02-03-15 漢一 韓信 4

 劉邦りゅうほうが「成皐せいこう」に到着したところで、再度軍よりの包囲を受けた。劉邦はここで黄河こうがを渡って北上、朝にはちょう壁城へきじょうに入り、韓信から軍を奪い、更に韓信には趙の兵を編成してせいを討て、と命じた。

 一方では、酈食其を斉王「田広でんこう」の元に赴かせ説得、漢に降伏させる。この事態を受け、部下の「蒯徹かいてつ」が韓信に言う。

「韓王は将軍に斉を討てと言っておきながら、別に使者を発して斉を降伏させてしまいました。しかし、いつ我々に征伐中止の名が届きましたでしょうか? あの儒者が舌先三寸で斉を下したとなれば、将軍の数年間の功が、あの儒者に及ばぬと言うことになるのではありますまいか!」

 年が明けたところで、韓信は斉を強襲。田広でんこうは酈食其を釜ゆでとして殺した上で斉から逃走した。


 楚将の龍且りゅうしょが斉の救援に出る。龍且は完全に韓信を侮った状態で川を挟み、対陣。韓信は夜のうちに人をやり、砂袋で上流をせき止めさせていた。そして朝早くに水量の少なくなった川を渡って攻撃、頃合いを見て偽装撤退を仕掛ける。龍且が追撃を掛けんと川に入ったところで、上流の砂袋を決壊させた。龍且軍の大半は川を渡ることが出来なくなり、その動揺を韓信がつき急襲、龍且を討ち取った。

 韓信はこの勝報を劉邦に伝え、かつ、仮の王として斉を鎮撫したい、と伝えてくる。劉邦は韓信のこの申し出に怒り、罵りの声を上げたが、張良ちょうりょう陳平ちんぺいが両方から劉邦の足を踏みつけ、耳打ちする。すると劉邦も悟り、罵りの矛先を変えて言う。

「大丈夫たるもの、諸侯を従えたならばまことの王でしかあるまい! どうして仮などと言うのだ!」

 そう言うと、斉王位の印璽を韓信の元へもたらさせた。


 項羽こうう龍且りゅうしょが死んだと聞くと驚愕し、「項羽、劉邦りゅうほう、韓信の三人で天下を治めるのはいかがか」と提案。しかし韓信は言う。

かん王は私を上将軍につけてくださり、あるときは自らの衣服を着せてくださり、あるときは自らの食を私に回してくださることもあった。こちらの進言はすべて聞き入れ、計略もすべて採用してくださった。ここで私が漢王に背くことこそが天の不祥。例え死すとも気持ちを改めようか」


 項羽軍に味方する勢力はいよいよ少なくなり、垓下がいかに追い込まれる。もはや兵も食糧も底を尽きていた。そこに韓信軍が襲撃。項羽は砦の中に逃げ込む。韓信軍はその周囲を何重にも包囲し、兵たちに楚の歌を歌わせた。絶望した項羽は脱出を試み、実際に脱出を果たすのだが、ついには自刃し、果てた。


 項羽が死ぬと韓信から軍を奪い取り、改めて韓信を王に、彭越ほうえつを梁りょう王に任じた。そして劉邦自身は皇帝となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る