03-11-02 晋二 恵帝司馬衷 1

 恵帝けいてい、名は司馬衷しばちゅう。元々あまり頭が良くなかった。太子であったとき、賈充かじゅうの娘「賈南風かなんふう」を妃に迎え入れた。彼女は権謀術数に長けていた。


衞瓘えいかん」がかつて武帝の側にあったとき、わざと酔ったふりをしてひざまずき、皇帝のみがいることを許される床をなでさすり「この座が惜しくございますな」と語った。司馬衷の即位を危ぶむ言葉である。武帝も意図をすぐに悟り、尚書から持ち込まれた難題を密封の上司馬衷に渡し、それをどのように解決するかによって太子を廃位するかどうかを決めようとした。

 賈南風は司馬衷の廃位を大いに恐れ、この難問に対する回答案を部下に作成させ、司馬衷にこの答案を書き写させた。その回答は武帝を満足させるものであり、こうして司馬衷は廃位を免れた。

 こうして恵帝は即位した。賈南風は皇后となって恵帝に代わり政務を執り行った。


 皇太后の「楊氏ようし」は、恵帝の母である楊氏のいとこであった。また楊皇太后の父である楊駿ようしゅん太傅たいふとなっていた。

 賈南風は楊駿を殺し楊皇太后を廃し、汝南王じょなんおうの「司馬亮しばりょう」、衞瓘、楚王そおうの「司馬瑋しばい」をまた殺害した。

 一方で人々からの信頼厚い張華ちょうか、「裴頠はいぎ」、王戎おうじゅうを取り立て、枢要を預けた。張華は晋室への忠心厚く、賈南風が危険極まりないと知りつつも、賈南風よりの敬重礼遇を受けたため裴頠と共に協力し合い政を助け、そこから数年間は暗主を抱えたりと言えど、朝野は平静を保っていた。



蒙求もうぎゅう


王戎簡要おうじゅうかんよう 裴楷清通はいかいせいつう

 曹魏末期、のちに西晋で立身することになるふたりの若者は先達たちから高く評価されていた。楚の評価が「王戎はシンプルに要点を拾い、裴楷は流れるように論旨を通じさせる」というものだ。

 若者よ、羽ばたかれよ。


瓘靖二妙かんせいじみょう 岳湛連璧がくたんれんへき

 西晋の衛瓘と索靖はともに書道の達人。そこで両名は「二妙」と通称された。

 同じく西晋の潘岳と夏侯湛。ふたりはともに文筆で名を知られ、かつふたりが並ぶとイケメン祭となるため「璧玉が連なる」と通称された。

 西晋はえろうすごいお方ばかりどすなー。


袁盎却座えんおうきゃくざ 衛瓘撫牀えいかんぶしょう

 かん文帝ぶんていに仕えた袁盎えんおうは、文帝が側妾のしん夫人と同じ位置の席について宴に興じているのを見て、慎夫人の席を一段低いところに引き下ろす。文帝と夫人が怒ると、「皇后陛下であればともかく、慎氏は側妾のお一人でございます。その線引きはしっかりとなさいませ」と諫めた。ちなみに諫めすぎて煙たがられた。

 西晋せいしん武帝ぶていに仕えた衛瓘は、後継者の司馬衷しばちゅう(のちの恵帝けいてい)が暗愚であることを憂慮していた。そこで皇帝しか座れない席にすがりつき、「ああ、この座が惜しゅうございます」と口にした。なお衛瓘は武帝の時代には咎められなかったが、恵帝の時代、皇后賈南風かなんふうの策略により殺されている。

 皇帝のために設けられる席にまつわる諫言を為した二人。


張憑理窟ちょうひょうりくつ 裴頠談藪はいがいだんしゅ

張憑(晋)&裴頠(晋)

 東晋中期の弁者、張憑。彼は家格が多いにものを言う東晋宮中に混じり込むと、そのみごとな弁で他者を唸らせ、ときの皇帝からは「そなたはまるで理屈のあなぐらのようだ」と称えられ、以後重用された。

 西晋で賈南風政権を大いに支えた裴頠は論壇に長け、そのすさまじさのあまり「まるで林や藪から論が飛び出てくるかのようだ」と評された。……あんまり褒められてなくないこれ?

 凄まじい弁者が、二人。


南風擲孕なんふうてきよう 商受斮涉しょうじゅさくしょう

賈南風(晋)&紂王(書経)

 南風はしん恵帝けいていの皇后「賈南風かなんふう」を指す。はらんだ別の妃の腹をかっさばいて赤子をなげすてたというトンデモな逸話が残るお方。一方、受は古い発音だとちゅうに繋がったのだそうだ。そして悪事をやめるよう交してきた者をり殺した。

 無道の限りを尽くし、結果ともに亡国を招いた、と言うことでセットにされている。

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