03-01-08 漢六 光武帝劉秀 8

 赤眉せきびの残党は東に落ち延び、宜陽ぎように向かった。光武帝こうぶていは迎撃の準備をして待ち構えたのだが、樊崇はんすう劉盆子りゅうぼんし徐宣じょせんらを引き連れ、上半身をさらけ出して降伏を乞うてきた。それを受け、光武帝は軍馬を連ねて言う。

「一戦も交えずに降伏すること、後悔はしないか?」

 徐宣は地面に額を叩きつけて言う。

「虎口より慈母の元に戻るかのような心地にございます、誠に歓喜の極みにございます」

 光武帝は返答する。

「なるほど、そなたらは鉄の中でも硬度の高めなもの、凡人でもまともな方のようだな(卿所謂鉄中錚錚、庸中佼佼者也)」

 そうして皆に田畑や家を与えた。


 漁陽ぎょようでは太守の「彭寵ほうちょう」が奴隷によって殺され、奴隷もまた光武帝のもとに降った。

 以前、光武帝が王郞おうろうと戦っていたとき、彭寵は駿馬を駆りだして光武帝の兵糧運搬に尽力、光武帝軍が飢えないように計らった。後日、その功績を鼻にかけるようになったのだが、光武帝よりの褒賞が思ったほどでなかったため不満を覚えるようになった。それを見て取った幽州ゆうしゅう牧の「朱浮しゅふ」が書面にて彭寵を嘲笑う。

遼東りょうとうの豚に子が生まれた。子豚は頭が白たかった。豚の飼い主が、これは珍しいと陛下に献上しようと思った。しかし献上の道すがら、多くの頭が白い豚に巡りあってしまったそうだ。皆が言っているぞ、あなたの誇る功績はそのようなたぐいのものだとな!」

 彭寵がこの手紙に怒ったタイミングで、光武帝より召喚状が届く。これを叛意を問う書状だと思い込んだ彭寵は決起しようと目論み、しかし殺されたのである。

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