『Sfz Nova』2/4
「……はぁ。お迎えにあがりましたよ、師匠」
「ヘルツでいい。……見ない間に随分成長したな。お前も、それにルフトラグナまで」
「へ、ヘルツ……さん……。っ! もう! なんで一言、言ってくれなかったんですか!? わたしずっと心配してたんですよ! ベルも、エストレア様も……! 殺されたんじゃないかって……本当に、すっごく心配してたんですから!!」
大粒の涙をポロポロと流しながら、ルフトラグナはヘルツに抱きつく。
「あ、あぁ……すまなかった……。こうなるかもと予測して事前にお前たちの荷物を用意していたが、全て揃えるのは間に合わなくてな。結局メモも詳しいことは書けずじまいだったんだ」
「……一体、何があったんですか?」
ルフトラグナをなだめるようにそのくせっ毛を撫でていたヘルツは、真剣な表情で私を見つめる。
「実は魔王やシュナらが一体どこに身を隠しているのかずっと調査していたんだが、あの日の帰り道にちょうど居場所を掴んだ。その瞬間に気づかれてしまってな、シュナに襲撃されて、奴が斬る瞬間……確実に死んだと思わせるために両足を犠牲に直前で転移した」
「りょ、両足……は、今はあるんだ」
「あぁ、そこのカルヴァに戻してもらったよ」
「……え!? じゃあルフちゃんの右腕も……!」
「……いえ、すみません。私の力は無を有へ転換するものです。そこの魔術師の足はシュナのアニムスマギアで消し去られたので、戻せました。天使の右腕を戻すなら、取り返し、腕を完全に焼却なりしていただければ元に戻すことが可能です」
「そ、そっか……でも良かった、ちゃんと戻せるんだね」
不安要素が一つ……いや、ヘルツも見つかって二つなくなったからか、随分と気持ちが軽くなる。
この調子なら魔王戦でもなんでも行ける気がしてきた。
「まぁ、それで敵戦力との差を思い知らされてな。この三人に匿ってもらっていた。この部屋は魔力を遮断する結界が張られているからエストレアも探せなかったのだろうな」
「そっか、そういうことだったんだね。……生きててくれてホントに良かったよ」
「本当に心配をかけてすまなかった。だが、そんなこんなで現在に至るが……もう時間は残っていない。神色は全て破壊されたんだろう?」
「うん。すぐ動くってわけじゃないみたいだけど……」
「そうか……なら、やることは一つだな」
相手はもう計画終盤で、時間は残されていない。
私たちに出来るのは、もはや魔王と対峙することのみだ。
そしてヘルツは魔王の居場所を突き止めている。
「今の今まで防御に専念していたが、次はこちらが攻撃に移る番だ。ベル、ルフトラグナ、お前たちを転移させる」
「了解! ……って私たちだけ!?」
「場所が場所でな、転移魔術を弄って例の場所に繋いだはいいが一度に二人だけしか送ることが出来ない。後で他のメンバーも転移させるが……罠の可能性もある」
「あ~……なるほど、私たちならそれを回避出来るから行ってこいと……」
「そういうことだ。私はお前たちを転移させたあと一度ニンフェでエストレアに会ってくる。増援は数十分後になるが持ちこたえられるな?」
「「……はいッ!」」
「よし。ゼルフルート、お前たちはどうする? この主も守る剣もなくなった遺跡をこれからも守り続けるのか?」
一緒に来てくれるなら心強い仲間になる。
確か役目を終えたと言っていたから、遺跡に残る理由はないはずだが……。
「これからも、これまでも、私は自分の意思で行動します。主がそう願ったので……。手は貸しますが、やるのは死者が出ないように誘導するだけです。そこから先はベルに託します。カルヴァとデスカロゥトは……」
「ゼルフルートがやると言うなら、私も参加します。と言っても、あまり役には立てませんが……」
「おいおい、ブン殴ることしか能がない末っ子を後ろで支えるって立派な役があるじゃねぇか!」
「え……めんどくさ」
「カルヴァお前……ホント日に日にゼルフルートみたいになってくな……」
「姉を見習うのは当然です。デスカロゥトももう少し口調を気をつけてください」
「あ~ムリムリ、オレがそれをやるって想像しただけで傷が開きそうだ」
「────ふっ。……ということなので、微力ながら私たち全員、協力しましょう」
妹たちのいつもの言い合いに緊張が解れたのか、笑みを浮かべたゼルフルートは手を差し伸べながらそう答えた。
それを聞いてホッと一安心したのか、ヘルツも穏やかな表情で差し伸べられた手を取った。
「助かる。……ではベル、ルフトラグナ。これから先に向かうのは魔王の力でこじ開けられた異空間だ。何が起こるかわからない。それき運命が見えるといっても相手は彼の勇者サハラ・レイを討った実績と経験がある。絶対に油断はするな」
「油断はしないし、常に警戒するよ。あなたの弟子はそんなヤワじゃない」
「そうか……そのマント、似合ってるじゃないか」
「そりゃヘルツのプレゼントですから」
「格好的にそういうものが好きなのかと思ってな」
「いやこの服はなんと言いますか……ま、まぁいいや。ありがとうヘルツ、いろいろと」
「礼を言うなら全部が終わってからだ。行くぞ────」
ヘルツが白い杖を取り出し、七芒星を描くように振ると、私のルフトラグナの足元に暗い青の魔法陣が展開される。
「ヘルツマギア【
その瞬間、魔法陣と平行になるように天井に穴が空く。
だからと言って遺跡に出る訳ではなく、その先は深い闇のようなもので包まれていた。
魔法陣が私とルフトラグナを貫通して穴に接触すると、破られた空間が落ちて私たちは転移した────。
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