02-07 前漢の黄昏

02-07-01 漢五 元帝劉奭 上

 元帝、名は「劉奭りゅうせき」。太子の頃から柔和で儒を好んだ。宣帝せんていの任用する官吏が法家であり、法に基づいての糾弾を多く行っていたのを見ていた。かつて宴の場で、おずおずと先帝に言い出したことがある。

「陛下のお下しになる刑罰は厳しきものであります。どうか儒家を官吏に用い、今少し徳あふれる政を行っては下さいませんでしょうか」

 すると宣帝、カチンとくる。

かんには漢のやり方がある。もとより霸道と王道とを交えて用い、治めているのだ。徳敎でのみ世を治めようとする手法のどこに適切さがある。しかもあのクソ儒どもは昔はよかった、それに比べていまは、ばかりではないか。名目と実態とを敢えて幻惑させ、守るべきものが何であるかをも明らかとしない。奴らのどこに政務を委ねるだけの能力があるというのだ」


 宣帝は嘆じて言う。

「漢を乱すのは劉奭かもしれん」

 ただし宣帝は若い頃劉奭の母である「きょ氏」のもとに身を寄せていた。その許氏はかく氏、すなわち霍光かくこうの娘により毒殺されている。なので廃するに忍びなく、結局皇帝となった。


 前 48 年、「おう氏」を皇后とした。ちなみに親族にあの「王莽おうもう」がいることを付記しておく。



蒙求:

許史侯盛きょしこうせい 韋平相延いへいしょうえん

 前漢前漢宣帝せんてい皇后きょ氏は本人こそ霍光かくこうの娘の策謀によって殺されたが、その親族たちが多く諸侯として封爵を受け、栄華を極めた。また宣帝の祖母に当たる史良娣しりょうてい武帝ぶていの巫蠱事件に巻き込まれ殺されたが、その子孫らの多くが栄達に与っている。

 同じく前漢では韋賢いけん韋玄成いげんせい親子、そして平当へいとう平晏へいあん親子のみが親子揃っての宰相になった。

 家族揃って栄達した人たち。

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