雅人「そうか」


愛佳「...」


雅人「...」


SE:着信音


雅人「悪い、電話出てくる」


愛佳「...」


〜5分後〜


雅人「すまん、呼び出されたから行ってくるわ」


愛佳「誰に?」


雅人「急ぎらしいから後で説明する」


愛佳「...なによ」


間(場面転換)


吉男「ふぅ、1日でだいぶ滑れるようになったな!これで俺も...」


優斗「お前、アニメでしか見ないような感じで転がり落ちてたけどな...」


吉男「...あ、あれもモテる為のパフォーマンスだ!」


優斗「はいはい、モテるといいな」


先生「集合〜!」


吉男「集合だってよ」


優斗「いくか」


杏虹「先生、全員揃いました」


先生「よーし、今日のスキーはここまでだ!次はお待ちかねの夕飯だ!今から5分間の休憩をとるので、各自トイレなど済ませて食堂に集まるように!以上、解散!」


吉男「やっと夕飯だぜ〜!」


優斗「今日の夕飯はなんだろう」


杏虹「えっとね、和牛すき焼きになめこの味噌汁、甘エビのお刺身、ナズナとカニカマのマカロニサラダだって」


吉男「和牛すき焼き!?」


優斗「豪華だなぁ」


吉男「優斗!早く食堂に行くぞ!」


優斗「ちょっと落ち着けよ、トイレに行きたいんだ」


吉男「早くしろっ!!!間に合わなくなっても知らんぞーーーっ!!!」


優斗「わ、わかった...」


吉男「目一杯とばせーーーっ!!!」


間(場面転換)

シーン【雅人帰り道、電話】


雅人「もしもし亜紀?」


亜紀「まーくん?どうしたの?」


雅人「今日、夜飲み行かね?」


亜紀「ちょっとまーくん、私仕事で3日間相手できないってこないだ言ったじゃん」


雅人「あぁ、そういえばそうだったな」


亜紀「うん、私だって会いたいよ...」


雅人「あぁ悪いな、仕事頑張れよ」


亜紀「ありがと!」


間(電話終了)


雅人「やることねぇし、今日はまっすぐ帰るか」


間(少し長めに)


雅人「ただいま〜、飯できてる?」


愛佳「珍しいわね、家で食べるなんて」


雅人「んだよ...」


愛佳「今から作るけど待てる?」


雅人「あぁ、早くできるやつで」


愛佳「なによそれ...」


雅人「俺風呂入ってくるわ」


愛佳「(ため息)」


SE:真斗のスマホに着信音


愛佳「...亜紀?」



雅人「ふぅ、さっぱりした〜」


愛佳「ご飯できてるわよ」


雅人「お?なになに」


愛佳「鶏肉冷蔵庫にあったからチキンライス」


雅人「お!いいねぇチキンライス!」


愛佳「はいどうぞ」


雅人「いただきます」


愛佳「どう?」


雅人「うん、うまいじゃん!」


間(食べ終わる)


雅人「ごちそうさま、美味かったよ」


愛佳「そう?よかった」


雅人「...」


愛佳「ねぇ」


雅人「ん?どした?」


愛佳「亜紀って誰?」


雅人「は?」


愛佳「は?じゃなくて、だれ?」


雅人「お前スマホ勝手に____」


愛佳「答えられないの?」


雅人「...友達だよ」


愛佳「友達?ハートマークたくさんつけたメール送り合うのが?」


雅人「...いや、ほら!酔っ払ってるだけだろ、勘違いすんなよ」


愛佳「ふぅん、そう」


雅人「...」


愛佳「じゃあこの写真はなに?」


雅人「う...」


愛佳「なに?」


雅人「...それは、あれだよ!それも酔っ払って___」


愛佳「あぁそうですか、貴方は酔っ払ったら若い女とホテル行って全裸でふざけた写真撮り合うのね」


雅人「...」


愛佳「どうするの?」


雅人「何が」


愛佳「何がって何?これからどうするのか聞いてるの」


雅人「どうするのってなんだよ」


愛佳「え、何?今のままでいいと思ってるの?どっちにするのか聞いてるの」


雅人「どっちにするって、んなの決められねぇよ」


愛佳「決められないって何!?」


雅人「だから、両方好きだから選べねぇって___」


愛佳「話にならないね」


雅人「...」


愛佳「もう無理だよ、私たち...」


雅人「いやだから...」


愛佳「この関係はもう無理だけど、貴方のこと、好きだよ?だから...」


雅人「...?」


愛佳「話さなければ、生きていなければ、ずっと一緒にいられるよね」


雅人「は?お前何言ってんの?」


愛佳「だからさぁ、死んでくれる?」


雅人「お前、そのナイフは...っん、何だ?急に眠く...」


愛佳「チキンライスに入れていた睡眠薬が効いてきたみたいね」


雅人「睡眠薬...だと...」


愛佳「知ってるのよ私、肉じゃがが好きだって嘘ついてたことも、本当はチキンライスが好きだってことも、私の親の金目当てで結婚したってことも、(少し溜めて狂気的に)毎日浮気相手とイチャイチャしていたことも」


雅人「っう...」


愛佳「そんな必死にどこへ行くの?貴方はもう逃げられないの、観念しなさい。」


雅人「亜紀...助け...」


愛佳「へぇ... 亜紀って子、お気に入りなのね」


雅人「はぁはぁ...愛佳...俺が悪かった...だから...」


愛佳「今更遅いよ...」


雅人「...」


愛佳「帰り遅くなるって聞くたびに浮気相手とイチャイチャしてるんだとか全部フラッシュバックして泣きながら文字打ってるのとかどうせ貴方は何とも思わないでしょ?」


雅人「...」


愛佳「だから、もういいの...」


雅人「逃げ...っう...」


愛佳「終わりにしましょ」


雅人「はやまるな...」


間(雅人、亜紀に電話)


雅人「亜紀...」


亜紀「もぉ、私忙しいってさっき言ったよね?」


愛佳「ん?何してるの?」


亜紀「もしもーし?まーくん聞きいてるの?」


雅人「亜紀、亜紀ぃ...警察を...」


亜紀「え?どうしたの!?」


雅人「頼む...」


愛佳「もしかして浮気相手の子?そっかぁ、じゃあちゃんと挨拶しないとね、最後の...」


亜紀「もしもし?まーくん?」


愛佳「もしもし初めまして、雅人の妻の愛佳です」


亜紀「え?あ、どうも...」


愛佳「いつも旦那がお世話になっているようで、ありがとうございますね」


亜紀「は、はあ?」


愛佳「ほら雅人、...もうこんなところで寝たら風邪ひくわよ」


亜紀「あ、あの」


愛佳「どうかされましたか?」


亜紀「さっきまーくん、警察呼べって言ってましたけど、何かあったんですか?」


愛佳「いいえ、特に何もないですよ?彼、今日は疲れていたみたいで、寝言じゃないですかね?」


亜紀「そうですか、わかりました」


愛佳「はい、それでは私は旦那を天国ベッドに連れて行くので電話は切りますね」


亜紀「あ、はい」


雅人「まって...くれ...亜紀ぃ...」


愛佳「電話はもう切れた、残念だったわね」


雅人「っく...」


愛佳「ゆーっくり、おやすみ」



愛佳「ふ、ふふ、ウフフ」


愛佳「ついに、私たちは一つになれるのね!あぁ、大好きだよ雅人!あの世でたくさんイチャイチャしようね♡(間)んあぁ、雅人の血...おいしい」


愛佳「ハァハァ、じゃあ私もそろそろ寝るね、おやすみ雅人、(KISS)」


間(30分後)


亜紀「優斗くん!優斗くん、いる!?」


吉男「優斗なら大浴場行きましたけど」


亜紀「ありがと吉田くん」


吉男「いえ〜それほどでも〜」



亜紀「優斗くん!」


優斗「ん?どうしたんですか?そんなに慌てて」


亜紀「今警察から連絡があって、すぐに家に戻って欲しいって!」


優斗「え?」


亜紀「タクシー呼んであるから行くよ!」


優斗「え、えぇ?」



優斗「N:先生の用意したタクシーに乗り、急ぎ帰ってきた僕が見たのはパトカーばかりの異様な光景、映画とかでよく見る黄色いテープが張り巡らされパトカーのランプで目がチカチカする。見慣れない光景に呆気にとられる僕に警察官が話しかけてきた」


警察官「君がこの家の佐伯優斗くんかな?」


優斗「はい、そうです」


警察官「鍵が閉まっていて家の中に入れないから開けてもらえるかな?」


優斗「わかりました」


優斗「N:言われるがままに家の鍵を取り出そうとするが、手が震えて上手くいかない、何とか鍵を手に持ったその時、母と義父のケンカや、母の最近の言動、寂しそうな顔、不穏なことが頭をよぎる。まさか、いやいや、そんなはずはない。そう自分に言い聞かせ震える右手を左手で支え何とか鍵を開けた」


警察官「突入!」


優斗「N:その掛け声と共に、警察官が一斉に家の中へ入って行き僕は確認が終わるまで外で待っているようにと言われた。恐怖からか手の震えが全身へ広がる、冬の寒さもあり震えはなかなか収まらなかった」


警察官「優斗くん、家の中に入ってきてもらえるかな?」


優斗「はい」


警察官「この人なんだけど、見覚えある?」


優斗「はい、多分お義父さんです...」


警察官「この人は?」


優斗「あ、お母さん...」


警察官「...」


優斗「N:涙が止まらなかった」


警察官「優斗くんごめんね、事情聴取したいから、署まで来てくれるかな?」


優斗「はい」


優斗「N:パトカーで移動中、ふと吉男の言葉を思い出した」


【回想】


吉男「小2のときに離婚してシングルマザーになり、小3の夏頃に新しい男と再婚、それからもその男と頻繁に言い合いの喧嘩って...__お前のカーチャン、大丈夫か?」


優斗「まぁ大丈夫っしょ、なんだかんだなんとかなってきたし」


吉男「それに比べてお前は偉いよなぁ〜!いつか母親が落ち着いたときに離婚した実の父親と仲直りさせて、3人で旅行、最後にみんな笑顔で記念写真撮りたいなんて、泣かせてくれるじゃねぇかよぉ〜!!!うっう...」


優斗「まぁ、切っても切れないつながりだしな」


【回想】


優斗「N:それからの事は泣きすぎてよく覚えていないが、家に帰れないため、警察署で一夜を過ごした。警察署では皆さんよくしてくれて、事情聴取の時も泣きすぎて警察官の人ももらい泣きをしていたと後から聞かせてくれた。そして、全てが終わり解放されたのは、次の日の朝だった」


吉男「おぉ、優斗!大丈夫か?」


優斗「N:親友の一言、何気ないその一言に安心したのか、また涙が溢れてきた」


吉男「優斗お前、前夜に急に合宿所を飛び出したと思ったら、朝早くに帰って来て、突然泣き出すって、何があった!?」


優斗「母ちゃんが...」


吉男「うん」


優斗「お義父さんと...」


吉男「うん」


優斗「無理心中した...」



吉男「あー...」


優斗「吉男、お義父さんも母ちゃんもいなくなって、これからどうすればいい...?」


吉男「うーん...」


優斗「どうすればいいんだよ!?教えてくれよ...」


吉男「優斗...」


優斗「(泣く)」


吉男「大変だったな、ゆっくり休め」


優斗「N:泣いているうちに僕は寝てしまったようだ」



優斗「ンン...」


杏虹「優斗くん?」


優斗「安藤?」


杏虹「よかった〜、昨日朝顔ぐしゃぐしゃにしながら力尽きるように寝て、ずっと起きないから心配したんだよ!」


優斗「...ここは?」


杏虹「ここは私の家だよ」


優斗「え...?」


亜紀「杏虹、優斗くん困ってるじゃん」


杏虹「えー、そんな事ないよね?」


優斗「う、うん」


亜紀「ほら困ってる」


杏虹「えー」


亜紀「ごめんね〜、あの後合宿終わってみんな各自帰宅したんだけど、優斗くんほら... だから、代理だけど担任の私が家に連れてけって主任に言われてね、落ち着くまでここにいていいからね」


杏虹「ずっとここにいてもいいよ?」


亜紀「だから、困らせない!」


杏虹「いーだ!」


亜紀「そういえば、警察の人から優斗くん宛に手紙があったって、これ」


優斗「ありがとうございます」


亜紀「じゃあ私、ご飯作ってくるね」


杏虹「はーい」


優斗「はい」


杏虹「誰からだろ〜?読んでみたら?」


優斗「う、うん」


愛佳「優斗へ、自分勝手な母親でごめんなさい。少し長くなっちゃうけど、最後まで読んでくれると嬉しいです。お母さんは、お義父さんの隠れて浮気をしている事、たくさん嘘をついてまでしていることが許せなかった。辞めさせるにはどうすればいいか、たくさん悩んだけど出てくる答えは一つしかなかった。だから、ごめんね優斗。お母さんはお義父さんと先にあの世に行ってるね。優斗は後を追ってきちゃダメだよ。自分勝手なことを言っているのは重々承知しているつもりです。でも、お母さんは優斗のみらいまでは奪えない。親を自分で決められるわけじゃないのに、今までありがとうね。

 優斗は、小さい頃から穏やかで優しい子でした。お父さんとお母さんが喧嘩している時も、泣きながら止めに入ってくれた事、覚えていますか?幼稚園で泣いている子に『どうしたの?』って優しく声をかけていたと先生に褒められていたね、これからも変わらず優しい優斗でいてね。これからはお義父さんもお母さんもいないけど、どうか幸せになってください。お母さんは優斗の笑顔にたくさん元気をもらいました、生まれてきてくれてありがとう、愛しています。優斗の母より」


優斗「母ちゃん...なんで...」


杏虹「優斗くん...」


優斗「僕が...母ちゃんの異変にいち早く気づいていれば... もっと母ちゃんに寄り添って話を聞いて少しでも楽にしてあげられていれば... 僕が...僕がぁ...」


杏虹「...」


間(優斗、泣き止み思い出したかのように)


優斗「お義父さんも母ちゃんも、もういないのか」


杏虹「大丈夫だよ、私が一緒にいる」


優斗「安藤...」


杏虹「大丈夫」


優斗「なんか、安藤の声、母ちゃんに似てるな...」


杏虹「そうなの?」


優斗「うん」


杏虹「そっか、いいよ甘えて」


優斗「え?」


杏虹「今日だけ特別」


優斗「う、うん... ありがとう」


杏虹「よしよし、よく頑張ったね」

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◇◆声劇用台本◆◇ 月風 瑠風 @ruhu0103

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