02-07-02 漢五 元帝劉奭 中

 前 49 年、「蕭望之しょうぼうし」「周堪しゅうたん」「劉向りゅうきょう」を下獄し、庶人に落とした。


 この頃外戚の「史高しこう」が尚書事を司り、蕭望之と周堪がその副官となっていた。二人はもと元帝げんていの教育係であり、しばしば統治に関する提言をなしていた。更に劉向と「金敞きんへい」を引き入れ、この四人で元帝を支えた。そのため史高はお飾りと化し、蕭望之らと対立するに至った。

 一方で「弘恭こうきょう」と「石顕せきけん」は宣帝せんていの時代より機密に深く関わっていた。元帝は病がちであったため、様々な奏上を石顕を通じ聞いていた。石顕が宦官であり、また宮中に繋がりらしい繋がりもないため害が少ないと考えたのだ。このため百官は石顕を仰ぐような形となったのだが、一方で石顕は悪い意味で聡明であり、元帝の機微を的確に見抜く一方で、宮中の人間をしばしば冷徹に中傷した。そして史高と結託し、石顕が宮中を、史高が朝廷をそれぞれ壟断するべく動き始めた。


 蕭望之らは外戚である「許延寿きょえんじゅ」や史高、そして石顕らの専断を警戒し、元帝に石顕らを罷免するよう上奏する。元帝はこの上奏を受け入れられなかったどころか、却って弘恭や石顕よりの反論上奏を受ける。

「蕭望之や周堪、劉向らは結託して権勢をほしいままとし、不忠のことを企んでおります。あのような者は廷尉に付させるべきであります」

 このとき元帝は即位したばかりであったため「廷尉に付す」が牢獄送り扱いとなることを理解していなかった。そこで奏上を認可したのだが、あるとき周堪や劉向を召し出そうとしても、召喚できない、と返答を受けてしまう。

「廷尉に問わせるだけではなかったのか!」

 元帝は慌てて三人を牢獄から解き放ち、政務に復帰させたが、最終的には弘恭と石顕の企てにより、免官させられてしまったのである。


 のちに元帝は蕭望之らを復帰させようと動いた。史高ら四人は蕭望之がその節度高さより決しておもねってくることはないと警戒。そこで結託し、蕭望之はむしろ下獄免官に対し恨みを抱き、反省するつもりはないであろうと讒言した。

「蕭望之は剛直の者、改めて獄につながれることをよしとなどすまい」

「人の命は重きもの、獄に繋ぐとて、蕭望之殿の些細な舌禍を咎めるに過ぎませぬ。ご心配は無用にございますぞ」


 蕭望之のもとに下獄のための使者が遣わされると、蕭望之は毒を飲み、自殺した。

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