02-06-02 漢四 昭帝劉弗陵 中

 左将軍上官傑じょうかんけつの子の上官安じょうかんあん霍光かくこうの娘を娶り、女児を生んだ。その子が皇后となったため、上官傑と上官安は外戚となったのだが、霍光の権勢には及ばなかった。そのため霍光と権勢争いをなした。

 この頃昭帝しょうていの姉ががく国に嫁いでいたのだが、愛人の丁外人ていがいじんを侯爵に封じて欲しいと頼み込んできた。霍光はこれを却下。そのため昭帝の姉より恨まれることとなった。また皇帝の座を逃した劉旦りゅうたんも霍光を恨んでいた。御史大夫の桑弘羊そうこうようも弟子を官職に付けたいと霍光に頼み込んでいたが却下されたため恨んでいた。こういった人物たちが密かに結託、劉旦からの上書として事実を曲げた書面を提出した。

「霍光は近衛軍を動かすときに皇帝の名を用いて道を空けさせた。これは僭越に値する。それでなくとも日頃軍将校を勝手に動かしている。これではいつ非常の事態が起こるともしれたものではない」

 これは霍光が休みの日に提出された。この上書を上官傑が受け取り、桑弘羊や大臣らと共に霍光の廃黜を求めようとしたのだ。しかしこの上書を昭帝は握りつぶした。翌日、この事態を聞いた霍光は昭帝の前に姿を現さずにいた。

「霍光はどうした?」

 上官傑が言う。

「劉旦様よりの上書があったため、霍光は処罰を恐れて御前に参上しないのです」

 昭帝はここであえて詔勅を起草させ、霍光を目の前に連れ出した。霍光は冠を脱ぎ、土下座して罪をわびた。すると昭帝は言う。

「将軍の調練はわずか十日ほど前のことではないか。どうしてこれをえんにいる兄上が知ることができたのだ。それに、将軍ほどの者に異謀があるのであれば、わざわざ将校を動かすなぞ迂遠なことをするまでもあるまい」

 なおこれは前 80 年のことで、当時昭帝は十四歳であった。誰しもがその聡明さに驚嘆した。

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