03-04-02 漢九 桓帝劉志 2

 桓帝かんていは独立独歩にて讃えられる名士を推挙せよと命じた。「崔寔さいしょく」が推挙に応じたが、役所の前にまでたどり着いたものの、試験を受けず引き返してしまう。帰宅すると政についての持論を著した。以下の通りだ。


「聖人は世に順応し、凡人は順応しきれず苦しむ。太古の結び縄の約定がしんを押し止められただろうか? 美しき舞が匈奴きょうどの侵攻を押し止められるだろうか?

 刑罰とは乱れた世を整える薬石の如きものである。徳治とは平和な世にもたらされる穀物や肉である。では、徳治にて残虐な犯罪者を裁けば何が起ころうか? それはやたらと賊に餌を与えることにはなるまいか。故に刑罰でもって乱を鎮めることが、統治の薬石として効く、と述べたのだ。

 ここしばらくしばしば皇帝陛下の代が移ったが、政において恩賞が濫発されていた。いうなれば御者が馬に進むべき道を委ねたが如きものである。ともなれば四頭引きの馬車は瞬く間にあぜ道に落ち、横転してしまおう。ではその道が皇道、その馬が臣下、その御者が政であるならば?

 いますぐにでも手綱を掴み直し、馬車を統御せねばならぬ。鈴を鳴らしてちんたら馬を大人しくさせようなどとしておれようか。

 昔、文帝ぶんていは肉刑を廃された。すると右足切断相当の罪が斬刑となり、むち打ちによる刑罰でも死者が出るに至った。この統治は厳罰によって治安を正したと言うべきであり、寛容さによってではないのである」


仲長統ちゅうちょうとう」はこの書状を読み、言う。

「人主たるもの、席のそばにこの書を置いておくべきであろう」

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