04-09-04 陳九 後主陳叔宝 下

 ずい晋王しんおう楊広ようこう(のちの煬帝ようだい)を元帥げんすいとし、伐陳ばっちんの軍を起こした。楊素ようそ韓擒虎かんきんこ賀若弼がじゃくいくがそれぞれ別々の道から進んだ。高熲こうけいが楊広の副官となっており、薛道衡せつどうこうに問う。

江東こうとうは平定できようかな」

 薛道衡は答える。

「出来ましょう、郭璞かくはくも言っております、江東に王分かたること三百年にて中国と合す、と。間もなく、その三百年となります」


 後主こうしゅは隋が兵を立ち上げたと聞くと、近臣に言う。

「王の気がここに立ち上ると言うに、やつは一体何なのだ」

 孔範こうはんは答える。

長江ちょうこうは天の与えた塹壕、奴らとて飛んで越えられるわけではございませぬ。臣は常々自身の官位が卑しきことを思い煩っておりましたが、北虜ほくりょがもし長江を渡ろうというのであれば、臣めに軍をお預けさえいただければ、たちまち撃退し、臣も大尉公たいいこうとなれましょうな」

 後主はもっともであるとし、歌え踊れの宴をし、詩作をやめようともしなかった。


 賀若弼が広漢こうかんから長江を渡り、韓擒虎は横江おうこうから夜に采石さいせきへと渡る。守兵はみな酔っていた。このため韓擒虎は新林しんりんより進み、朱雀門しゅじゃくもんに突入した。このとき後主はその身を景陽殿けいようでんの井戸の中に潜めていた。とある兵が井戸を覗き込み、石を投げ込んでみれば、叫び声が上がる。そこで綱を引いてみれば、後主が張麗華ちょうれいかおよび孔貴嬪こうきひんとともに結び付けられていた。後主は捕まり、長安ちょうあんに引き連れられた。


 後主は在位七年であった。陳は武帝ぶていより五代、二十二年にて滅んだ。

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