03-04-04 漢九 党錮名士 1

 陳蕃ちんばんは隠者の「徐穉じょち」「姜肱きょうこう」らを推挙した。


 徐穉は豫章よしょう出身。陳蕃が豫章太守となったとき、徐穉のために特別にベンチを設け、徐穉が座らなければベンチを片付けた。

 徐穉は結局誰からの招聘にも応じなかったのだが、それでも赴任先で死亡した諸侯がいたら、本の入ったかごを背負い、弔問には訪れた。

 葬儀の場に訪れると、あらかじめ一羽の鶏を炙っておき、それを酒に漬け込んだあと乾かした綿にくるんで持ち寄った。墓の前にまで来ると水に綿を浸して酒気を帯びさせ、白いクロスの上に飯を置き、鳥をその手前に置き、送別の祭礼をなした。祭礼を済ませると喪主に挨拶をするでもなく立ち去った。


 姜肱は彭城ほうじょう人である。ふたりの弟、「姜仲海きょうちゅうかい」・「姜季江きょうきこう」と仲が良く、布団も常に共有していた。

 そんな姜肱のもとに強盗が押しかけてきた。姜肱は姜季江のために自らの身を擲とうとするが、弟も負けじと身を投げ出そうとする。そんなふたりを見て、強盗はついにふたりを見逃すのだった。


 徐穉や姜肱にはともに招致の話が来たが、ふたりとも結局応じなかった。


 ポスト梁冀りょうき時代のエース、黄璚こうけいが死亡する。その葬礼には四方から名士が詰め寄り、参列者は七千人にも及んだ。

 そこに徐穉が現れ、盃を掲げ号泣する。それから刈りたての草を捧げ、立ち去った。これを見て名士らが言う。

「なるほど、あれが噂に聞いた南国の隠者、徐くんなのか」

 徐穉に興味をいだいた名士らは「茆容ぼうよう」に依頼し、徐穉に追いついて政について問うよう依頼。しかし徐穉は何一つ答えることもない。

 このことを聞いた「郭泰かくたい」が言う。

「かれが政について答えなかったのには、孔子こうし寧武子ねいぶしの乱世の処方、すなわち敢えて愚鈍を貫かれたのを見て到底真似できぬ、と嘆じたときの思いを知るかのような心地である」



蒙求もうぎゅう


季札挂劒きさつかいけん 徐穉致芻じょちちすう

 呉の公子季札は呉からの使者として、各地に出向くことになる。その途上にさしかかった「じょ」の君主が、内心で季札の腰に提げていた宝剣を欲していた。それに気付かぬふりをして各地を巡った季札、帰途にて再度徐に立ち寄る。するとその君主が死んでいたため、墓に例の宝剣を捧げ、帰還した。

 徐穉は後漢の人。聡明ではあったが、隠遁指向。ただお世話になった人が亡くなったときには、名を明かすこともなく、大いに哀悼の意を示し、去ったという。

 二人とも栄達を避けつつ、しかし死者に対する礼節を尽くした、という感じでペアにされているようだ。


姜肱共被きょうこうきょうひ 孔融讓果こうゆうじょうか

 後漢桓帝時代の隠者、姜肱。彼は兄弟たちと仲が良く、その布団すらともに共有するような間柄であった。

 後漢末期の名士、建安七子けんあんしちしのひとり、孔融。彼は幼い頃家族とともにたくさんの桃を食べたのだが、そのときに一番小さいものを選んだ。曰く、上の兄弟こそが大きいものを食べるべきであるが、とは言え下の兄弟には大きいものを食わせてやりたい、と語った。

 兄弟想いがぶち抜けたふたり。

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