03-03-06 漢八 虞詡 上

 安帝あんていが即位したころ、国境周辺では反乱が頻発し、鄧隲とうしつ涼州りょうしゅうを放棄の上北方に戦力を集中しようと考えた。郞中の「虞詡ぐく」があり得ないことだと反対して言う。

「関西からは将が、関東からは相が輩出されております。特に烈士武夫の多くは涼州出身です」

 人々はみな虞詡に賛成した。このため鄧隲は虞詡を憎んで、陥れたいと画策するようになった。


 朝歌ちょうかにて謀反が起き県令や官吏らを殺し、制御もしきれなくなった。そこで鄧隲は虞詡を朝歌に赴かせることにした。虞詡の旧知は赴任を傷み、憐れんだ。しかし虞詡は言う。

「どっしりと根を下ろし、枝葉の錯綜した木々と向かい合うのでなくば、斧の本当の切れ味など分からぬではないか」


 虞詡は朝歌に赴任して早々に壮士を募った。城攻め、強奪を旨とするものを上とし、ひとを傷つけ盗みを働くものを次にした。合計で百人あまりを獲得すると彼らを賊の中に紛れ込ませ、族に強盗働きをさせるよう誘導させた。

 その一方では兵を伏し、強盗働きに赴こうとする賊らを強襲、数百人を殺させた。更には貧民のうち裁縫に長けるものを集めて賊の中に紛れ込ませ、その裾に賊の目印となる色糸を縫い込まさせておいた。このためその色糸の縫い付けられていた者たちが町に出てきたとき、たちまち捕らえられた。

 賊は恐れおののき解散し、こうして朝歌周辺は平定された。


 鄧太后は虞詡に将帥の知略があることを知り、武都ぶと太守に任じた。

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