02-03-08 漢一 張良 2

 項羽こうう軍に味方する勢力はいよいよ少なくなり、糧秣も底をつきかけていた。そこに韓信かんしん軍が迫る。なので項羽は和議を提案。鴻溝こうこうを境として東をが、西をかんが統治するのはどうか、とする。また人質となっていた呂雉りょち、及び劉邦りゅうほうの父親も解放された。しかし張良ちょうりょう陳平ちんぺいは言う。

「漢はいま天下の大半を手中に収めております。しかしその兵はいまこそ飢え、疲労していますが、このまま許せばいたずらに虎を養うようなものです」

 と、撃滅を提唱。劉邦りゅうほうもまた従った。


 年が明けると、劉邦は項羽を固陵こりょうまで追撃。ここで韓信かんしん彭越ほうえつと合流するはずであったが、両勢力はやってこない。張良が言う。

「楚を韓信に、梁を彭越に与えると約束すれば、かのものらはやって参りましょう」

 劉邦がその指示通りにすれば、両軍もやって来る。またこのタイミングで黥布げいふも到着した。


 項羽こうう撃滅後、斉の「婁敬ろうけい」が劉邦に説く。

洛陽らくようは天下の中央、徳があれば栄えますが、徳なくば滅びます。それに引き換え秦の地は山に囲まれ川に守られ、四方を堅固に守られています。もし陛下がしんのように関中を拠点となされたら、それはもう天下の首を押さえたかのように天下を治められましょう」

 この進言に張良も同意。そのため劉邦は関中に都を移した。


 こののち、張良は病気を理由に引退した。そのときの気持ちを周囲の者にこう語っている。

「代々かんに仕え、祖国の復讐のために戦った。その後この舌先三寸で劉邦様の軍師となり、万もの食邑を頂戴することとなった。これはこの匹夫の身では位極まったと言うべきだ。ならばここからは俗事を離れ、隠棲したいものだ」

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