03-07-10 漢十 諸葛亮 1

 この頃「諸葛亮しょかつりょう」がたまたま襄陽じょうよう隆中りゅうちゅうに庵を結んでおり、日ごろから自らを管仲かんちゅう楽毅がくきと比べていた。

 劉備りゅうびが人相鑑定士として有名な「司馬徽しばき」の元を訪問したとき、司馬徽が言う。

「良いですぞ、今なすべきことを知る者たちの中に俊傑がおりますぞ、良いですぞ、それすなわち伏龍ふくりょう鳳雛ほうすう諸葛孔明しょかつこうめい龐士元ほうしげんにございますぞ」

徐庶じょしょ」もまた劉備に言う。

「諸葛孔明こそ臥龍です」


 劉備は三たび諸葛亮の庵を訪ねた末、この先に劉備が取るべき策を問う。諸葛亮が答えて言う。

曹操そうそうは百万の兵を有し、天子を抱えて諸侯に命令を下しております。このような勢力とむやみに戦ってはなりません。また江東こうとうには孫権そんけんがおり、国土は険阻でこそありますが人々からよく慕われております。かのものらを援護とし、下手に攻め立てようとせぬことです。一方でこの荊州けいしゅうは用武の国。そして西の益州えきしゅうは堅固な自然の砦にして、中に入れば沃野がどこまでも広がり、拠点とするにふさわしいでしょう。もし劉公が荊州益州をともに抑えられれば、万全の守りを固めることができ、天下の勢力図は一変いたします。荊州からはえん洛陽らくようを狙え、益州からは西方より関中かんちゅうを伺えます。劉公がいざお出ましになろうというときに、彼の地の人々がどうして弁当水筒引っ提げ公を出迎えずにおれましょう!」


 劉備は諸葛亮の発言を讃え、日ごとにその交わりを密としていった。そして言う。

「わしに孔明があるのは、魚に水があるかのようなものだ」



蒙求もうぎゅう


東平爲善とうへいいぜん 司馬稱好しばしょうこう

 後漢明帝の弟、東平王劉蒼りゅうそうは兄より格段の寵遇を受けていた。封爵地での生活ののち明帝の元に戻ると、明帝より「何が一番楽しかったか?」と聞かれる。すると劉蒼は「善きことをしているのがもっとも楽しかったです」と応えた。

 後漢末期の人物鑑定人、司馬徽しばき。彼は人の欠点をあげつらわず、そしてありとあらゆる現象に対して不平も持たず、すべてに対して「好し」とばかり応えたという。

 善きことをし、好いと言う。繋がっていると言えば繋がっているような、いないような?


孔明臥龍こうめいがりゅう 呂望非熊りょぼうひゆう

 三国志の諸葛亮が伏龍ふくりゅうと呼ばれていたのは、もはや有名(臥も伏せる、の意味です)。ここに対応して、周の文王が人材を探したときに「得るのは龍でも神獣でも、熊やヒグマ、虎や狼でもない。王の補佐だ」と占いに出た。

「在野に埋まる、国づくりを大いに助けた賢人」をセットにしてたたえたわけですね。いやぁ、そこはあえて呂望非龍でいってほしかったとですよ……w


葛亮顧廬かつりょうころ 韓信升壇かんしんしょうだん

諸葛亮(三國志)&韓信(史記)

 劉備りゅうびは庵を結び半ば隠遁していた諸葛亮しょかつりょうのもとに何度も足を運び、ついに臣下に迎えた。

 劉邦りゅうほうはそれまで無名であった韓信を大将軍に抜擢した。

 開国の英雄を助けた名臣の大抜擢。

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