02-07-04 漢五 成帝劉驁 上

 成帝せいてい、名は「劉驁りゅうごう」。母は王氏おうしだ。若い頃から読書を好むも、やがて酒や宴会を覚えると自堕落となった。病床にあった元帝げんていは幾度となく廃位を考えたのだが、病床に侍っていた「史丹したん」が泣いて廃位を思いとどまるよう諫めてきたため、皇帝となることができた。王氏を皇太后とし、その伯父の「王鳳おうほう」を大司馬大将軍とし、尚書事を総監させた。


 前 31 年、石顕せきけんの旧罪が露見。免職となり、故郷に帰されたが、帰途で死んだ。

 王皇太后の叔父にあたる「王崇おうすう」を安成侯とし、あわせて「王譚おうたん」「王商おうしょう」「王立おうりつ」「王根おうこん」「王逢時おうほうじ」を関內侯とした。黄色い霧が四方を暗くした。

 前 27 年には王皇太后の兄弟全員が列侯された。

 前 22 年に王鳳が死ぬと「王音おうおん」が大司馬になり、王譚が近衛兵を統括した。

 善 17 年に王譚が死に、王商が職務を継いだ。

 前 16 年に王皇太后の甥、「王莽おうもう」が新都侯となった。同年皇后に「趙飛燕ちょうひえん」が立てられ、その妹の「趙合徳ちょうごうとく」が婕妤となった。


 前 15 年に王音が死亡。王商が大司馬となった。「梅福ばいふく」がこれら王氏の専権がこのまま続けば危ういと上奏したが、成帝は省みなかった。

 前 13 年に王商が死亡、王根が継いだ。



蒙求:

桓譚非讖 王商止訛

 後漢の桓譚は音曲をたしなむひとで、光武帝のそばに侍ることが許されていた。予言書好きの光武帝があるとき政策を予言書に基づいて決定しようとし、桓譚に相談を持ちかける。すると桓譚は首を振り、言う。「予言書は予言書、経典の言葉を優先すべきである」と直言した。光武帝は激おこしたがなんとか殺されずには済んだ。

 前漢平帝の治世時、長安に、唐突に「洪水到来……か!?」のデマが飛ぶ! このデマはなぜか皇帝まで巻き込まれる大騒ぎとなったのだが、その中にあって王商、泰然と「城郭をも侵すほどの洪水? そんなもの来るわけないでしょう」と一刀両断。結局洪水は来なかった。

 占いやデマと言ったあやふやなものを切って捨てた二人。


衛后髮鬒 飛燕體輕

 前漢武帝の衛皇后はその髪の艶やかなるをもって武帝に寵愛された。なおのちに皇太子の誣告事件に巻き込まれ自殺している。

 同じく前漢、成帝の皇后であった趙飛燕。彼女は妹の趙女弟とともに、たぐいまれな踊りの才能を示して成帝に寵愛された。が、子をなすよりも前に成帝が死亡。一説には趙女弟といたしていたときに腹上死したと言われている。このため趙女弟は自殺。趙飛燕はその後も漢の政争の場に立ち続けたが、ついには王莽との政争に負けて自殺した。

 出自によらずその姿、そのスキルで皇帝の寵愛を得たふたり。悲劇的な最期も共通している。


馮媛當熊ふうえんとうゆう 班女辭輦はんじょじれん

 前漢元帝げんていの側室ふう氏は平帝へいていの祖母に当たる。あるとき熊と虎を戦わせる催しがあったとき、熊が逃げ出した! みなが慌てふためいて逃げようとするところ、馮氏、平然と熊の前に立つ。「熊は一人食べれば満足します、陛下を食べさせることに比べればマシでしょう」と。結局馮氏も助かったのだが、これによって元帝は馮氏を更に重んじるようになった。

 前漢成帝せいていの側室班氏はんしは、成帝の外出に当たり車にて隣に座るよう命じられた。しかし班氏はそれを辞退。「聖王の隣には名臣が座るもの。しかるに昏王は美姫を隣に座らせます」と。この受け答えに成王は感じ入り、褒美を下した。ちなみに彼女はのちに、当時の猛獣趙皇后、こと趙飛燕ちょうひえんからの誣告も突っぱねている。

 皇帝のそばにあって、その側室としての気概を示しきった二人。


史丹青蒲したんせいぶ 張湛白馬ちょうじんはくば

 前漢元帝の時代の人、史丹。病がちの元帝が成帝を見て後継にすべきかどうか迷っていたところ、史丹は青蒲、すなわち元帝の寝床のそばで号泣。今更皇太子を変えてしまっては政が大混乱する、と訴え出た。元帝もそれを受け入れ、成帝を皇太子としたまま死亡した。

 後漢の張湛。剛直のひとであり、光武帝に対してもガンガン諫言をなした。白馬に乗ってやって来ることから、光武帝は「白馬生が、また諫めに来たか」と彼の参上を笑ったという。

 皇帝に対してもバシバシ諫めの言葉を投げかけるふたり。

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