03-01-02 漢六 光武帝劉秀 2

 劉秀りゅうしゅう昆陽こんよう定陵ていりょうえんの各地を説得して回ると配下に加えた。王莽おうもうは「王邑おうゆう」や「王尋おうじん」に兵を預け山東さんとうの平定に向かわせ、巨漢の「巨無霸きょむは」に虎・豹・犀・象のたぐいを操らせてその増援とさせた。自称百万の大軍は千里に渡って旗が途切れず、諸将はそのいきおい盛んなさまを見てみな昆陽に逃げ込むも、そこで反乱軍を解散させたいとすら思い始める。

 すると劉秀が郾や定陵から兵をかき集めると自ら步騎千あまりを率いて前鋒となり、攻撃を仕掛ける。王尋や王邑も数千を発して迎撃させるが、劉秀は馬を駆り、自ら敵の首を数十挙げた。その様子を見て諸将が言う。

「劉将軍はふだん小勢を見て怯えていたのに、この大軍に向けてはむしろ勇ましく戦われるのか!」

 そのあまりのすさまじさに、ついに王尋王邑が兵を後退させる。この機に乗じ劉玄りゅうげん軍の他の将軍たちも攻勢に回り、連勝して前線を押し上げ、誰もがひとりで百人の敵を倒さんかという勢いとなった。

 劉秀は更に決死隊三千人を募り、敵軍本営を襲撃。王尋と王邑の陣は乱れ、劉玄軍がそこに殺到する。王尋を捕らえて殺すと、昆陽の城中にいた者たちは太鼓を持ち出して大いに鳴らし、そして内外のものが皆勝ちどきを上げる。その声は天地をも揺さぶるほどであり、新軍は壊滅、ひとたび転べば後のものに踏み殺される勢いで逃げ出す。こうしてできた死体は 40km あまりにもおよんだ。また大雨、嵐、雷が起き、屋根瓦も吹き飛び、雨のすさまじさは盆から水をこぼしたかのよう、虎や豹であってもみな四肢をおののかせてすくむほどであった。滍川しゅうせんで溺死するものも数万におよんだ。

 長安ちょうあんの王莽はこの敗報を聞いて震撼した。一方、各地の豪族は続々と決起して立ち上がり、王莽によって配属させられた地方官を殺害、将軍を自称して「更始」を年号とした。ひと月のもとに、天下には漢の旗が翻ることとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る