03-01-04 漢六 光武帝劉秀 4

 しかししょう城の民は王郞おうろうについていた。危機を避けるため劉秀りゅうしゅうは薊より出立すると、夜もなく昼もなく南に駆け下る。糧食に喘ぐ軍旅となったが、蕪蔞亭ぶろうていにて「馮異ふうい」が劉秀に豆粥を差し出してきた。しかし焼け石に水、饒陽ぎょうようにてついに糧食が底をついてしまう。曲陽きょくように到達したところで王郞の兵がすぐ後ろにまで迫ってくる。劉秀らは滹沱こだ河へと急行。しかし斥候からは川の水が凍っておらず、船がなければ渡ることができないと伝えられる。劉秀は「王覇おうは」に直接様子を見に行かせた。もちろん凍ってはいない。しかし王覇は兵士たちの士気が壊滅することを恐れ、敢えて「河が凍っていました、渡れます!」と伝えた。しかも、実際に河岸まで到着すると確かに凍っている。劉秀軍が急ぎ川を渡ると、間もなく氷は溶け落ちた。


 そこからなんとか南宮なんぐうに到着するも、そこで大風と雨に遭遇する。道ばたに空き家があったのでそこに逃げ込むと、馮異が薪を運び込み、鄧禹とううがそこに火を付ける。劉秀はかまどの火に当たって服を乾かした。馮異がまた麦飯を劉秀に勧めた。下博かはく城の西に到着しようかという頃、一行は進むべき道を見失う。すると白衣の老人が現れ、進むべき先を指さし、言う。

「力を尽くされよ、この先八十里のところにある信都しんとの守将は、長安ちょうあんを守るため戦っておられる」

 劉秀らはいそぎ信都に向かう。この頃周辺の城主らはほぼ王朗に降っていたのだが、信都の「任光じんこう」と和戎わじゅうの「邳肜」はいまだ漢に忠誠を誓っていた。任光は劉秀の到着を喜び出迎えた。また邳肜ひとうも劉秀に会いに来た。一息ついた劉秀は近隣から兵を募り、精兵を獲得。檄を飛ばし、王郞を討伐した。いちど王朗に降っていた郡県の守将らも、次々と劉秀のもとに帰服した。劉秀は余勢を駆り、更に広阿こうあをも陥落させた。



蒙求:

広利泉湧こうりゆうせん 王覇氷合おうはひょうごう

 前漢武帝ぶていの時代の将軍李広利りこうりは国の悪党どもを徴発して遠征に出た。途中で水が切れ、みなが喉の渇きに苦しみ始めたところ李広利が祈ったうえ山に剣を刺したら、そこから泉が湧き出してきたという。

 光武帝こうぶていに仕えた名将、雲台うんだい二十八将の第二十三位である王覇。ある冬、光武帝が南征を計画する。先んじて王覇が南方の様子を見たとき、黄河が凍ろうとする様子はなかった。それでも王覇は光武帝の元に戻って「黄河は凍っています、一気に攻められます」と語る。実際光武帝の軍が進むと黄河は凍っていたし、ほぼ渡ったところで氷結が解けた。そのため「渡河を一気に終えられたのは王覇のおかげだ」と光武帝に讃えられている。

 ふたりの将軍が起こした、水に関わる奇跡。

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