02-05-04 漢三 武帝劉徹 4

 前 115 年、西域との通商が始まった。酒泉しゅせん郡、武威ぶい郡が設置された。

 前 112 年、「路博徳ろはくとく」らをやり南越なんえつを攻撃した。方士の欒大らんだいが武帝を騙したかどで誅殺された。

 六年、きょうを討伐し、平定した。南越が平定され、九つの郡が置かれた。


 前 110 年、武帝は長城を出て北上、單于臺ぜんうだいに登り、当時の単于に宣戦布告した。

「南越王の首は既に漢の北門の軒下に掲げられている。単于よ、そなたがもし朕と戦おうというのであれば、朕は自ら兵を率い、国境にて待とう」

 武帝は緱氏こうしに行き、嵩山すうざんに登って神を祀り、渤海ぼっかいに乗り出して神仙を求め、泰山たいざん肅然山しゅくぜんざんで封禅の儀式をなし、さらに東北の碣石山かっせきさんに登り、帰還した。

 滇王じんおうが降った。益州えきしゅう郡が置かれた。

 前 108 年、樓蘭王ろうらんおうを捕らえた。車師しゃしを撃破した。朝鮮ちょうせんが降ってきた。楽浪がくろう臨屯りんとん玄菟げんと眞番しんばん郡を置いた。匈奴きょうどが攻め入ってきたので朔方さくほうに兵を置いた。

 前 106年、武帝は江水こうすい漢水かんすい地域を巡察してまわった。泰山に築いてあった祭壇を増築し、帰還した。

 前 105 年、昆明こんめいを討伐した。


 前 104 年、武帝は再び泰山に出向いた。太初たいしょ歴を制定し、いままで十月を新年としていたところを十一月を新年とした。

李廣利りこうり」に大宛だいえんを討たせたが落とせなかった。

 趙破奴ちょうはどに匈奴を討たせたが敗北、戦死した。

 前 103 年、匈奴が大規模侵攻。塞外の城壁を破壊して回った。

 李廣利に大軍をあずけ、再度大宛を攻撃。大宛は降参し、駿馬数十頭を得た。


 四年、匈奴の單于より貢ぎ物があった。


 前 100 年、「蘇武そぶ」を使節として匈奴の元に派遣、降伏を勧めさせた。單于は蘇武を取り込もうと企み、蘇武を大きな窖の中に押し込み、飲食物を与えないようにした。蘇武は雪をかじり、そこに服につく毛を混ぜ合わせてあわせて飲み込み、数日経っても生きながらえた。匈奴は神の奇跡だと驚き、蘇武をバイカル海の北、無人の荒野に身柄を移し、「牡羊が孕んだら解放してやろう」と告げた。

 二年、李広利に匈奴を攻撃させた。別将の「李陵りりょう」の率いる軍が敗れてとらわれた。



蒙求もうぎゅう

廣利泉湧こうりせんよう 王霸冰合おうはひょうごう

 前漢武帝の時代の将軍李広利りこうりは国の悪党どもを徴発して遠征に出た。途中で水が切れ、みなが喉の渇きに苦しみ始めたところ李広利が祈ったうえ山に剣を刺したら、そこから泉が湧き出してきたという。

 光武帝に仕えた名将、雲台二十八将の第二十三位である王覇。冬、南方で群雄の王朗が立ったと聞き、光武帝は南征を計画する。先んじて王覇が南方の様子を見たとき、黄河が凍ろうとする様子はなかった。それでも王覇は光武帝の元に戻って「黄河は凍っています、一気に攻められます」と語る。実際光武帝の軍が進むと黄河は凍っていたし、ある程度渡ったところで氷結が解けた。そのため「渡河を一気に終えられたのは王覇のおかげだ」と光武帝に讃えられている。

 ふたりの将軍が起こした、水に関わる奇跡。

 

蘇武持節そぶじせつ 鄭衆不拜ていしゅうふはい

 前漢武帝の命を受けて匈奴きょうどに和親の使者として赴いた蘇武はそのまま匈奴に捕らわれ、匈奴の地に暮らすよう迫られた。しかし最後まで漢への忠誠を貫き通した。壮年のときに匈奴に赴き、漢の土を再びふむときには髪が全て白くなっていたという。

 後漢明帝めいていの時代、使者として匈奴のもとに赴いた鄭衆。単于より拝礼するよう迫られるも拒否。単于が怒るも、それに対して一切引くことはなかった。のちに匈奴から漢に使者がもたらされたとき、匈奴の使者は「あの人の胆力は蘇武にも引けを取りませんよ」と語った。

 単于に対し堂々たる態度を貫いたふたりの使者。


李陵初詩りりょうしょし 田橫感歌でんおうかんか

 前漢の武将、李陵。匈奴きょうどに囚われて捕虜、と言うか客将として仕えることになった。そこに蘇武そぶという漢将が新たに捕まるものの、かれは断固として漢に帰還することを主張。認められる。蘇武を見送る際に李陵が送った詩、それが五言詩の始まりであった。

 せい田横でんおうかんの皇帝劉邦りゅうほうに仕えることをよしとしなかった。再三再四の招聘に根負けし出仕を受け入れたが、その途上で自殺。斉の臣下らもあわせて自殺した。とは言え劉邦の元に死体を届けなければならない。そこで棺桶を引く任を得た者は、表向き悲しみを示すことが許されないため、思いを歌に語らせた。これが「挽歌」の語源だ。なお挽歌を詠ったものも、劉邦に謁見ののち自殺している。

 悲しみにまつわる、二つの歌の興り。

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