03-10 蒙求 三国志分

03-10-01 蒙求 三国志分 1

泰初日月たいしょじつげつ 季野陽秋きやようしゅう

夏侯玄(三國志)&褚裒(世説)

 三国魏の名士夏侯玄かこうげん、字泰初たいしょはその交友スキルがずば抜けていた。夏侯玄と話す人々は、まるで夏侯玄の懐に太陽や月が入っているのではないかと錯覚したという。ただしその本心はわりとえげつない批判者であった。

 西晋の滅亡を避け、東晋に亡命した名士褚裒ちょぼう、字季野きや。口にはめったに批判の言葉を表わさないが、その内心ではかなりえげつない批判の言葉が渦巻いていたという。人物批判を春秋と言い、当時の皇帝の祖母鄭阿春ていあしゅんの名の字を避けて陽秋と読んだのだ。

 交友広き名士の、表と裏。


胡威推縑こいすいけん 陸績懷橘りくせきかいきつ

胡威(世説)&陸績(三國志)

 西晋の胡威は父より絹の布を受け取ると、それを配下にすぐ渡してしまった。

 後漢の陸績は袁術に橘の花が飾られた間で応接を受けたところ、その橘の花のうち三輪を懐にしまい、母に渡そうとした。

 送られたものを自分で持とうとせず、人にすぐ与えた二人。


蔡裔殞盜さいえいいんどう 張遼止啼ちょうりょうしてい

蔡裔(晋)&張遼(三國志)

 東晋の蔡裔が盗賊の隠れる家に入り、一括して床を蹴れば、たちまち三人の盗賊がぼとぼとと天井から落ちてきたという。

 三国魏の勇将、張遼。呉に攻め立てたときの武勇のすさまじさのあまり、呉の人々は鳴く子に「張遼が来たぞ!」と言って脅し、その泣き声を止めたという。

 めちゃくちゃな武勇の二人。


隱之感鄰おんしかんりん 王修輟社おうしゅうてつしゃ

呉隠之(晋)&王修(三國志)

 東晋末の名地方官、呉隠之。彼は母が死んだときに凄まじい慟哭を見せ、その姿を見た隣家のものが、息子に対し「おまえが役人を取り立てるような高官になれたなら、彼のような人材こそ役人にしなさい」と告げたという。

 漢末の名地方官、母を七歳の時に失ったのだが、その日は折しも村の祭りの日だった。しかし王修の慟哭の声があまりにも凄まじく、そのためについに祭すら中止させてしまった。

 名地方官は孝心もすごい。


華歆忤旨かきんごし 陳羣蹙容ちんくんしゅくよう

華歆(三國志)&陳羣(世説)

 曹丕が皇帝になりました! やったね! けど華歆は昇進を蹴ったし、陳羣は悲しそうな顔を隠そうともしませんでした。

 漢の遺臣たちは、その矜恃を曲げない。

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