03-01-06 漢六 光武帝劉秀 6

 この頃、赤眉せきびの賊が長安ちょうあんを攻撃していた。劉秀りゅうしゅう鄧禹とううらに軍を率いさせ函谷関かんこくかんを抜け更始帝こうしてい軍の救援に向かわせた。出立前、鄧禹は劉秀に寇恂こうじゅんを推薦、そして言う。

「寇恂は文武の才を兼ね備え、民を率い人々を導く才に長けております」

 そこで劉秀は寇恂に河內かだいを守らせ、自らもまた兵を率いて出征、えんちょうを攻略。尤来ゆうらい大槍だいそうといった諸賊を次々と撃破し、中山ちゅうざんに帰還した。

 中山において、配下将たちが劉秀に皇帝の座につくべく勧めてくる。しかし劉秀は却下した。また南下して平棘へいきょくに至ったときにも要請があった。ここでももちろん却下。

 すると耿純こうじゅんが言う。

「士大夫が親戚や故郷をなげうって王に従い、矢や石の飛び交う戦場を駆け巡るのはなぜだと思っておいでですか? それは龍の鱗にしがみつき、あるいは鳳凰の翼に取り付くようなもの。すなわち、王のもとにみな、天下を思い描いておるのです。王よ、これ以上思いとどまり民望に逆らわれますな。ともすれば彼らは我が志もここまでと打ちひしがれ、故郷へ帰還したいと思い始めましょう。ひとたびそのような事態に陥れば、もはや再決起なぞ叶いますまい」

 馮異ふういもまた言う。

「どうか、皆の思いをお受けくださいませ」

 さらに「強華きょうか」という儒者が関中より赤伏符、すなわち予言の記された札を持ってきていた。そこにはこうあった。

「劉秀兵を発し不道を捕え、四夷は雲集し龍は野に闘う。四・七の際、火は主為らん」

 劉秀は各地の不道のものを討つ。四方の群悪を龍すなわち劉秀が討つのである。4*7=28 に劉秀の天下取りが関与する。すなわち二十八才で決起し、二十八人の将を抱え、劉邦りゅうほうの即位から劉秀の決起までが 228 年となっている。そしてかんは火徳の王、というわけだ。

 群臣はこうの南にて、劉秀に再び即位を要請。ついに劉秀も受け入れ、皇帝に即位した。建武けんぶと改元した。

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