04-09-05 隋九 文帝楊堅 上

 ずい高祖こうそ文帝ぶんてい楊堅ようけん弘農人こうのうじんである。東漢とうかん太尉たいい楊震ようしんの子孫と伝わる。父の楊忠ようちゅう北魏ほくぎ及び北周ほくしゅうに仕え、その功績から隋公すいこうに封じられた。楊堅はその爵位を継承した。


 楊堅は生まれも特殊なものであった。その家には尼寺がそばにあった。はじめひとりの尼僧が楊堅を扶育していたのだが、一日尼僧が出かけるということになり、尼僧の母が自ら抱いてあやした。すると楊堅に角と鱗が生え始めた。母は大いに驚いて楊堅を地に落としてしまった。尼僧は胸騒ぎがしたためすぐさま帰還し、楊堅の様子を見に来た。そして言う。


「我が子を驚かせ、天下を取る日を遅くさせてしまった」


 成長すればその異相はいよいよただならぬものとなり、かつて北周のひとは北周の武帝ぶていに言っていた。


普六茹堅ふりくじょけんには反相がございます」


 そのことを知った楊堅は日々自らの才覚を秘匿し続けた。このため娘が宇文贇うぶんひんの皇后となった。やがて宇文闡うぶんせんが立ったところでいよいよ皇太后の父としての実権を握り、ついに受禅。


 即位後九年にしてちんを平らげ、天下を統一したのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る