03-01-16 漢七 光武帝劉秀14

 光武帝こうぶていは政道を明らかに示し、法度政令に関する議論には自ら目を通し、時勢をよく量っていたため、その決裁に誤りはないものだった。


 かつて光武帝が故郷の南陽なんように戻ったとき、宗室らと酒宴を開いた。このとき上の世代の女性たちが光武帝のもとに集まり、語る。

しゅうちゃんは普段の時の付き合いでもこれと言って取り繕うような所もなかったし、ただ正直で温厚なだけ、って印象だったから、まさか天子さまになるなんて思わなかったわ」

 これを聞いて、光武帝が笑う。

「天下を治めるにも、同じのりでいこうと思っているよ」

 


 光武帝は長らく戦場を駆け巡ったため、遂には軍事を嫌うようになった。しょくが平定されたあと、よほど緊急のことが無い限り、軍事について口に出そうとはしなかった。

 北匈奴きたきょうどが飢饉や蝗害にて苦しんでいるのを知ると、「臧宮ぞうきゅう」や「馬武ばぶ」がいまこそ匈奴を攻め落とすべき、と上申、剣をガチャガチャと鳴らし、拳で手のひらを打った。その心は既に北匈奴の領分である伊吾いごの北の征服にめぐっていた。

 これに対し光武帝は黄石公こうせきこう包桑記ほうそうき』を引いて「柔能く剛に勝つ、弱能く強に勝つ」と語った。以降将軍たちは敢えて軍の動員を口に出すこともなくなった。


 光武帝は西方の玄関口である玉門関にょくもんかんを閉ざし、西域との交易を遮断した。

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